2017/03/17

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甲状腺刺激ホルモン構造が睡眠の質・肥満・糖尿病と関連

睡眠不足や質の悪い睡眠が生活習慣として続いていると、血糖値が高まり、糖尿病を発症しやすくなるほか、逆に血糖コントロールを改善すると睡眠の質も改善するなど、糖尿病と適切な睡眠の間には深い関係があることが、近年の研究で明らかとなってきています。

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睡眠障害と糖尿病発症の新たな道筋を兵庫医科大のグループが発見

こうした研究に関連し、兵庫医科大学内科学(糖尿病・内分泌・代謝科)講座の角谷学助教、小山英則主任教授らの研究グループは、睡眠の質が甲状腺刺激ホルモン(TSH)の構造に影響を及ぼすことを発見し、睡眠障害と肥満・糖尿病といった生活習慣病をつなぐ新たなひとつの道筋を見出しました。この研究成果は13日に同大学から発表されたほか、同日付で「Scientific Reports」に論文掲載されています。

研究グループでは、糖尿病や動脈硬化、慢性腎臓病、メタボリックシンドロームの発症に、睡眠や疲労、自律神経機能などの神経内分泌学的な機能がどう関与するか明らかにするため、2010年12月から「HSCAA(Hyogo Sleep Cardio-Autonomic Atherosclerosis)研究」をコホート研究としてスタートさせ、現在1,200人以上の患者を対象に、平均2.5年の追跡調査を進めています。

もともとTSHは、血液中の甲状腺ホルモン値によって脳下垂体から制御・分泌されるもので、その血中濃度から甲状腺機能のチェックや薬物調整を行うことができる指標として用いられています。

今回研究グループは、HSCAAコホート研究に登録された患者のうち、甲状腺疾患を有しない314人について、まず血清TSHの解析を行いました。すると血清TSH値が正常範囲であるにもかかわらず、ほとんどすべての患者のTSHにおける60~90%が、血清たんぱくと結合したマクロTSHとして存在することを初めて発見しました。

さらにゲル濾過法で血清TSHをマクロTSHとフリーTSHに分画・溶出し、ポリアクリルアミド電気泳動、レクチン親和性カラムクロマトグラフィーなどの解析を行ったところ、このマクロTSHは、糖鎖構造の異なったTSHが免疫グロブリンと結合した状態であることが判明したそうです。

マクロTSHを鍵に研究を進めれば新たな治療法の開発につながる可能性

そして、このマクロTSHについてさらに研究を進めたところ、高い値である場合、アクティグラフで評価した睡眠の効率や睡眠における質の悪化と有意に関連していることが明らかとなりました。ここから、マクロTSHは睡眠障害のバイオマーカーとして有効である可能性が考えられます。

また、マクロTSHを多く有している対象者では、糖尿病や肥満症、脂質異常症の有病率が高いことも確認され、これら生活習慣病と睡眠障害をつなぐ線がみえたほか、マクロTSH値をみることで、将来の糖尿病発症リスクをごく早期から判定できる可能性も示唆されています。

甲状腺機能に独立して、睡眠障害がTSHの糖鎖構造変化へ影響を及ぼし、血清でマクロTSHを形成する可能性を見出した今回の研究知見は非常に新しいもので、大いに注目されるものといえます。

このマクロTSHの生成について、TSHの糖鎖調節メカニズムをさらに詳細にわたって解明することができれば、睡眠障害や生活習慣病を改善する新たな標的因子を見出せる可能性もあり、これまでには考えられていなかったスタイルの治療法が実現されることも考えられるでしょう。

糖尿病予防の観点からも、マクロTSHとインスリン抵抗性の関係性といった点をはじめ、さらなる研究課題が見出される内容となっており、今後の展開が期待されます。

外部リンク

兵庫医科大学 ニュースリリース

研究詳細(プレスリリース)

Scientific Reports : Serum Macro TSH Level is Associated with Sleep Quality in Patients with Cardiovascular Risks – HSCAA Study