オーラルフレイルが抑うつ傾向の発症リスクを高めることを確認

2024年9月24日

日本老年歯科医学会第35回学術大会にて発表

サンスターグループは、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長らのグループとの共同研究において、地域在住高齢者はオーラルフレイルを有することで、抑うつ傾向の発症のリスクが高まることを明らかにしました。研究成果は「日本老年歯科医学会第35回学術大会」(6月28日~30日、於:札幌コンベンションセンター)にて発表されました。

研究の背景・目的

“オーラルフレイル“は、2024年4月1日に発出された「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」において「歯の喪失や食べること、話すことに代表される、さまざまな機能の『軽微な衰え』が重複し、口の機能低下の危険性が増加しているが、改善も可能な状態である」と定義づけられました。同ステートメントでは、オーラルフレイルを判定するための5つの問診項目(OF-5)が発表されました。

高齢者は生活環境や身体機能の変化により、精神的な不調をきたしやすく、特に高齢期の抑うつ傾向は、日常生活の質に悪影響を与えるだけでなく、認知症発症や死亡リスクの増加と関連することが報告されており、早期予防が望まれています。そこで、問診で簡易に判定のできる口腔機能の軽微な衰えである“オーラルフレイル”が抑うつ傾向の発症リスクを高めるかどうかを研究しました。

研究概要

本研究は、千葉県柏市在住の自立高齢者1,356名を対象におこなわれました(通称:柏スタディ)。2012年の調査開始時に抑うつ傾向がなく、データ欠損の無い1,356名を解析対象とし、OF-5で判定したオーラルフレイルの有無と2018年までのフォローアップ期間中の抑うつ傾向の発症リスクについて解析しました。

研究結果

調査開始時、オーラルフレイルの有症率は35%であり、6年間の追跡期間中に新たに18%の方が抑うつ傾向を発症しました。オーラルフレイルを有する方は、そうでない方と比較し、抑うつ傾向の新規発症のハザード比が1.53に高まることが判明しました(図1)。また「固いものが食べにくい」「お茶や汁物でむせる」と回答した方も、抑うつ傾向の新規発症リスクが高いことが判明しました(図2)。

図1

図2

結論

地域在住高齢者において、OF-5で評価されるオーラルフレイルは、将来の抑うつ傾向発症の予測因子となりうることが判明しました。また、「固いものが食べにくい」「お茶や汁物でむせる」などの口腔機能の低下は、抑うつ傾向の新規発症リスクを高めることが示唆されました。より早期から抑うつ傾向を予防するためにも、お口のささいな衰え(オーラルフレイル)に気づき、対策することが重要であると考えられます。
サンスターは、これからもオーラルフレイルに関する啓発を継続し、オーラルフレイルの認知及び理解を促進し、お口の健康を通じた健康寿命の延伸に貢献していきます。

研究結果に関するコメント

東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢(いいじま かつや)機構長
オーラルフレイルは、高齢期に生じる複数の課題が重複して顕在化する“口の衰え”であり、早期に気づき対策を行うことにより、機能低下を緩やかにし、さらには改善する可能性がある概念であります。一方、抑うつ傾向は、ご本人にとって負担の大きい症状であり、オーラルフレイルがそのリスク因子の一つとして気付きを与えることに活用できれば、ご本人だけでなく、その周囲の方のQOLの維持向上につながります。また、医療従事者にとっても、簡単な問診項目で抑うつ傾向の新規発症リスクの一つを判定することができれば、患者さんへの応対へも生かしていただけるのではないでしょうか。今回の研究結果が、オーラルフレイルの概念のさらなる普及につながり、高齢になっても健康を維持するためのコツの一つとして、お口の機能維持が認知されることを期待します。

<学会タイトルと著者>

演題:オーラルフレイル新5項目(OF-5)で評価したオーラルフレイルと抑うつ傾向発症との関連:柏スタディ
発表者:楠本奈央1)、永谷美幸1)、溝口奈菜1)、田子森順子1,2)、池田健太郎1)、前田真理子1)、田中友規2)、孫輔卿2,3)、呂偉達2)、飯島勝矢2,3)
1)サンスター株式会社、2)東京大学高齢社会総合研究機構、3)東京大学未来ビジョン研究センター

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
オーラルフレイルが抑うつ傾向の発症リスクを高めることを確認 ~日本老年歯科医学会第35回学術大会にて発表~


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