映画『パーソナル・ソング』1000ドルの薬より、1曲の音楽を !認知症患者への音楽療法
サンダンス国際映画祭で観客賞受賞
国際的な登竜門として知られるサンダンス国際映画祭において、今回、ドキュメンタリー部門で観客賞を受賞した小品『パーソナル・ソング』(原題「Alive Inside」)が、2014年12月より、東京のシアターイメージフォーラムほか、全国の劇場で順次公開される。
サンダンス国際映画祭では、審査員や観客からの高い支持を得ての受賞となった。アメリカでは、インターネットの映画サイトRotten Tomatoesでも、観客の満足度94%を記録したという。
「ミュージック&メモリー」
この映画の軸となるのは、IT業界出身で、ソーシャル・ワーカーのダン・コーエン。ある日認知症の人に、iPodを使って思いでの曲を聴かせることを思いつく。
彼は、施設で、認知症を患っている黒人男性に音楽を聴かせる。自分の娘の名前すら忘れてしまっているのに、ゴスペルの名曲「ゴーイン・アップ・ヨンダー」を聴いたとたん、若いころの鮮明な記憶を取り戻し、全身で喜びを表現する。
これをきっかけに、ダンと監督マイケル・ロサト・ベネットは、3年におよぶ取材を開始する。ルイ・アーム・ストロング「聖者の行進」、ベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」、ザ・ビートルズ「ヘイ・ジュード」「抱きしめたい」などの名曲が、認知症の人々を目覚めさせていく。
ダン・コーエンの音楽療法は、「ミュージック&メモリー」と名づけられた。映画完成前に、ショートムービーをインターネットでアップしたところ、1週間で700万回も再生。全米で一躍注目を集め、今や世界7カ国で上映されている。
音楽は、認知症の特効薬
アメリカでは認知症の人々が年々増加傾向にある。日本でも、高齢者の4人に1人、約400万人が認知症を抱えているとされる。
認知症は病名ではなく、記憶力や判断力が障害をうけ、社会生活に支障をきたす状態。アルツハイマーは、脳の委縮が進んでおこる病気と定義されている。治療のためにさまざまな取り組みがなされているが、現在のところ、認知症やアルツハイマーには、完全な治療法がないといわれている。
同作品では、薬や医学的な治療ではなく、それぞれの「パーソナル・ソング」によって、患者たちが自分を取り戻す幸せな瞬間をクローズアップする。
ここ数年、音楽は認知症に効果的であるという報告が多い。映画『パーソナル・ソング』は、認知症・アルツハイマー患者やその家族にとって、心をなごませ、希望をもたらす作品となるだろう。
『パーソナル・ソング』の予告編は、公式サイトより鑑賞が可能だ。
(画像は公式サイトより)
▼外部リンク
『パーソナル・ソング』公式サイト
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