物盗られ妄想の原因と対応

物盗られ妄想とは

認知症初期に見られ、身近な人が疑われやすい

物盗られ妄想というのは、認知症で起きやすい被害妄想の一つです。大事な物を盗られたと訴えます。自分が置いていた物が無くなったというのは、認知症ではないお年寄りでも訴えられる場合があります。置いた場所を忘れてしまうということが原因なのですが、自分が失くしたと思っているのであれば、認知症の物盗られ妄想とは少し違います。認知症の物盗られ妄想は、自分が失くしたとは全く思っておりません。ほとんど探す事もしません。ない=盗まれたとなっている場合が多いのです。

物盗られ妄想は、デイサービスやヘルパーを利用しながら在宅介護が出来ている、またはケアハウスなどが利用出来ている、認知症の初期の人には見られる事が多く、認知症の中期以降で特養などの施設入所になるようなレベルになると少なくなります。また物盗られ妄想は、圧倒的に女性に多く見られます。盗まれたと訴えられるのは、財布や現金が多いのですが、貯金通帳や宝石類なども訴えに出てきます。

物盗られ妄想で盗んだとされるのは、介護をしている時間が長い人が多くなります。また何でも言いやすいお嫁さんや娘さんが多く、ヘルパーやケアハウスなどでは、施設の職員に疑いの目が向きます。


物盗られ妄想が起こる原因

記憶障害や思考力の低下などが重なる

認知症の症状の妄想というものは、物が盗まれたと訴えるだけでなく、自分を家から追い出そうとしているなど、ネガティブなものが多くなります。自分でこうかもしれないと思った事が、間違いかもしれないという考えが出来なくなっているので、いきなりそうだと確信になってしまいます。

お金を人に盗られるのではないかと、物盗られ妄想が出る前から思っている事が多く、その為自分でしまう場所を変えたものの、移動したという事自体を忘れ、お金がないと訴える場合が多々あります。また物がないというのは、実際使っているものばかりでなく、お金の管理が出来なくなり、もう何か月も財布を使っていない状態であっても「財布」が頭に浮かび、目に見える範囲に「ない」と「盗まれた」となる事も。これは記憶障害や、思考能力の低下などいくつかの症状が重なって起こっているようです。

不安に思う気持ちから起こるケースも

またお金を盗られるのではないかなどの思いは、自分が虐げられているなどと思う事から生まれる場合もあります。何か話しかけた時に「忙しいから」とか「後で」などと言われると、邪魔者にされたとか、自分がいない時に家族が集まって話をしているのは、自分をのけものにしようとしているからなど。ご本人が不安に思う事が妄想となって、それが物を盗られたという訴えに繋がっている場合があります。


物盗られ妄想への対応

間違いを指摘すると興奮を酷くしてしまう

「あなたが盗った」と言われると「盗っていない」と言いたいところですが、自分の考えに間違いはないと思っているので、騙されるものかと思われるだけで解決にはなりません。また「盗られたのではなくあなたが失くした」などと責めたりすると、自分は間違えないとか、きちんと出来ているという思いを否定される事になるので、逆上してしまう場合があります。

別の話題に変えると興奮が収まりやすい

物盗られ妄想が出ている時には、興奮している事が多いので、探しながらご本人が好きな番組とか食事の話など、別の話を切り出すよよいでしょう。また介護施設の職員など親しくない人間では、大勢で対応するより1対1で対応するほうが良いのですが、家族の場合はご本人に物盗られ妄想がある事を理解している、別の家族を呼んで一緒に探し出し、1対1にならないようにすると、注意が逸れて収まる場合があります。

>> 妄想の対応について、認知症専門医からアドバイスを聞きました


物盗られ妄想の具体的な改善策

無くなっている事に同情する

ご本人の言葉を否定しないで、無くなって困っているのですから、それは大変だと同情をしてみてください。でも盗むという言葉は使わない方が良いです。「盗った」と言われたら「盗られたんですか?」ではなく「無くなったんですか?」というように。「無くなったのなら大変。一緒に探しましょう」と、探し始めましょう。

話を聞く機会を増やす

興奮が見られていない時に、何かご本人が不安に思っている事がないか、話を聞いてみてください。配偶者を失くして1人になった為に同居を始めたとか、ヘルパー利用をし始めたなど環境の変化が不安となっている場合があります。1人が心配で一緒に住むのだから不安がなくて良いだろうと思う家族の思いとは別に、今までとは違う生活のリズムが出来るというのは、認知症の方には負担になっている事があるのです。娘さんや息子さんの家に同居となった場合は、元々住んでいる家族の中に入っていくので、認知症ではなくても疎外感を持つ人は多いようです。

また忙しい時に話しかけられた時は「忙しいから」と突き放さずに「後で聞きますね」など後でフォローしますという言葉をつけてみてください。話しかける機会を多く持つと、改善される場合もあります。

介護者の立場について

でも物盗られ妄想が出て、犯人扱いされているのに、否定せず優しく対応なんて出来ないと言われる方は多いです。ヘルパーや施設職員は、仕事として関わっている為、対応も勉強していますし感情的にならずにすむのですが、家族では身内である為、感情的になりやすくなります。これを抑えて接するのは、介護をしている方にストレスがかかってしまう問題が出てきてしまいます。

またお嫁さんの立場では、認知症初期に見られる事で、まだ認知症であるという診断が出ていない場合もあり、旦那さんがお母さんの言葉をうのみにし奥さんを責め。より複雑な問題になる場合もあります。この場合、しばらくはお姑さんの対応はご主人に任せてしまうのも一案です。

>> 誰が認知症患者の介護をするの?専門医からアドバイスします。


専門機関に相談してみる

被害妄想から認知症であるとわかる場合もあります。初期の段階の方が、お薬で進行を遅らせたり症状の改善が期待できる為、早く病院で診察を受けられるのが良いのですが、認知症だとは思っていない事で、拒否される場合もあります。そんな場合は、県や市や社会福祉協議会などの介護相談窓口などに、相談してみてください。

>> 相談窓口の一覧はこちら


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