介護と仕事の両立

家族の介護のために仕事を辞めざるを得ない「介護離職」が増えています。しかし、仕事を辞めることは収入の道が途絶えるほか、社会とのつながりが切れてしまうなど、様々な問題を孕んでおり、大きな社会問題となっています。

このページでは、介護と仕事の両立を目指し、その課題や利用できるサービス等について説明します。

この記事の目次
  1. 仕事と介護の両立の現状
  2. 働きながら介護に従事する人の数は?
  3. 介護離職者数の増加と政府の取り組み
  4. 介護離職のリスクとは?
  5. 経済的負担
  6. 精神的負担
  7. 身体的負担
  8. 介護と仕事を両立するために
  9. 介護をシェアするという考え方
  10. 介護サービスの利用
  11. 介護保険で受けられるサービス
  12. 民間のサービス
  13. 職場で利用できる制度
  14. 国で定められている休暇や労働時間の制限
  15. 企業独自の制度や周囲の理解
  16. 離職・休職時の金銭的サポート
  17. 介護休業給付
  18. 民間の保険
  19. 失業保険(失業手当)
  20. 離職した場合の国民年金の免除と健康保険料軽減
  21. 生活福祉資金貸付制度
  22. おわりに

仕事と介護の両立の現状

働きながら介護に従事する人の数は?

「平成24年就業構造基本調査」によると、介護をしている557.4万人のうち、仕事をしながら介護をしている人の数は約291万人となっています。その内訳は男性が約131万人、女性が約160万人です。

出典:総務省統計局「平成24年就業構造基本調査」

介護離職者数の増加と政府の取り組み

急速に進む高齢化に伴い、介護を理由にやむ得ず仕事を辞める「介護離職」が増加し、2012年には10万人を超えています。直近10年間を見てみると、その数は倍増*しているのです。

*厚生労働省「雇用動向調査」 総務省統計局「人口推計」より

総務省統計局「就業構造基本調査」(2012 年)によると、家族の介護・看護を理由にし た離職者は、2011(平成 23)年 10 月から 2012(平成 24)年 9 月までの 1 年間で 10.1 万人であった。いわゆる団塊の世代が 2020 年に 70 歳を超える中で、介護をしながら仕事を続けられるという現役世代の「安心」を確保する必要がある。

出典:厚生労働省平成29年版厚生労働白書(p128)

この状況を受け、政府は「介護離職ゼロ」を目標に掲げ、必要な介護サービスの確保と働く環境の改善・ 家族の支援に取り組んでいます。

介護離職のリスクとは?

大切な家族が要介護者になり、家族の負担が増えてくると、仕事を続けるのが難しい場合もあるでしょう。しかし、離職を決意する前に、辞めた場合のリスクを、具体的に考えてみることも大切です。

経済的負担

毎月の収入がなくなった場合の、生活費や介護費についてよく考えてみましょう。介護には費用がかかります。十分な貯金があると思っていても、認知症の介護は長期にわたるため、先々苦しくなる可能性もあります。生活費だけでなく、介護サービスも減らすような事態になると、精神的・身体的負担がより大きくなることもありますので、熟考が必要です。

精神的負担

介護を理由に退職した場合、社会にとっては働き手の損失に繋がりますが、本人にとっては、仕事を辞めて介護に没頭することで、社会的接点が希薄になります。職業人としてのアイデンティティーを失ったり、人との交流が少なくなり、孤独感を募らせるケースや、収入のない不安感から精神的に追い詰められる場合もあります。

身体的負担

家にいる時間が長いため、介護に時間を費やしすぎ、身体的負担に繋がるケースが多く見られます。また、収入がないことで、介護サービスの利用を控え、結果的に自らの負担が増え、肉体的な負荷がかかることもあります。

介護と仕事を両立するために

介護をシェアするという考え方

「在宅での介護は自分が担わなければ」と考える方も多いですが、介護は毎日続くもので、全てを1人で対応することは難しいでしょう。家族だけで抱え込まず、介護サービスや地域の支援などプロに任せることを検討しましょう。介護のために無理をして仕事を辞め、その結果ストレスを抱える前に、自身の生活を大切にし、できることとできないことを整理してみましょう。

今井幸充先生は、認知症ねっとでのコラムの中で、介護離職をした方の例を挙げて以下のように説明しています。

介護離職を防ぐ最も重要な行為は、「介護をシェアする」ことです。前回のコラムでは、信友直子さんの例をご紹介しましたが、大変な介護を自分一人でやろうとせずに、他の家族や社会資源を十分に活用してください。そこには、「自身ができないことは、他者に任せる」という考えに徹してください。他者とシェアして、できるだけ負担を軽減し、働きながら介護を続けてください。
ユッキー先生の認知症コラム 第46回:介護離職を防ぐにはより

介護サービスの利用

介護保険で受けられるサービス

介護保険サービスには、ヘルパーや入浴介護サービスなどの訪問サービス、デイサービス・デイケアなどの通所サービスのほか、ショートステイや地域密着型サービス、福祉用具の貸与などがあります。

家族が仕事で留守にする間はヘルパーを利用すれば在宅での介護が可能です。デイサービスには送迎付きの施設も多く、1日施設で過ごせます。ショートステイで数日施設に滞在してもらうことも可能です。

介護度によって様々なプランを立てられますので、ケアマネージャーに相談しましょう。仕事がどうしても忙しい時期などは、介護老人保健施設や介護療養型医療施設に短期間入所し、リハビリを受けるのもひとつの手段です。


民間のサービス

介護保険以外にも様々な民間介護サービスがあります。介護保険では対応できない便利なサービスも多く出てきており、ライフスタイルに応じて利用すれば、介護の負担を軽くすることにもつながるでしょう。

配食サービス

食事を宅配してくれるサービスです。直接手渡しする業者を選べば、日々の見守りにもつながります。

見守りサービス

電話や自宅訪問などを行って、様子確認を行います。企業だけでなく、自治体などが率先して行っている地域もあります。

家事代行

介護保険では、家事は要介護認定を受けた人が使用する範囲のみの適用なので、食事の支度も要介護者の分だけということになります。介護保険外では、そのような制限なく行ってもらえることがメリットです。

職場で利用できる制度

国で定められている休暇や労働時間の制限

家族に介護が必要になった際に取得できる休業や休暇があります。対象者や詳細については、厚生労働省のリンクや、就業中の企業の人事部などで確認してください。

介護休業

家族が2週間以上にわたり常時介護を要する状態になった際に、家族1人につき通算93日休業できる制度です。一度状態が良くなった家族が再び悪くなった場合は、3回まで同じように休むことができます。

93日は分割して取得できるので、まとめて全部使ってしまい、後から休みが取れずに困ることがないよう計画を立てましょう。

介護のスタート時には地域包括支援センターに相談し要介護認定を受け、ケアマネージャーが決まって介護サービスを決めていくなど、事務処理に多くの時間がかかります。はじめは手続きのために2週間程度休業し、残りの日数はその後の介護のために分割して取得するのもよいでしょう。

介護休暇

要介護状態にある家族を介護するため、被介護者1人につき年に5日まで、2人以上の場合は10日まで「介護休暇」を取ることができます。フルタイム勤務の場合は半日から取得できるので、通所や通院の付き添いや、手続きのために利用できます。

業務時間の短縮など

要介護の家族を介護がするため、家族1人につき3年以上の期間で時短勤務などが利用できます。短時間勤務のほか、フレックスタイム、時差出勤などが対象です。

参考:厚生労働省 育児・介護休業制度ハンドブック

企業独自の制度や周囲の理解

自分が勤める職場に、利用できる制度がないかを人事部などに確認しましょう。

政府の旗振りのもと「働き方改革」が進められている現在、多くの企業が社員の働きやすさを追求し、独自の施策を打ち出しています。取り組みの中には、育児や介護と仕事の両立も掲げられており、自由な働き方を推進する企業が増えています。しかし、なかなか制度が社内に浸透していない企業も多く、自ら調べて申請する必要があるようです。

制度を利用するには、周囲の理解も重要です。上司や同僚には早めに状況を伝え、理解を得られるよう努力しましょう。

離職・休職時の金銭的サポート

どうしても仕事を辞めなければならない、または休業する必要がある場合に、給付金などを受給できる制度があります。

介護休業給付

介護休業を申請した方に、雇用保険から支給される給付金です。支給金額は原則介護休業を取った時の賃金の日額×支給日数×40%となります。対象者など詳しくは、以下のページを参照ください。

参考:介護休業給付の内容及び支給申請手続きについて

民間の保険

終身保険に「介護特約」が付いたものや、「介護保険」がメインになるものなどがあり、認知症ご本人の契約が必要です。給付金は介護費用に充てられますので、いざという時に家族が請求できるよう、保険契約の内容を共有しておきましょう。保障内容は保険会社によって違いますので、以下のページも参考にし、確認してください。


失業保険(失業手当)

やむ得ず離職した場合は、失業手当を受けるためにハローワークに行きましょう。介護が理由で退職となった場合は、特定理由辞職者となり、3ヶ月の給付制限なしに失業手当を受け取れます。また、介護で再就職活動ができない場合は、受給期間を延長することもできます。受給資格や金額など、詳細はハローワークへお問い合わせください。

離職した場合の国民年金の免除と健康保険料軽減

失業状態で家族にも収入がない場合は国民年金の免除を受けられます。詳細については年金機構に相談してください。国民健康保険料は免除にはなりませんが、雇用保険で特定理由辞職者と認定されると、保険料が軽減される場合があります。市町村の国民健康保険担当課へ問い合わせてみましょう。

参考:日本年金機構 全国の相談・手続き窓口

生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、無利子または低利子で低所得者の生活を支援するための公的貸付制度です。失業手当がもらえない場合や、支給が終わっても再就職ができない場合に利用できます。連帯保証人を立てれば無利子となるケースが多くなります。

参考:全国社会福祉協議会 問い合わせ先一覧

おわりに

介護離職せざるを得ない状況もありますが、まずはご自身の生活を守ることを考えてみましょう。介護と自分の生活を両立させるために、利用できる制度やサービスを是非有効活用してください。

「自宅で世話するには」「介護離職を防ぐには」など、今井先生のアドバイスが読める、「ユッキー先生の認知症コラム」も是非ご一読ください。



このページの
上へ戻る