筋肉トレーニング(無酸素運動)で認知症予防

筋肉トレーニングと聞くと、「ダンベルを持って運動しないと…」「きつい運動をしないといけないのかな?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。

今回、説明する筋肉トレーニングは、日々の生活のちょっとした時間を使って行う運動で、続けることが大切です。

この記事の目次
  1. サルコペニアとは?
  2. フレイルとは?
  3. 認知症との関係は?
  4. 筋肉トレーニングの効果は?
  5. どんな筋肉トレーニングが効果的なの?

サルコペニアとは?

年齢を重ねると、疲れやすくなったり、体力の低下を感じる場面があると思います。筋肉を作る繊維の数が少なくなるだけでなく、筋肉の繊維自体が萎縮します。その結果、筋肉の量が減ってしまい、筋力が低下します。このように、筋力の低下が起こることを「サルコペニア」と言います。サルコペニアの原因は、加齢の他に病気、栄養の偏り、運動量の減少などによって起こります。

例えば、今まで毎日通勤していた人が定年を迎えて家にいる時間が増えた、外出する機会が減った、社会とのつながりが減ったなど社会活動が減ることによっても運動量が減少します。

フレイルとは?

サルコペニアと同じように、高齢者の生活を脅かすのが「フレイル(虚弱)」と呼ばれている状態です。フレイルは、加齢と共に運動機能や認知機能が低下し、病気や障害により日常生活に支障をきたす恐れがある状態です。年齢相応の心身の機能が低下しながらも健康な状態と介護が必要になりつつある状態の中間ことを言います。このフレイルの原因のひとつが、サルコペニアです。

認知症との関係は?

サルコペニアやフレイルによって身体的な活動量が減るだけでなく、社会との関わりも疎遠になると、家に閉じこもりがちになったり、認知機能が低下する恐れがあります。身体機能が低下すると、認知機能も低下しやすい傾向があると言われています。

そこで、筋肉トレーニングを行うことで、脳が刺激され体の筋肉に力の入れ具合を刺激すると共に、筋肉は脳からの刺激を受けて伸び縮みする感覚や痛みの感覚を脳に伝えます。その結果、認知症の予防につながります。

筋肉トレーニングの効果は?

サルコペニアは筋力の低下、フレイルは健康と介護が必要になる間の状態であり、原因のひとつがサルコペニアであると説明しました。では、どのようにしてサルコペニアとフレイルの予防、認知症の予防をすれば良いのでしょうか。

筋力の低下を予防するためには、筋肉トレーニングを行うことが大切です。筋肉トレーニングの効果を以下にまとめました。

①筋肉の繊維を太くし、筋肉の量を増やします。その結果、筋力の増加につながり、体力の維持と共にサルコペニアを予防します。

②筋肉の量が増えることで、基礎代謝量(体を動かしていない時に使うエネルギー量)が増えます。そのため、消費するエネルギー量が増えるため、太りにくい体になる、体脂肪が減少する、血液の循環が良くなるなどの効果があります。

③基礎代謝量が増えることで、糖の代謝を促し、インスリンの効果が得られやすくなります。その結果、生活習慣病の改善につながると言われています。

④筋肉の量が増えることにより、姿勢が良くなり、歩行がスムーズになる、移動しやすくなる、転びにくくなります。また、関節への負担が減るため、腰痛などの改善につながります。

どんな筋肉トレーニングが効果的なの?

無酸素運動と言っても、息を止めることではありません。筋肉を使うためのエネルギーを、酸素を使わないで作り出すために無酸素運動と言われています。運動している間はしっかり呼吸しましょう。また、筋肉のどこに力が入っているかを意識しましょう。

①最初と最後はストレッチをしましょう
1.両手を組んで上に伸ばし、ゆっくり10数えます。
2.両手を組んで下に伸ばし、ゆっくり10数えます。
3.椅子に座って一方の足を、あぐらをかくように片方の足にのせます。そのまま上半身を前に倒し、10数えます。
4.アキレス腱を伸ばし、10数えたら、逆の足にかえて行います。
ストレッチは、気持ち良いと感じる程度にして、無理にのばすのはやめましょう。

②太ももと腹筋のトレーニング
椅子に座り、つま先を上に向けて片足を水平にまっすぐ伸ばします。そのとき太ももの筋肉に意識を集中させましょう。左右10回行いましょう。息を止めないように注意します。

③座ったまま両足を上げるトレーニング
両手で椅子をつかんで、両膝をそろえて胸に近づけます。お腹の筋肉を意識しながらゆっくり呼吸をしながら10回行います。

④背中と腰をひねるトレーニング
椅子に座って、片方の手で反対側の膝をつかんだ状態で10秒保ちます。一度力を抜いてからもう一度行いましょう。背中の筋肉に力が入っていることを意識します。左右10秒×2回ずつ行いましょう。

⑤スクワット
両足を肩幅程度に開きます。手を椅子の背や机などに置きます。背筋をまっすぐにのばし、太ももの内側に力が入っているのを意識します。かかとが浮かないようにしながら上半身を下げます。下げるのは10cm程度で良いです。最初は10回から始めましょう。

⑥すきま時間を使ってかかとの上げ下げ
電車やバスを待っている間、テレビを観ながら、調理の際に、かかとの上げ下げを行いましょう。筋トレとしての効果もありますが、気分転換にもなります。

⑦速足で階段のぼり
駅や商業施設、職場などで階段を利用してみましょう。太ももに意識を向けてのぼりましょう。ただし、他の方への配慮も忘れずに。

全ての運動を行う必要はありません。隙間時間を使って、無理せずに行うことが大切です。今日から始めてみませんか?


参考文献:1)朝田隆 まだ間に合う!今すぐ始める認知症予防 講談社,2014,p52~64
2)健康・体力づくり財団 認知症予防はカラダづくりから! (2019年12月12日アクセス)


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