エーザイの新たな早期アルツハイマー病治療薬、治験が最終段階へ
数年で薬として市場に出される可能性も
エーザイ株式会社が自社創製したβサイト切断酵素(BACE)阻害剤「elenbecestat」が、早期アルツハイマー病を対象としたグローバル臨床第Ⅲ相試験の、日本での治験を開始しました。
治験対象は、早期アルツハイマー病による軽度認知障害および軽度認知症の比較的早期段階からなる早期アルツハイマー病であり、バイオマーカーでアミロイドβの脳内蓄積が確認されている患者1,330人。投与期間は24ヶ月。実薬を投与する被験者には50mg/日を投与します。
エーザイは認知症治療薬の中で国内外とも大きなシェアを占めているコリンエステラーゼ阻害薬「アリセプト」を開発した会社。認知症分野の医薬品開発に力を入れており、今回の治験で「elenbecetat」に、「アリセプト」を含めた従来の薬よりも効果が認められれば、完全に病気の進行が止まらなくとも、数年後には薬として市場に出される可能性があります。なお、「elenbecetat」は日本だけでなく欧米でも開発が進められています。
開発成功で、アミロイドβ仮説が実証か
アルツハイマー病の原因は未だはっきりと解明されていませんが、アミロイドβ仮説が最も有力とされています。アミロイドβ仮説とは、大脳皮質にアミロイドβというタンパク質が過剰に蓄積して老人斑を形成することが、脳の萎縮を引き起こす引き金となり、アルツハイマー病を発症させるという説。現在までに多くの製薬会社や研究機関がこの仮説をもとにアルツハイマー病治療の研究を重ねてきました。
今回治験が最終段階へと進んだ「elenbecestat」もこのアミロイドβ仮説に基づいています。そのため、もし「elenbecestat」に効果が見られ、開発が成功すれば、アミロイドβ仮説が実証されたことになり、今後さらに良い薬が開発される可能性が一気に高まります。
新薬の開発成功でも課題
ただし、今回の「elenbecestat」の開発が成功しても、アルツハイマー病が進行した人の完治には結びつかないと指摘されています。
新薬によって認知症の症状の進行が緩やかになる、あるいは完全に進行が止まる可能性はあっても、アルツハイマー病は神経細胞が死ぬ病気。ある程度、病気が進行した人の認知機能が改善するとは考えにくいからです。
つまり、このような新薬の開発と同時に、アルツハイマー病を早期に発見できるシステムや診断方法の開発も同時に必要だと言えます。
▼外部リンク エーザイ株式会社ニュースリリース
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