認知症徘徊が大きな社会問題となっている

高齢化とともに認知症患者が増え続けている。それにともない、認知症において起こる問題は、国をあげての社会問題となっている。認知症にともなう社会問題には、介護施設の不足、介護者の不足などさまざまあるが、中でも介護をしている家族や介護施設職員に大きく関係してくるのが認知症患者の徘徊だ。

認知症患者の徘徊は、本人の命に関わるだけでなく、多くの人を巻き込む大事故を起こしかねない。実際に、徘徊している認知症患者が線路内に入って事故を起こし、その妻が、監視が不十分だったとして鉄道会社から訴えられたケースもある。

認知症徘徊対策に欠かせない正しい理解

認知症徘徊を少しでも防ぐには、認知症患者がなぜ徘徊してしまうのかを正しく理解する必要がある。認知症患者は、ただ目的もなく徘徊しているように思われることが多いが、実はきちんと目的をもって歩きまわっていることがほとんどだ。

例えば、認知能力が低下している認知症患者は、自宅にいるのにそこが自宅だと認識できず、自分の家に帰ろうと家を飛び出してしまう。また、以前精力的に仕事をしていた患者の場合、まだ自分は仕事をしていると思い込み、仕事に行こうと出て行ってしまう。

このように、本人は目的をもっているため、周囲が無理やり止めたり怒ったりしても、それがなぜなのか理解できず、かえって状況が悪化してしまうのである。

認知症徘徊を悪化させないための心がけ

まずは本人の話を聞いてあげ、できれば誰かがつきそってしばらく歩かせてあげるとよい。歩いているだけで、目的自体が達成できなくても、本人は落ち着いてくることがある。
また、玄関や窓の鍵を、本人が開けにくい物に取り替えたり、鍵を本人が手の届かないような場所に置くのもひとつの方法だ。

もし、家族が知らないうちに本人が出て行ってしまった場合でも、できるだけ早期に発見できるよう、本人の持ち物に連絡先を書いておく、近所の人に前もって状況を話して協力してもらう、といった方法も有効だ。万一、徘徊による行方不明が発生した際には、「所在不明に素早く気づくこと」が大切とされている。

・徘徊、行方不明の危険が高い人の見守り頻度を高める
・所在不明に素早く気づく
・行方不明発生時の初動対応(マニュアルやネットワークを活用)
・早期万全の捜索を行い迅速に保護すること

そのなかでも、「徘徊の危険が高い人への見守りの頻度」に着目する。

期待が高まる顔認証システム

徘徊を早期の段階で予防したり、徘徊後早期発見するための徘徊防止システムにもさまざまなものがある。その代表的なものが「徘徊防止センサー」だ。徘徊防止センサーとは、キーをもった認知症患者が玄関や施設の入り口などに設置してあるセンサーの前を通るとアラームが鳴り、家族や職員に知らせるというもの。しかし、これは、本人がキーを無くした場合や持つのを拒否した場合には意味が無くなってしまう。

また、人が通るのを感知する人感センサーもあるが、すべての人物を感知してしまうため、施設では使いづらいという問題がある。そこで近年、注目が高まっているのが「顔認証システム」だ。

「顔認証システム」とは、センサーの前を通った人の「顔」を感知し、それがあらかじめ登録された人の顔だった場合に、アラームやスマートフォンへの通知で知らせてくれるシステム。

認知症患者が何かを持たなくてはならないといった負担がなく、また、確実に認知症患者だけを特定できる。さらに、映像から個人の顔を識別することができる顔認証システムは、「○○さんが出口から徘徊してしまう恐れがある。」という情報をタイムリーに察知する。徘徊行動時、着用している衣類の色や身なりも画像に記録する利点もある。介護施設の場合では、徘徊のリスクが高い認知症患者のみを登録しておくことで、誤作動なく、効率的に対策できるため、本来の業務にきちんと時間を割くことができる。

前述したとおり、徘徊は、場合によっては他人をも巻き込み、事故や事件に発展することもある。介護施設であった場合、大きなイメージダウンにもなるため、徹底した対策が必要だ。

これまでの徘徊防止システムの問題点をすべて解決できる、新しい「顔認証システム」は、今後、介護の場において実に有効なものとなると考えられる。

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