独居老人の対応と介護
一人で暮らす高齢者には健康や安全面でのリスクがあり、離れて暮らす家族にとっては、その生活ぶりを心配するのは当然のことです。ましてや、認知症の症状がある場合はなおさらでしょう。
今回は、一人暮らしの高齢者の現状などについてご説明します。
増え続ける高齢者の一人暮らしと認知症
内閣府の「令和元年版高齢社会白書」¹⁾によると、65歳以上の一人暮らしの者は男女ともに増加傾向にあり、平成 27(2015)年には男性約 192万人、女性約400万人、65歳以上人口に占める割合は男性13.3%、女性 21.1%となっているとのことです。
認知症高齢者の数が増え続けていることも考え合わせると、認知症を患う一人暮らしの高齢者が、今後も増え続けることが予測されます。
一人暮らしの認知症高齢者のリスクとは?
自覚のないまま症状が進行
家族と一緒に暮らしていれば、「料理の味付けがおかしい」「着ている服がちぐはぐ」など、早い段階で家族が異変に気付く場合があります。しかし一人暮らしの場合、異変を指摘できる人がいないため、認知症のサインに気づけないケースが出てきます。
もの忘れなども認知症では本人の自覚がないので、症状が進行していても気づくことができません。挨拶などは普通に受け答えができるため、近所など周りの人にも気づかれにくいでしょう
食生活への影響
認知機能の低下から食事が作れなくなったり、もの忘れによって食事に影響が出ることが考えられます。栄養に気を配ることもできなくなるので、同じものを食べ続けたり、賞味期限切れのものを食べてしまう場合もあります。
健康・衛生面への影響
記憶障害によって服薬管理ができず、飲み忘れてしまったり、逆に何度も服薬してしまい過剰摂取による意識障害など危険な状態も考えられます。 暑さや寒さに鈍感になることも多く、特に夏場は水分補給を忘れたり、エアコンを使わず脱水や熱中症などの危険にも晒されます。
また、失禁などの排泄トラブルにも対処できないまま、不衛生な状態になる場合もあり、健康や衛生面に対するリスクも大きいです。
火事など事故の恐れ
認知機能が低下し、注意力・判断力が低下する、もの忘れが増えてくると、家事がままならなくなります。特に、キッチンでの火の消し忘れやお風呂のガスや暖房器具をつけっぱなしにするなど、火の不始末は生命の危険につながる可能性があります。特にたばこを吸う場合は要注意です。
金銭管理
お金の管理ができなくなり、ガスや水道などライフラインに関わる支払いができずに、未払いで止められるケースもあります。 また、判断力が低下しているため、むやみに高額な商品を買ってしまうこともあり、詐欺などにも遭いやすいと言われています。
ご近所トラブル
認知症の種類によっては、物の善悪の判断ができなくなるものもあるので、社会的に不適切な行動を取ってトラブルとなることがあります。また、暴言や暴力のほか、症状が進行してくるとゴミ出しなども難しくなるため、ゴミ屋敷のようになってしまい、近所とトラブルになるケースも出てきます。被害妄想やもの盗られ妄想によるトラブルも少なくありません。
高齢者の一人暮らしには地域のサポートが必要ですので、近所とのトラブルは本人の生活にとって大きな障害となります。
離れて暮らす家族ができること
現状を詳しく把握する
現在どのような生活を送っているのか、確認しましょう。家賃はどのくらいでどのように支払っているのか、どんな薬をどのタイミングで飲んでいるのか、通院はいつなのか、どんな食生活を送っていて冷蔵庫には何が入っているのかなど、詳しく知ることが重要です。知っておくことで、トラブルを未然に防いだり、起こった時にも対処しやすくなります。
自尊心を傷つけない
一人暮らしの高齢者には、自分で生活ができていることに自尊心を持っている方が多くいます。病院に行く際も、その自尊心を傷つけるような対応はしないように気をつけましょう。
詳しく生活を知ると家族が管理すべきことが出てくる場合もあるでしょう。管理されることに抵抗を感じる方もいますので、上手な話し合いの上で進めましょう。
地域の社会資源やサポートを活用する
地域包括支援センターに足を運んでみてください。地域包括支援センターは、介護に関する相談を受けてくれます。
例えば、金銭管理に問題があれば成年後見制度を利用します。成年後見制度は、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談しましょう。
薬を管理できないなどの場合はかかりつけ医に相談したり、訪問看護を利用してみましょう。 その他、訪問介護や通所施設の利用も方法の一つです。
介護保険利用になると、ケアマネージャーが相談に乗ってくれます。あらゆる社会資源を活用して、家族の負担を最小限にしましょう。
参考文献:内閣府 令和元年高齢社会白書 (2020年3月2日アクセス)
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