認知機能検査を詳しく解説(免許更新・交通違反)

75歳以上の運転者には、免許更新時や特定の交通違反時に、判断力や記憶力を判定する「認知機能検査」の受検が必要です。このページでは、検査内容や検査の流れを詳しく紹介するとともに、結果によってどうなるかなどについて解説します。

この記事の目次
  1. 認知機能検査とは
  2. どんな検査?
  3. 検査が義務付けられた背景とは?
  4. 対象者は?
  5. 検査内容は?
  6. 検査の準備(約4分)
  7. 時間の見当識(約3分)
  8. 手がかり再生(全体で約14分)
  9. 時計描写(説明込み 約2分)
  10. 結果によってどうなる?
  11. 高齢になったら、返納という選択肢も考慮に

認知機能検査とは

どんな検査?

3つの項目で運転に必要な記憶力や判断力を測定する簡易な検査です。道路交通法により義務付けられており、免許更新時や特定の違反をした75歳以上の運転者が対象となっています。教習所などの会場で受検し、結果はその場で、もしくは後日書面で受け取れます。

検査が義務付けられた背景とは?

交通事故自体は時代とともに減少していますが、急激な高齢化に伴い高齢者による事故の割合は増加しています。75歳以上の高齢運転者による死亡事故の割合は、この10年でほぼ2倍になり、背景に認知症が隠れていることも少なくありません。

運転に自信があっても、年を経るごとに、自覚がないまま注意・判断力などが落ちている場合もあるでしょう。認知機能検査は、客観的に運転者の状態を判断し、結果を踏まえた高齢者講習を行うことで、引き続き安全な運転生活を送れるよう支援するシステムなのです。


対象者は?

対象者は以下の2つのケースになります。

75歳以上の運転者の免許更新時

運転免許証の更新期間が満了する6月前から受検できます。75歳以上になると、免許更新時には必ず受検が必要です。

75歳以上の運転者が一定の違反をした場合

2017年3月に道路交通法が改正され、75歳以上の運転者が、信号無視や一時不停止などの一定の違反をした場合、必ず受検が必要になりました。通知書を受け取ってから、1ヶ月以内に検査を受けなかった場合、免許の停止や取り消しの対象となるため、注意しましょう。

検査内容は?

検査は大きく3つに分かれており、判断力や記憶力を確認する簡単な内容になっています。説明から検査まで、所要時間は約30分です。実際の検査の流れとともに、詳しい内容を見ていきましょう。

※検査問題の出所:警察庁

検査の準備(約4分)

実際の検査が始まる前に、以下の説明や準備があります。

・補聴器・眼鏡の着用
・携帯(マナーモード)や時計をしまう
・検査の必要性・諸注意・所要時間・通知方法などについての説明
・表紙への名前や生年月日等の記入

時間の見当識(約3分)

自分の置かれている「時」を正しく認識する力に問題がないか調べる検査です。
検査当日の日時について解答用紙に記載します。

手がかり再生(全体で約14分)

少し前に記憶したものを引き出す力、「短期記憶」に問題がないかを調べる検査です。
点数の配分が全体の約6割と、重視されています。

1.絵を覚える(説明込み 約5分)
1枚に4つの絵が描いてある4枚の紙を試験官が提示します。4つの絵の中から「動物の絵はライオンですね」といった手掛かりとともに1枚ずつ覚えます。

2. 介入課題を行う (説明込み 約2分)
数字がたくさん書かれた表を見て、特定の数字を試験官の指示通りに斜線で消していきます。(30秒×2回) こちらは採点されません。

3. 絵を思い出す①(説明30秒+回答3分)
1で覚えた絵に何が書かれていたかをヒントなしで思い出し、用紙に記入します。

4. 絵を思い出す②(説明30秒+回答3分)
1で覚えた絵について「動物の絵がありました。何でしたか?」というように、ヒントとともに問題が出ます。解答用紙に記入します。

時計描写(説明込み 約2分)

空間認知能力、構成能力、数の概念の理解などに問題がないか総合的に調べる検査です。

1.時計を描く
大きな円を描き、中に時計の文字盤のように1~12の数字を書き込みます。 (1分)
2.時計の針を描く
試験官の指示通りの時間になるよう、時計の針を書き込みます。(30秒)


警視庁のHPでは、実際の検査に使用される絵や記入用紙、採点基準などが公開されています。慣れない会場での試験は誰でも緊張するものです。事前に流れを知って、家族と疑似体験をしておくと、落ち着いて試験に取り組めるでしょう。

警察庁WEBサイト「認知機能検査について」

結果によってどうなる?

検査の結果は以下の3段階に分かれます

1.「記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)」49点未満
2.「記憶力・判断力が少し低くなっている(認知機能の低下のおそれがある)」49点以上76点未満
3.「記憶力・判断力に心配がない(認知機能の低下のおそれがない)」76点以上

結果が1の場合は、臨時適性検査、もしくは医師の診断が必要となります。認知症と診断されると、手続きの上、免許取り消し・停止となります。

高齢になったら、返納という選択肢も考慮に

今はベテランの優良ドライバーでも、これからもずっと安全運転を続けられるかどうかは分かりません。もし何の準備もなく免許取り消し・停止ということになってしまうと、急に生活が不便になり、困ってしまうことも考えられます。元気に運転ができるうちに、一度車のない生活をイメージし、少しずつ準備をしておくと良いでしょう。

運転免許の自主返納者は年々増えており、それに応じて国や自治体で、返納者の生活が不便にならないよう、交通機関やタクシーの無料化や買い物の無料宅配など様々なサービスが開始されています。
お住まいの地域の自治体や県警のHPで、返納後のメリットや支援を確認しておきましょう。


このページの
上へ戻る