中年期の脳脊髄液の変化で、その後の認知症発症リスクを予測。
米国ワシントン大学の研究グループ
米国ワシントン大学医学部の研究グループは、中年期における脳脊髄液の変化を調べることは、その後の認知症の発症リスクを特定するのに役立つ可能性があることを発表。
この研究成果は、「JAMA Neurology(ジャマニューロロジー)」2015年6月号で報告された。
169人を年齢別に3グループに分けて調査
神経学の教授であるアン・フェイガン博士は、
「中年期のバイオマーカーによって、将来的にアルツハイマー病を発症するかどうかを決定づけるのは時期尚早ですが、現在私たちは、それを目標として研究を進めています。いつの日か、記憶を喪失する症状が現れる前に病気の発症を予測し、何らかの対策とともに事前に治療がおこなえることを願っています」(米国ワシントン大学プレスリリースより引用)
と述べている。
フェイガン博士の研究グループは、45歳から75歳の認知機能が正常な169人を対象に、10年以上にわたり検証をおこなった。参加者は、3年ごとに臨床検査、脳の画像撮影、脳脊髄液のバイオマーカーを検査した。
初期評価においては、年齢別に45~54歳、55~64歳、65~74歳と3つのグループに分類し、脳内のアミロイドベータ42、タウタンパク質、YKL-40、アミロイド斑について検証をおこなった。
解明には長い観察が必要
その結果、認知機能が正常である45~54歳において、脳脊髄内のアミロイドベータ42の値が低下すると、後年の脳画像にプラークが顕著に表れることが判明。また、タウタンパク質などのバイオマーカーが、50~70歳代中ごろになると急激に上昇することがわかった。さらに全ての年齢グループにおいて、YKL-40の上昇が見られた。
研究者らはまた、「APOE」という遺伝子について特定の2種類を持つ人は、ほかの人より10倍発症リスクが高いこともわかっており、バイオマーカーの変化はこれらの遺伝子を持つ人でとくに顕著に表れた。
フェイガン博士は、「アルツハイマー病は、長期的なプロセスを経て進行していく病気であり、私たちはその解明のために、長い時間をかけて微妙な変化を逃さず検証していかなければならない」と語った。
アルツハイマー病の発症予測は、可能となるのか不可能なのか、今後の研究に注目したい。
(画像はプレスリリースより)
▼外部リンク
米国ワシントン大学 プレスリリース/
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