失禁と排尿障害の原因と対応

失禁・排尿障害の原因

排尿に関する機能は正常であるのに、認知症や身体の機能低下で起こる尿失禁を機能性尿失禁といいます。
認知症の方の場合はトイレの場所の認識が薄れることで間に合わず失禁する、尿が溜まっているのにトイレへ行く行動を起こせないため失禁するといった事が考えられます。

また、身体機能低下(脳梗塞後遺症での片麻痺や、リウマチ、骨折等によるものを含む)によりズボンを下ろす行為やトイレまでの歩行が緩慢で、トイレまで間に合わない場合等の失禁も機能性尿失禁であり、認知症で身体機能が低下している方の場合は特に起こりやすくなります。


失禁・排尿障害の症状

トイレの場所が分からない。探しているうちに間に合わず失禁してしまう

今まで生活してきた家であっても、認知症が進行する事で徐々にどこに何があるかが分からなくなります。特に夜になると暗い家の中で手探りでトイレへ辿りつくのは難しいと思われます。
また、ゴミ箱やバケツ、場合によっては何もない畳や床でも放尿してしまうこともあります。場所の見当識が障害され、違う場所をトイレとして認識してしまいます。

オムツを外して放尿してしまう

不快感から普通に排尿したいと思ってオムツを外してしまうのですが、トイレの場所が分からない(分かっていてもトイレに到着できない)為、結果的に放尿という形になってしまいます。また、寝たきりで介助が必要な方の場合だと、外さなくても良いオムツを不快感から外そうとしてしまいます。

ポータブルトイレを設置したが、上手く使えない

認知症の方は今まで置いていなかったポータブルトイレという「新しい環境に順応することがとても難しい」のです。もしポータブルトイレを将来的に使用して頂こうとお考えであれば、最初のうちは何度も何度も手順を教えて差し上げる必要があると思われます

尿意、便意の感覚が薄くなる

膀胱に尿が溜まってもトイレに行くという動作に移れなくなり、失禁してしまいます。 女性の場合は特にくしゃみ等で腹圧がかかるとその拍子で失禁されることもあります(腹圧性尿失禁)また、急に強い尿意が出て間に合わず失禁する「切迫性尿失禁」が見られる事もあります。


失禁の対応における留意点と対策

トイレに大きな目印を付けておく

認知症の方もそうですが、高齢者にとって「排泄」は、生活動作能力(歩行能力や機敏性)が低下することで悩みの種であることが多く、介護者の方にも場合によっては重い介助となるケースがあることと思われます。

その中で、家の中を伝い歩きや手すり支持などで自力歩行される方の場合は、トイレの入り口に大きな目印(加えてトイレに行くまでの経路に矢印等の貼り紙など)を付けておくと、迷わずトイレに到着される可能性が高くなります。

トイレに辿りつけたとしても「どうやって排泄や後処理をしたら良いかわからない」という状態となっている場合もあります。一部介助で支援できれば良いのですが、介護者も仕事などで忙しく本人は日中独居というケースもあると思います。
その場合は尿とりパッドを安全策で使用したり、トイレでの動作を紙に書いて壁に貼っておくのも良いでしょう(尿とりパッドを使用する場合は誤ってトイレの中に流さないよう注意が必要です。吸水ポリマーが膨張してトイレが詰まる危険性があります)

トイレ内は身体の体勢が不安定になり転倒などの事故リスクが比較的高くなる場所です。要介護認定を受けておられ、生活動作が低下して歩行がおぼつかない等の理由があれば、介護保険での住宅改修の対象となります。手すり等を取付け、安全に在宅生活を送るために是非活用してみて下さい。

夜はトイレまでの通路に明かりをつけておく

健常者であれば、夜暗い家の中でも何処に何があるかは何となく理解できる為、転倒などでケガをする事はほとんど無いかもしれません。認知症の方は場所の見当識が失われ、住み慣れた家であっても常に新しい場所、見慣れない場所に居るような状態であると考えて下さい。

日中に比べて夜間は足元や周囲の状態が見えず、ほんの1~2cmの段差であっても容易に転倒してしまいます。出来るだけ日中と同じような環境とするためには、夜間廊下の明かりは付けっぱなしにしておく事をお勧めします。

排泄周期をチェックして、時間を見ながら定期的にトイレの声かけを行う

認知症が進行すると尿意便意の感覚が薄くなり、本来尿意を催すはずの尿量が膀胱に溜まっても、脳からトイレに行こうという指令が出にくくなります。結果、気が付いたら失禁していた…という事が多くなります。

個々に差はあると思いますが1日の生活の中で排泄にはある程度の周期があります。予めトイレに行く時間を決めて排泄誘導や声かけを行うと失敗は少なくなると考えられます。
ご本人が「まだトイレには行きたくない」と言われる場合でも「行ったら出るかも知れませんから、行ってみませんか?」等と優しく声かけしてみましょう(あまり無理強いは良くありません。拒否が強く失禁がある場合は先述の尿とりパッド等を使用されても良いかと思われます)

失禁は本人の自尊心を大きく傷つける事になるため、失敗しない環境にしていく事も必要と思われます。一方で水分摂取は高齢者の健康維持の肝と言われています。生活リズムが不規則にならないよう定期的な水分摂取を心がけ、排泄リズムも整えていくと認知症の方も穏やかな生活が送れるのではないかと思われます。

トイレの前兆動作を見極める

上手く言葉や態度で表わす事が難しくなる認知症の方にとって、排尿や排便の不快さや、排泄しようとする意思を表現することは無いのでしょうか?結果的に失禁に至った際、その前の行動を思い浮かべて下さい。
…急に立ち上がろうとする、様子が落ち着かない、突然ズボンを下ろそうとする…前兆動作は個々に異なると思いますが、何がしかの「排泄したいという前兆動作」が発見できるかも知れません。それを見つけられれば、介護者側も対応しやすくなります。まずは様子を注意深く観察してみて下さい。

>>トイレや排泄のときによくある質問はこちらから



より良い在宅生活を送るために

残存機能の維持と公的サービスについて

特に夜間の頻尿など、重い介護の負担で悩んでおられる介護者の方もおられると思います。出来ればオムツに頼りたい…そのお気持ちはとてもよく理解できます。ですが、出来るだけオムツは使わないよう心がけて頂きたいと思います。
オムツに排泄する事は介護者の負担を軽減できる反面、ご本人の自立を阻害し、排尿感覚を奪ってしまうという危険性があります。残存機能を維持し、立位や移乗が可能であればトイレ(orポータブルトイレ)を利用できるよう支援をお願いしたいと考えます。

また、短期入所(ショートステイ)や、地域によっては介護保険サービスで夜間対応の訪問介護サービスを実施している事業所もあります。ご家族や介護者だけで悩まず、ケアマネ等と悩みを共有して本人様がより良い在宅生活を送れるようにしていきましょう。

>>どんな介護保険サービスを受けられるのでしょうか?こちらで確認しましょう。


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