認知症を予防できる未来へ。ホタテ由来のプラズマローゲン最新研究成果
高齢化の加速が止まらない現代日本。それにともない認知症患者も増加の一途をたどり、大きな社会問題となっています。そんな中、認知機能の改善が期待されるという画期的な研究報告がなされ、世界的にも注目を浴びている「プラズマローゲン」という成分があることをご存知でしょうか?
今回はメディア等でも話題の「プラズマローゲン」について詳しく解説していきます。
メディアも注目の「プラズマローゲン」とは?
プラズマローゲンとは、人間や動物など命あるもの全ての体内に存在するリン脂質の一種です。化学物質や作り出された新薬でもありません。人間の体にもともと存在している物質になります。
私たちが活動する時や、ものを考える時など、神経細胞は酸化を受けて劣化するのですが、その時に神経細胞の身代わりになって守ってくれるという、抗酸化作用を持った大切な物質です。特に脳神経細胞、心筋、リンパ球に多く含まれています。
脳や神経細胞を働かせるために欠かせないプラズマローゲンですが、生活習慣の乱れや食生活、年齢によって失われがちな成分なのです。歳を重ねるにつれて、もの忘れや凡ミスが増えてきた…などの原因は、プラズマローゲンの減少で起きているのかもしれません。
認知症対策としてなぜプラズマローゲンが研究されているのか?
例えば、高齢者の認知症で最も発症率の高い「アルツハイマー型認知症」の場合、原因はまだはっきりと解明されていませんが、脳内に蓄積された特殊なタンパク質によって脳の神経細胞が破壊されることが原因ではないかと言われています。しかし最近、その原因は神経炎症説が有力となってきました。
前述の通り、プラズマローゲンは抗酸化作用を持つリン脂質の一種のため、脳の酸化予防に重要な役割を果たしていると考えられています。そのことから、認知症対策に有効な物質として、世界中でプラズマローゲンの研究が行われています。
世界をリードする藤野教授率いる研究チーム
心臓・血管系の病気を専門とする九州大学名誉教授の藤野武彦先生は、心臓に負担をかけるメタボリックについて長年研究されており、25年以上も前から「脳疲労」ということに着目されてきました。
「脳疲労」とは藤野先生の造語なのですが、字のとおり脳が疲れた状態にあることを指します。過度なストレスにより、脳細胞で神経炎症が起こってしまい、自律神経を乱してしまうなどの状態のことです。それにより五感も狂ってしまい、メタボリックシンドロームやうつ病、ガンの原因になる、さらに脳の神経炎症の結果で認知症になる…すべては「脳疲労」から起こりうると藤野先生は説かれています。
1995年にアルツハイマー病(AD)患者の死体脳でプラズマローゲンが減少していることが報告されましたが、その後研究はなかなか進みませんでした。そして2007年に血清プラズマローゲンの減少が証明されて以降、藤野先生率いる研究チームは長きに亘って世界をリードしてプラズマローゲンを用いたAD治療法と開発を行ってきました。
先日その最新の研究成果が発表され、世界的に権威のある医学雑誌「The Lancet」の姉妹誌「EbioMedicine」にプラズマローゲンの認知機能改善に関する論文が掲載されました。(2017年3月号掲載)
医薬品レベルの厳しいエビデンス実験を敢行
ホタテ由来のプラズマローゲンの学習記憶改善効果を二重盲検試験※した藤野先生チームの研究内容は次のとおり。
※二重盲検試験とは、医学の試験・研究で実施される、医師からも患者からも薬や治療法などの性質を不明にして行う客観的な評価が行える手法です。
◆軽度アルツハイマー病および軽度認知障害におけるプラズマローゲンの経口投与による効果とプラズマローゲン血中濃度の変化の実験
使用 | ホタテ由来プラズマローゲン1mg (毎日摂取群とプラセボ群を無作為に割付け) |
---|---|
対象 | 軽度ADと軽度認知障害(MCI)の60〜85歳 (上記の判定は、ミニメンタルステート検査:日本語版20〜27点/高齢者用うつ尺度短縮版日本語版:5点以下とする) |
対象人数 | 328人 |
摂取期間 | 24週間 |
試験方法 | 全国25カ所施設、無作為、二重盲検試験、プラセボ対照 |
無作為選択やプラセボ(偽薬)での二重盲検などの方法は、薬剤の開発では必須の試験法なのですが、疫学的臨床研究としても最も厳しい研究方法になります。サプリメントでこれほど厳しい研究方法を用いて証明実施したことは、異例だったとのことです。
プラズマローゲンで記憶機能や周辺症状が改善!
厳しい試験方法の結果、登録された328人中276人が試験を終了(治療群140人、プラセボ群136人)。
結果、ホタテ由来精製プラズマローゲンの経口投与で、軽度ADでは摂取群において記憶検査が有意に改善し、軽度ADの女性および77歳以下の摂取群では、より顕著にプラセボ群との有意差がみられました。また、軽度ADでは、血漿プラズマローゲンの濃度も、プラセボ群で治療群より有意に低下したということです。
また、この二重盲検試験と平行し、中等度ADおよび重度ADの方をオープン試験したところ、中等度ADでも約半数の改善が見られ、重度ADでも29%の改善がありました。このような改善は、従来の認知症薬ではあり得ないということです。さらに、周辺状況(幻覚・抑うつ・妄想・不潔行為など)が効率で消失・改善したという興味深い結果も報告されています。
このことから、ホタテ由来のプラズマローゲン摂取によって記憶機能の改善が期待されることが示唆され、二重盲検試験では医学的に機能性も証明されました。同時に、介護をする側が悩まされていた周辺状況の改善という結果が出たことは、とても大きな成果だったということです。
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