運動によってアルツハイマー病の原因物質をつくる酵素GSK3βの活性化阻害が判明
有害とされるたんぱく質を減少させることは知られていた
自発的に運動を続けると、海馬の細胞集合に持続的な変化が起こり、アルツハイマー病の原因物質とされる高リン酸化タウを作る酵素GSK3ベータ(GSK3β)の活性化を阻害する神経保護効果が生じるとした研究成果を、メキシコの大学研究グループが発表した。
これにより、運動は、別の原因物質とされるアミロイドベータ(Aβ)たんぱくの減少に加えて酵素GSK3β活性化の阻害という、海馬の神経脱落における仮説原因物質の2つに効く効果があることが明らかになった。
運動はアルツハイマー病の予防や進行の抑制に効果があるリハビリ療法といわれている。
これまでの研究では、運動が海馬の構造と機能を変化させることでAβの形成・蓄積の減少に関係していることが分かっていた。
しかし、Aβが存在しても、運動によって海馬の神経細胞自身がAβが起こす細胞破壊に対する耐性を持つかどうかは分かっていなかった。
マウスによる実験で病理的に解明
21日間ランニングホイールを自由に使える状態にしておいたマウスから取り出した海馬の組織片内の細胞集合は、座らせておいたマウスの海馬細胞集合よりも高い電圧と速い周波数合成が測定された。
また、運動をしたマウスの海馬内細胞ネットワークは、不随意な海馬細胞集合の活動を阻害するAβの働きにも無反応であった。
この神経保護効果は、AβがGSK3βを活性化する能力の低下と相関性があることが分かった。比較のため、座らされたマウスから取り出した海馬の組織片に阻害剤を投与してGSK3βの活性化を阻害すると、同様の結果が得られた。
運動したマウスから取り出された海馬細胞集合の活動の変化とAβによる阻害に対する無反応が実験によって明らかになり、さらに酵素阻害剤投与による比較実験と同じ結果を得たことから、同グループは、細胞集合がGSK3β活性化を阻害していると結論づけた。
この研究論文は、オランダの理数系・医学系出版社であるIOS出版が発行する学術誌「アルツハイマー病ジャーナル」3月16日版に掲載された。
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アルツハイマー病ジャーナル(オンライン版 英文)
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