認知機能低下を予測出来る新たな方法

2024年9月19日

VRゴーグルを⽤いて非侵襲・短時間・安価でスクリーニング

MIG株式会社(東京都渋谷区)と南東北グループ医療法人財団健貢会 総合東京病院(東京都中野区)は、MIG社開発した「VRゴーグルを用いた脳健康測定」の共同臨床研究「VRゴーグルを用いたナビゲーション機能と空間学習能力の測定による認知機能の定量化に関する研究」の成果を発表し、『Journal of Alzheimer’s Disease』誌に掲載されました。さらに、11月22日に日本認知症学会において発表予定です。

本研究では、MCI期と診断された患者を被験者にMIGの「脳健康VR測定」を実施、2021年7月下旬より3年に渡り様々なデータを収集し分析を進めて来ました。研究結果のポイントは次の通りです。

研究結果のポイント

・VR経路統合能タスクは、従来の認知機能検査では識別出来ない、アルツハイマー型認知症発症リスクの高い進行性のMCI患者と安定したMCI患者とを高い精度で区別することが出来た。
・さらに、VR経路統合能タスクはMCI患者の12ヵ月後の認知機能低下を予測することが示唆された。
・この簡単な検査は、将来のアルツハイマー病のリスクの高まりを検出するための、高価で時間のかかる侵襲的な神経画像検査と同等かそれ以上の性能がある。
・VR経路統合能測定法は、簡便、短時間、非侵襲、安価でありながら、前駆期アルツハイマー病患者におけるアミロイドβ修飾薬の治療選択のためのスクリーニングツールとなりうることが示唆された。

南東北グループでは、アミロイドβ(Aβ)凝集体モノクローナル抗体「レケンビ®」(一般名レカネマブ)が保険適用になったことを受けて既に認知症治療を実施しており、同グループの人間ドック・健診センターでの導入や、民間機関や他の人間ドック・健診センターからのエスカレーション先としても、MIGとしての連携関係を強化して行く予定です。

注) アルツハイマー病の脳画像所見があるMCI患者(LMCI+)と初期MCI患者(EMCI)と脳画像所見がないMCI患者(LMCI-)を有意な差で識別することが出来ています。

注)ROC曲線による特異性分析では、判定の精度を比較しており、上記右図のようにAUC値が1に近い程精度が高いという結果になります。この比較の結果、VRによる経路統合能測定では、エラー距離、角度誤差の測定結果は共に、既存の認知症の検査結果であるADスコア(MRIやSPECT検査でアルツハイマー病に一致した画像所見をスコア化)よりも高い精度であることを示しています。

関係者コメント

MIG代表取締役社長 甲斐英隆
「南東北グループの羽生春夫先生とは、弊社取締役CSO高島明彦教授の学習院大学とも連携し、過去4年間MCI期と診断された患者様に対して脳健康VR測定の有効性を探索および確認する共同臨床研究を続けて参りました。今回この測定アプローチにより数多くの未病者に対して、幅広く有効なスクリーニングツールとして使って頂き、より多くの方が治療薬の対象としてタイムリーに発見され、治療を受けることが出来ることに少しでも貢献出来ればと考えております。そのために医療機関の自由診療分野だけでなく、健康経営企業社員向けや地方自治体の住民向け、またはショッピングモールなどのオープンチャネルでこのスクリーニング測定を幅広く受けられるようなご提供体制を構築して行きたいと思います。」

南東北グループ総合東京病院認知症疾患治療センター長 羽生春夫
「アミロイドβ修飾薬の臨床展開が始まっている中で、数多くのデジタルバイオマーカー検査が登場しているが、MIGの脳健康VR測定は経路統合能を測定することで、アルツハイマー病前駆期患者を検出出来、12ヵ月後の認知機能低下を予測出来るが確認出来た。この検査方法は簡便、短時間(健常者に対しては所要時間は8分程度)、非侵襲、安価であり、アミロイドβ修飾薬の治療選択のための有望なスクリーニングツールとなりうると考えています。」

南東北グループ法人本部先端医療統括マネージャ 藤井市郎
「南東北グループ総合東京病院では、「レケンビ®」が保険適用になったことを受けて認知症治療に向けた脳ドックの在り方について検討を始めており、MCIならびにPreinicalの早期発見はより重要性を増しておりますのでMIG株式会社がそれに寄与するとの研究成果の発表を受けて、これを機にグループ病院に浸透を図りたいと思っております。」 

最新のVRゴーグルを使った8分間程度の簡単なテスト。
アルツハイマー病に至る脳神経破壊(画像2)が一番はじめに起きる嗅内野(きゅうないや_海馬と並ぶ脳の中枢)の機能「空間ナビゲーション※1」を測定。

※2 空間ナビゲーション(経路統合能)
空間ナビゲーションという機能は、空間の中での自分の位置を認識するものです。オキーフ博士・モーザー博士夫妻らがノーベル賞(2014年医学・生理学賞)を受賞した研究を経て、ヒト試験やバーチャル空間での試験で実証されてきました。嗅内野等が主要な役割を果たし、エピソード記憶よりも早期に障害されることから、アルツハイマー病の前駆期を検出できる可能性が推測されています。

(文頭画像はイメージ、文中画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
アルツハイマー病を前駆期で検出し、認知機能低下を予測出来る新たな方法を開発


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