若年性認知症「HDLS」の診断基準を世界で初めて提唱 【新潟大学】

2015年8月24日

遺伝性白質脳症の遺伝子解析研究

新潟大学は、若年性認知症の原因疾患となる「HDLS」の臨床診断基準を策定したことを、8月20日に報告した。

同大学脳研究所神経内科と遺伝子機能解析学分野の研究グループは、厚生労働省の研究班とともに遺伝性白質脳症の遺伝子解析の研究をおこなっており、今回、新潟市で開催された「第56回日本神経学会学術大会」において、最新の研究成果を発表。

臨床診断基準策定のニーズ

軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS:Hereditary diffuse leukoencephalopathy with spheroids)は、65歳未満で発症する若年性認知症の原因疾患の1つである。長年「HDLS」の診断は難しいとされてきたが、2012年に「HDLS」の原因遺伝子「CSF-1R:colony stimulating factor 1 recepto」が発見され、遺伝子解析による診断が可能となったことで、世界中から変異陽性例の報告がなされている。

しかし白質脳症の原因となる疾患は多数あり、臨床現場での診断は容易ではない。そのため、さまざまな白質脳症の中から「HDLS」を見極め、効率よく遺伝子診断をおこなうための臨床診断基準の策定が強く望まれていた。

「HDLS」の病態解明と治療法の開発に期待

今回の研究では、解析した変異陽性22家系24症例および文献検索による変異陽性50家系77症例の臨床像と、「HDLS」の臨床像の特徴を系統的に抽出し解析した。その結果、若年性認知症においては日本人家系が32%と、とくに多いことが明らかとなった。

さらに、発症年齢は43プラスマイナス7歳、死亡年齢は52プラスマイナス9歳、死亡までの罹病期間は5プラスマイナス3年と、比較的若い年齢で発症し、進行が早く、認知機能障がい、次いで精神症状や運動症状がみられることがわかった。また頭部画像では、白質病変のパターン、脳梁の菲薄化、脳内石灰化病変などの特徴がみられた。

研究グループは、これらの特徴に基づき、definite、probable、possible の判定基準を有する「HDLS」臨床診断基準案を世界で初めて策定した。この診断基準を用いることにより、「HDLS」の病態解明や治療法開発に向けた研究のいっそうの進展が期待されている。

(画像はプレスリリースより)

▼外部リンク
新潟大学 プレスリリース

▼関連記事
若年性認知症とは


【この記事を読んだ方へのおすすめ記事】

このページの
上へ戻る