認知症による暴力・暴言の原因と対応
認知症が進むと、暴言を吐いたり、暴れたり物を壊すなどの暴力がみられることがあります。このページでは暴言・暴力の原因や、対応方法について詳しく説明します。
- この記事の目次
暴力・暴言が出る原因は?
脳の機能低下で感情が抑えられない
誰でも怒る事はありますが、通常は、少々嫌な事があってもその感情を表に出さずに抑えられているはずです。しかし認知症患者さんの場合、脳が障害されているため、抑制が難しくなることがあります。また、怒りを感じても、不安や怒りの気持ちを表現できなかったり、伝えにくいため、暴力や暴言といった行動につながるのです。
症状によって色々な事が理解しにくくなり、不安やいらだちも大きくなっています。恐怖や不安の中にいる時に怒られたりすると、とっさに暴力が出てしまう場合もあるでしょう。
何故怒っているのか客観的にはわからなくても、本人にとっては必ず原因があります。このような場合、不安や怒りの原因を聞き、取り除くことが大切です。
認知症のタイプによって違いも
認知症のタイプによって、障害が起きている脳の部分は異なり、それが暴力や暴言の原因になる場合もあります。
前頭側頭型認知症では、今までは穏やかだったのに、人が変わったように怒りっぽくなったりします。またレビー小体型認知症では、幻覚などが見えるため、恐怖や振り払いたいという衝動から、暴れたり暴力が出ることもあります。
しかし、これは認知症という病気のせいであることを理解しましょう。
前頭側頭型認知症とは? レビー小体型認知症とは?どんな時に暴言・暴力が現れやすい?
否定されたり自尊心が傷ついた場合
物盗られ妄想が見られたときにそれを否定されると、本人にとっては現実なので怒りを感じてしまいます。自尊心を傷つけ、暴言や暴力の原因になってしまうのです。
その他にも、例えば長年休まずに畑仕事に出かけていた方が、毎朝昔と同じように畑に出ようとします。しかし、外出は危ないと考える家族に止められると、自分の行動を拒否されたと感じます。自尊心が傷ついた結果、暴力や暴言が現れることがあります。
物盗られ妄想の原因と対応不安を感じた場合
入浴拒否から暴力に発展することがあります。服を脱がされたり、裸になることへの羞恥心や恐怖から、入浴を拒否したり暴れたりするのです。 服を脱ぐときは同性の介護者が関る、必ず声かけをして不安を解消するなどの対応が必要です。
暴力・暴言が出たときには
認知症の症状であることを理解し、原因を探る
まず暴力や暴言が出る原因を理解するようにしましょう。本人によく話をきいたり、状況をよく確認し、不安や怒りの原因を探してみてください。本人は介護者を困らせようとしているわけではなく、病気の症状であることを理解しましょう。
距離を置く
暴言や暴力が始まったら、その場で対処しようとせず、少し距離を取り、危険行動がないか見守りましょう。興奮状態の中では、何を言っても余計に興奮させてしまうことも多いからです。
予防や改善のためにできること
関わり方を考える
本人に対する関わり方を考えてみましょう。
本人に何かをさせたい時にうまくいかなくても、無理やりさせたり、力で抑えるのは逆効果です。怖かったというイメージができてしまうと介護拒否につながり、暴力が現れる場合がありますので、注意しましょう。
その他、以下のようなことを心がけてみてください。
・本人を尊重する
・「ベッドに移りましょう」「服を着替えましょう」など頻繁に声をかけ、不安を軽減する
・代わりにやってあげるのではなく、できることは任せる
・安心感を提供するために、手を当てたり、さすったりといった「タッチング」を行ってみる
介護者を変えてみる
暴力や暴言は、身近な家族に出やすいと言われています。ヘルパーはどう対応したらよいか教育を受けていますので、介護を任せてみましょう。しかし、担当するヘルパーの入れ替わりが激しいと、落ち着かなくなる場合もあるので、顔なじみのヘルパーを作ることも大切です。
体調が悪くないかチェックする
暴力が体調不良から来る場合もありますので、興奮が治まったら熱を測るなど、体調チェックをしてみましょう。便秘でお腹が苦しくイライラとなり、暴力へ繋がることもあります。排便や排尿はスムーズか確認し、トイレに定期的に行くようにタイミングを図ることも大切です。
医師に相談する
前頭側頭型認知症やレビー小体認知症は、全く予期せぬ暴力が見られる場合もありますので注意が必要です。
また、暴力が酷くなるようであれば医師に相談し認知症薬を変えてもらったり、 興奮などを抑える薬を処方してもらえることもあります。
参考文献:1)今井幸充.認知症を進ませない生活と介護.法研,平成27年,p179~181.
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