認知症による徘徊の原因と対応

徘徊とは

目的なく歩きまわっている訳ではありません

認知症になると、家の中や外を歩き回るといった行動が見られます。これを徘徊といいます。絶えず歩き回っておられるので、何の意味もなく歩き回っていると思われがちですが、ご本人にとっては目的があって歩いている場合が多いものです。

家の中だけですと、対応がしやすいのですが、家の外に出て徘徊が見られると、行方不明という事態にもなりかねません。認知症の方の行方不明者はなんと、年間1万人にも上るとの報告があります。たとえ地域住民や警察に保護されたとしても、認知症が進んでいた場合、自分の名前や住所などが的確に答えられないことも多い為、何処の誰なのかを捜し出すのは難しくなってしまうのです。

また認知症では周りを気にかけたり、注意する事が出来なくなる為、車が来ていても道路の真ん中を歩いたり、電車が来ているのに線路内に入ったりして、事故にも遭いやすくなってしまいます。夏の炎天下では、脱水になってしまう事もあります。徘徊が起きると家族が大変であるのは間違いありませんが、ご本人にとっても命に関わるものなのです。

>> 徘徊にまつわる2つの事件と、認知症専門医が語るアドバイス


徘徊が起こる原因

何かを探している事場合があります

認知症では、多動という症状が出てしまい、じっとしているのが難しくなる人もいます。じっとしていられないので、部屋をうろうろするようになります。でも何の目的もない訳ではなく、歩き回る理由がある場合が多いのです。

家の中で歩き回るというのは、部屋がわからなくなって部屋を探している。外に出かけてしまうのは、今いる所が自分の家ではないと感じ、落ち着かなくて外へ出てしまう、また自分の家を探しに出かけてしまうという場合が多いのです。また男性の方なら、まだ自分は仕事をしていると思い込み、仕事をしに外へ出かける事もあります。

探している自分の家も、仕事先も見つからないので、どんどん探し歩きます。ただ、最初は目的があっても、探している途中で何を探しているのかを忘れて、ただ歩き続けるという場合もあります。認知症では疲れるという感じも鈍くなってしまうので、夜通し歩き続けられたりして、かなり遠くまで行ってしまっている人もいます。また見つかっても、家を出たいという目的が無くならない限り、また同じ事を繰り返してしまうのです。

前頭側頭葉型認知症の特有の症状で徘徊が見られる事も

認知症の中でも、前頭側頭葉型認知症では、同じ事を繰り返す行為が見られる場合があります。家の中ですとベッドから家を一周してまたベッドに戻るというのを繰り返したり、外では近所を1周して帰ってくるなどといったケースです。他の種類の認知症による徘徊と異なるのは、部屋や家の場所がわからなくなっている訳ではないので、迷子にはなりにくいという事です。ただし、注意が出来ないという点は同じなので、事故に遭う危険性は高いです。

>> 種類別認知症の症状はこちらでご説明します。


徘徊への対応の仕方

怒る事は逆効果です

家の中で探しまわるのは、部屋だけでなくトイレである事もあります。ですから、家の中を徘徊している時は「部屋へ帰りましょう」とか「トイレに行きましょう」などと声をかけてみてください。

また何か不安な要素が家の中にあるのではないか、という事も考えてみてください。幻覚が見える人では、誰か知らない人が家にいるので、怖いから外へ逃げるといった人もいます。ご本人の言葉を聞いてあげてください。

徘徊については、怒っても逆効果になるだけです。怒られる事で怒られた嫌な場所という認識になってしまいます。家の中の徘徊で怒られ、外へ飛び出してしまう事もあり、また怒られた嫌な場所だから自分の家ではないと、外へ探しに出るというようになってしまう場合もあります。

>> 徘徊への対応でよくある質問はこちら

徘徊の具体的な改善策

トイレに時間を決めて誘導

トイレを探すという徘徊については、まだ認知症が初期の段階で、部屋をトイレの近くに変えるのも良いでしょう。認知症が進んでからでは、今度は部屋が認識出来なくなるので止めてください。またトイレがわからない時は、時間を決めて探す前にトイレに誘導してみてください。

>>認知症介護の注意点:排泄のときの注意はこちら

出来れば歩かせてあげる

ただじっと出来なくて徘徊している時は、部屋へ誘導しようとすると怒る場合があります。そのようなときは、徘徊することに差し支えがなければ、気が済むまで歩いてもらってもよいでしょう。ただし、転んだりする危険があったり、ウロウロするのに問題があれば一緒にしばらく歩いて、今日のご飯など話題を変えて、落ち着いてから部屋に誘導するのが良いでしょう。

玄関の鍵は手の届かない場所、また名前がわかる物を服に

外に出かけてしまう方には、まず玄関の鍵を手の届かない場所に付け替える。窓を開けて出られる人もいるので、窓の鍵も開けにくいものに変える必要があります。もし玄関の鍵をかけ忘れたりした時の為に、玄関に呼び鈴などの、ドアが開いたら鳴るようなものをつけてみてください。もし1人で外に出られてしまっても大丈夫なように、GPS機能の付いた小さなアクセサリーも販売されているようなので、利用をおすすめします。また服や靴などに名前と連絡先などを書いたワッペンのようなものをつけておくのが良いでしょう。

デイサービスなどの利用を

じっと出来ない為に徘徊になっている場合は、徘徊を止めさせる手段をとると、ストレスを与えてしまう事になります。もし一緒に歩く事が出来る日があれば、短時間でも一緒に歩いてあげてください。デイサービスなどを利用すると、デイサービスで歩く事で、家で落ち着く場合がありますので、利用も考えてみてください。徘徊は家族の精神的負担も大きいので、負担を軽くする意味でも、外部に早めに相談しましょう。

近所の人や民生委員にも連絡

徘徊が発生すると、いなくなった事で行方不明?事故に遭ってない?など家族の精神的な負担も大きくなりがちです。徘徊は社会問題として、対策が急がれているものですから、周りの人に迷惑がかかると思い込まないで、近所の方や民生委員などにも、徘徊がある事を伝えておいて、もし外で見かけたら教えてもらえるようにすることも重要です。

家族の気持ちの持ち方

また徘徊は悪いものとされがちですが、お年寄りの筋力低下には歩くというのは良い事で、便秘の解消にもなるのです。徘徊が出て困ったと悪い方ばかりを考えず、何が原因で歩いているのかをしっかり見つけ出し、適切な対応を行いましょう。ただじっと出来ないだけなら、外へ1人で出てしまうのは危険ですが、家の中を歩いて回っても良いのではないかと思うくらいの気持ちも必要です。ただ家の中の敷居などちょっとした段差でも転んでしまう場合もありますので、段差をなくしたり、ぶつかってケガをするような物は、置かないようにする事が大切です。

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