老齢ネコの脳ではアルツハイマー病と同じ神経細胞の脱落があることが判明
東大らの研究グループ
東京大学は12月10日、老齢ネコの脳ではアルツハイマー病と同一の病変が形成され、神経細胞が脱落していくことを明らかにしたと発表した。
この病変はほかの動物には起こらず、ネコの場合、たんぱく質のベータアミロイドがほかの動物と異なっていることが原因と考えられる。東大の研究グループは、ネコを用いた研究によって、アルツハイマー病の病態解明の進展が期待されるとしている。
この研究論文は、雑誌 Acta Neuropathologica Communications に「The domestic cat as a natural animal model of Alzheimer’s disease」というタイトルで発表された。
ほかの動物にはなく、ネコ特有の病変
アルツハイマー病は、脳内でベータアミロイドと高リン酸化タウたんぱく質が蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することによって発症する。この現象は、今までヒト以外の動物ではみつかっておらず、治療法を解明する上で必要とされる病態の再現が可能な動物はいないと考えられていた。
しかし今回の研究で、死亡したネコの脳をくわしく調べたところ、8歳頃からベータアミロイドが沈着し、14歳頃から高リン酸化タウが蓄積することがわかった。さらにアルツハイマー病特有の神経原線維の病変も認められた。また神経原線維変化が形成されたネコには、海馬において神経細胞の減少がみられた。
ベータアミロイド-オリゴマーの蓄積
このネコ型ベータアミロイドは、ヤマネコやチーターなどネコ科動物が共通して保有し、加齢とともに神経原線維変化が形成される。ネコの脳では、ベータアミロイド-オリゴマーと呼ばれる毒性の高いベータアミロイドが蓄積していることが明らかとなり、これが神経原線維変化の形成に重要な役割を果たしていると考えられる。
ネコの寿命はヒトより短いため、短い間に脳内で病態の変化が起こる。ネコの脳を研究することで、ベータアミロイドとタウたんぱく質の関係が明らかとなり、アルツハイマー病の解明と治療法の開発に貢献することが期待されている。
(画像はプレスリリースより)
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東京大学大学院農学生命科学研究科 プレスリリース
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