【田平武先生インタビュー】第3回:認知症の早期発見、予防のこれから

2017年9月4日

順天堂大学大学院客員教授     田平武先生インタビュー

田平武先生

認知症予防の専門家として、数多くのセミナーで講演を行う田平武先生。インタビュー第3回目は、さらなる患者数の増加が予想される認知症の早期発見と予防の今後についてお伺いしました。

第1回インタビュー「認知症予防の今:脳のネットワークをつくる」はこちらから 第2回インタビュー「認知症の早期発見から治療の流れ」はこちらから

話し手
田平武先生
順天堂大学大学院客員教授
田平武先生
この記事の目次
  1. 今後は尿で早期発見できる可能性も
  2. 認知症予防は「50歳」がキーワード
  3. 予防の理想的な時期はMCI発見の前

順天堂大学大学院の客員教授として、また、日本認知症学会専門医として、数多くの認知症患者と向き合ってこられた田平武先生。認知症に関わるセミナーでの講演も行っており、2017年3月に行われた認知症予防セミナーでの認知症の早期発見の重要性を唱えた講演は、参加者の注目を集めました。

田平先生のインタビュー第3回目は、認知症の早期発見や予防に関して今後起こっていく変化や、予防のポイントをお聞きしました。

今後は尿で早期発見できる可能性も

―― 認知症早期発見のための血液検査の話がありましたが、今後、早期発見のスクリーニングとしては血液検査のほかにどのような手段が考えられるのでしょうか。

まだ研究段階ですが、以前、佐賀女子短大の長谷川教授が研究された「ホモシステイン酸」というマーカーがあります。尿中のホモシステイン酸というのを測定するもので、研究では認知機能が低い人ほど尿中のホモシステイン酸が減っていたんですね。その理由をさらに調べたところ、どうも尿に排泄されるべきものが、排泄機能の低下により尿中では減っているんです。その代わりに血中ではどうも増えているらしいんです。そうした結果により、ホモシステイン酸が神経細胞を破壊しているのではないかという可能性が出てきたんです。これがもし実証されれば、尿のマーカーひとつで分かるということになります。

―― 尿でわかるのはすごいですね。

糖尿病などでは、便器メーカーから、「糖尿病診断便器」というのが出てきているんですよ。便器があって、おしっこするとポーンと色がつくんです。そんな研究もありますからね。将来的には認知症の初期というのが目で見て分かるようになってくるかもしれませんね。

認知症予防は「50歳」がキーワード

―― 認知症の予防として運動や食事などを教えて頂きましたが、このような予防はいつくらいから始めるとよいのでしょうか。

脳というのは20歳でだいたい完成して、30歳40歳がピークです。その後認知機能はどんどん落ちていきますから、中年を過ぎたら始めた方がいいのではないかと思います。アルツハイマー病の変化が始まるのは50歳からですから、その辺から真剣に取り組むとよいのでは。50歳がキーワードですね。

―― 50歳ですか。結構早いですね。

無我夢中で働いてお酒もよく飲んでいる頃ですから、まずいんですよね。

―― やはりお酒とかタバコはまずいですか。

タバコは良くないと分かっていても、「タバコをやめてまで長生きしようとは思わない」と、必ずきますよね。お酒の好きな人は、「やっぱりお酒ぐらいは飲まなきゃ」と、こうなりますから。ほどほどに飲むのはいいんですけどね。

予防の理想的な時期はMCI発見の前

―― MCIの段階でのデイケアで認知機能が改善するというデータが最近のニュースでありましたが、やはりMCIの早期発見が重要なのですね。

MCIの段階で頑張れば戻り得るよということで、皆さん真剣になるのはそこなのですが、予防の理想的な時期はと言えばその前なんですよね。まだMCIにもなっていないけれど脳ではもう始まっているという時期があるんです。これを「無症候期」というんですが、この無症候期こそ予防のベストタイミングで、それが先ほどお話した50歳ぐらいなんです。そこで紹介したような予防法を一生懸命やってほしいんです。

―― 認知症前の発見で予防・進行により効果があるということをもっと世の中に広める必要がありますね。

社会教育は非常に重要で、こういう「認知症ねっと」や、あるいは学校教育などで、病気になる前からそういうことに気をつけておくことが大事だという教育をどんどんやっていかないといけないと思いますね。

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