認知症のリハビリに回想法

認知症のリハビリテーションの一つに、思い出を語ることで認知症の進行を遅らせ、精神的な安定を図る「回想法」があります。ここでは回想法の効果や方法についてご紹介します。

回想法とは?

回想法は1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法です。当初は高齢者におけるうつ病の治療として行われていましたが、後に認知機能が改善することも明らかになり、認知症のリハビリとしても実践されるようになりました。現在、日本でも介護施設などで取り入れられています。

認知症の患者は、短期記憶といって少し前にあったことを記憶することは得意ではありません。しかし、昔のことについては覚えていることが多いため、回想法を行うことができるのです。

回想法の効果

昔のことを思い出そうとしたり、他者と「話す」「聞く」といったコミュニケーションを図ったりすることで自然と記憶力や集中力などが使われ、脳が活性化されます。

認知症の症状の進行を遅らせることが期待できるほか、蘇った思い出が楽しいものであるほど、心理的に安定する効果も見込めます。「自分はこんな人生を歩んできたんだ」と過去を振り返ることで失っていた自信を取り戻せることも。

回想法の有効性についてはこれまで世界中で検証されてきています。最近では2016年6月にヨーロッパの研究者が41人の認知機能が低下した高齢者を対象に検証を行いました。すると記憶だけでなく、行動や精神状態(不安やうつ症状など)が有意に改善した事を報告しています。

また日本でも国立長寿医療研究センターの遠藤英俊医師が65歳~86歳の人を対象に2年間検証を行い、認知機能が改善し、それが2年後まで効果が持続する可能性がある事を報告しています。

回想法の方法

回想法には、1対1で行う「個人回想法」と6人ほどの複数人で行う「グループ回想法」があります。個人回想法は、特別な知識がなくても家庭で気軽に取り組むことができ、グループ回想法は施設などで専門家と一緒に行うのが一般的です。グループ回想法には参加者との新たな出会いが生まれ、ともに過去を楽しみながら語り合えるといった特徴もあります。

どちらの回想法も大切なのは、当事者の記憶を引き出す「きっかけ」を用意してあげることです。きっかけは当事者に尋ねる質問の内容だったり、思い出の品だったり。

質問する側としては、以下のようにライフステージを示すキーワードを参考にすると良いでしょう。 「ふるさと」「子ども時代」「小・中・高校時代」「趣味」「仕事」「交友関係」「出会い」「結婚」「出産」「子育て」「孫の誕生」「定年」「これから」

記憶を引き出す物としては、子どもの頃に遊んでいたおもちゃや昔の写真、若い頃に流行した映画のポスターやCDなど。最近では高齢者が青春時代を過ごした頃のポスターを掲示している施設もあるそうです。


回想法のコツや注意点

行いやすい回想法ですが、以下のことを意識しておくとより効果的です。

当事者が答えやすいような具体的な質問をする

× 子ども時代を思い出して 子ども時代と言っても幅広いため、答えにくい質問です。
○ 小学校の頃は何の授業が好きだった? 「小学校」「授業」という具体的なキーワードが質問に盛り込まれているため、当事者は答えやすいでしょう。

無理に聞き出そうとしない

過去の記憶は楽しいものばかりではありません。質問をしてみて進んで話すようであれば傾聴し、話したがらないことであれば質問の内容を変えてみましょう。

間違いを訂正しない

当事者が語ったことが事実ではなくても、訂正せずに聞きましょう。大切なのは正確に思い出すことではなく、過去の記憶をたどることです。


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