フランスベッドから11月に発売された徘徊防止システムは、家族が車の鍵サイズの認証キーを持ち、何も持たない認知症患者が通ると、光と音で家族に知らせるという、これまでの徘徊防止システムとは逆転の発想から生まれた画期的なシステムだ。多様化する在宅介護のニーズの中で、施設に入所させるのではなく、出来る限り住み慣れた住まいで暮らし続けることをサポートするために新たに生まれた商品だ。
これまでの、家の玄関や勝手口に置くタイプの徘徊センサーは、認知症患者本人に認証キーを持たせ、玄関などに置かれた徘徊感知器の前を通ると、家族に対して外出を知らせるタイプがほとんどだった。しかし、これは、本人が認証キーを常に持ち歩いていることが前提となる。そのため、本人が知らない間にはずしてしまっていた場合は意味をなさなくなってしまう。
家族は、認知症患者本人が認証キーをしっかり身に着けているかを毎日気にかけなければならない。これは、家族にとって大変な負担になる。また、「キーをきちんと持った?」と何度も確認されることが、認知症患者本人にとっても大きなストレスになる。お互いにストレスが溜まり、それが認知症の症状をさらに悪化させるなど、かえってマイナスになってしまうこともあるであろう。
徘徊防止システムは、認知症患者が「認証キーをなくしてしまう」、「装着タイプの認証キーを外してしまうことで徘徊を検知できない」といった、これまでの徘徊防止システムでは対応できなかったニーズに応えられる。
家族がいちいち認証キーの所在を確認しなくて済むうえ、認知症患者本人も普段の生活スタイルを崩すことなく日常生活を送れるため、ストレスの軽減にも繋がるのだ。在宅介護の快適化に大きく役立つと言えるだろう。
年々増加する高齢者人口。そして、それに比例する認知症患者の増加は今や社会問題となっている。2013年では、徘徊などによる行方不明の届けがあった数が1万人以上。そのうち、死亡が確認されたのは388人という深刻な状態が明らかになっている。在宅介護を選択する家庭が増えていく中、認知症患者の徘徊は、介護する家族にとっても大きな負担である。
徘徊対策アイテムは徘徊センサーの他に、最近では、簡単に鍵を開けられないようにする「ダブルロック」、顔認証で監視カメラに映った認知症患者を察知する「顔認証システム」、認知症患者が今いる位置を把握するための「GPS」、ベッドから離れたことを知らせる「離床感知器」、携帯で徘徊をキャッチするシステムなどが登場してきた。
しかし、徘徊してしまう前に気づけるようなシステムは、家から出て行ってしまう認知症患者の徘徊を事前に介護者に知らせることになり、外への徘徊を未然に防ぐことができる。認知症患者の安全を確保する、家族の安心感を高める、介護者の負担の軽減することに大きく役立つと言えよう。
「新しい徘徊防止システム」と合わせて以下の対策を行うことも、より効果的に徘徊を防止できるといわれている。
・ 時間を決めてトイレに連れて行く
トイレを探して徘徊するケースも多いため、時間を決めて行かせてあげたり、部屋をトイレの近くにするなどが有効である。
・ できるだけ歩かせる
じっとしていられない徘徊者のケースは、家の中を好きなだけ歩かせるのも対策のひとつだ。転倒の危険などがある場合は、しばらくは付き添って歩き、落ち着いてから部屋に誘導してあげるのもよい。
・ 介護サービスを利用する
・ 近所の人にも状況を伝えておく
徘徊があることを、近所の人や民生委員にも伝えておき、いざというときに協力してもらえる状態にしておくことも大切である。