認知機能の種類とその特徴

人は、高齢になるにつれ体のさまざまな機能が低下していきます。運動機能や臓器の機能のほか、脳の機能も加齢により衰えが出てきます。脳の機能の中でも、とりわけ「認知機能」の低下は日常生活に大きな影響を及ぼします。 認知機能とは、ものごとを正しく理解して適切に実行するための機能のことです。認知機能の分類方法にはいくつかの種類がありますが、一例として次の5つに分類する方法があります。


この記事の監修
広川慶裕先生
ひろかわクリニック院長
広川慶裕先生
この記事の目次
  1. 記憶力
  2. 言語能力
  3. 判断力
  4. 計算力
  5. 遂行力

記憶力

記憶力は「ものごとを覚えておく」ために必要な力のことを言います。勉強などで暗記をするときにも記憶力が使われますが、それだけでなく、私たちは日常の中でも記憶力を働かせています。例えば、話の内容を記憶しながら会話したり、必要な物を記憶して買い物に行ったりという行動ではすべて記憶力が働いており、このように行動しながら記憶することを「作業記憶」と言います。

普段意識せずに働かせている記憶力ですが、加齢とともにその機能は衰えていきます。少々の衰えは単なる「もの忘れ」程度ですが、進行すると、人の顔や名前が覚えられないなど、生活面でも大きな問題が出てきます。

言語能力

相手が話している言葉や書いてある文字を理解する、言葉を用いて意志を伝える、といったときに使う力を言語能力と言います。言語能力は、他人とコミュニケーションをとるには欠かすことのできないものです。しかし、加齢などで脳の機能が衰えると、この言語能力がうまく働かなくなることがあります。その結果、言葉を理解できない、文字が書けないといった「失語」という状態になることもあります。

言語能力を鍛え失語を回避するには言語訓練が有効です。言語訓練には、描かれているものを文字で書く、新聞などに書かれている文章を音読するなどの方法があります。

判断力

判断力、という言葉は、一般的には「ものごとを決定する力」という意味で使われることが多いです。しかし、判断力は、年月日や自分の状況を把握する「見当識」やひとつのことに集中する「注意力」など、複数の認知機能が合わさったものです。

歳を重ね脳の機能が低下してくると、判断力もうまく働かなくなってくることがあります。判断力が低下すると、自分の今いる場所がわからなくなって迷子になってしまったり、ものごとに集中することができずにミスを繰り返したりと、さまざまな問題が起こります。

判断力に含まれる見当識の衰えは認知症の代表的な症状のひとつで、徘徊は社会問題にもなっています。

計算力

計算力は数字を理解し計算する力のことを言います。算数や数学といった勉強のときに「計算力」という言葉が使われることが多いですが、時計を見たり、買い物をしたり、時間配分を考えたりといったときにも、計算力が働いています。そのため、計算力が衰えると、買い物をしても出すお金を計算できなかったり、時計を見てうまく時間配分ができなかったりと、さまざまな支障が出てきます。

数ある認知機能の中でも、計算力は比較的早い段階から衰えが出てくるとされています。小学生で習うような簡単な計算に時間がかかるようになったら注意が必要です。

遂行力

人は、仕事や家事をする際に、頭の中でどのように進めるか順序立てをします。このように、何かを成し遂げるために使う力が遂行力です。毎日行っているような家事であれば特に意識しない人も多いかもしれませんが、まな板を出し、まな板を洗い、包丁を使って切る、といった一連の行動は遂行力を使って順序立てて行っているのです。

遂行力は、加齢などで脳の機能が低下することで衰えてくることがあります。遂行力が衰えてうまく働かなくなると、ふたつ以上の作業を並行して行うことができなくなったり自発的に動くことができなくなったりと、社会生活・日常生活に支障が出てきます。

(2020年5月28日)


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