2016/07/11

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【糖尿病専門医】糖尿病改善には自身を知り、食生活の見直しと運動を

現在、糖尿病と強く疑われる人が全国に950万人、予備軍と推定される1100万人を含めると実に2050万人もの人が糖尿病の傾向を持っていると言われています。そんな中で私たちはどのようなことに気をつけていけばいいのか、糖尿病専門医である清水健一郎先生にお話をお伺いしました。

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糖尿病は自覚症状がないのが特徴

糖尿病、特に初期の段階では、多くの病気の中でも特殊なもので、ほとんど自覚症状がありません。さらに年齢、性別、身長、体重などの基本的な要素、眼症、腎症、神経症、心臓病や脳卒中を代表とした合併症を患っているかどうかなどを含めると、糖尿病の状態はその方それぞれで非常に異なっていて「糖尿病」と一言で言っても、その言葉が示す範囲はとても多岐にわたります。
「糖尿病」という言葉を聞くと、一生インスリン治療をしなくてはいけない、または厳しい食事制限をずっと続けなくていけないと思われている方もいるかもしれませんが、極めて厳格な治療を必要とする人ばかりではなりません。糖尿病の影響で視力が低下したり、腎臓が悪くなって血液透析を継続的に行っていたり、手足が痺れる、感覚が鈍くなるなどの神経症が進んでいるような重症の方でも、食事療法と運動療法で血糖値をうまく改善できることも多いのです。

糖尿病予防にはまず「自分を知ること」

糖尿病を予防、改善するのに大切なことはまず自分自身を「知る」ということだと考えています。みなさんは定期的に健康診断を受けているでしょうか。その時に「メタボの疑いがある」と言われた方もいると思います。しかし、そのことで必要以上に落ち込まなくてもいいのではないでしょうか。健康診断は、現在の自分の健康状態をきちんと把握することがいちばんの目的です。もし健康診断でメタボ気味であることが分かれば、普段の生活で昼食のごはんの大盛りをやめてみたり、エスカレーターを使わずに階段を使って歩いてみたりするなど、日常の生活習慣を見直すきっかけになり、糖尿病のような生活習慣病を改善する第一歩となるからです。

体重と歩数を計測することを毎日の習慣に

自分自身を知るために、健康診断以外でもぜひやっていただきたいことは、毎日「体重を量ること」と「歩数を計測する」ことです。食べ過ぎた、ちょうどいい、など食事量は感覚的なものになりますが、一方で、体重の方はごまかすことができません。体重という客観的な数字を見ながら、自分の日常生活をふりかえることで、どのような食べ方をすると体重が増えやすくなるのか、など自分自身について正確に知ることができます。また、歩数は一日に自分自身がどのくらい運動しているかの目安となります。最近では様々なウェラブル端末が登場してきていて、スマホでも自動的に歩数を測ることができるようになってきていますので、これらを利用して、たとえば平日と週末ではどの程度運動量が違うのかなどをまず把握するのはいかがでしょうか。

悪い習慣を少しでもいい習慣にするために

健康診断や血液検査の結果を非常に気にされる方も多いかもしれませんが、必要以上に神経質になり過ぎないことも大切です。検査の一週間前頃から食事や運動に気をつけて数値を正常値に近づけたい、という方も少なくありませんが、このように血液検査の数値は前の日の食事の内容でも簡単に変わってきてしまいます。検査結果は大体の目安として考え、それらを参考にしながら、日常生活を良い方向に変えていき、毎日の体重や歩数の動きをみて確認していく。、それを継続することで、悪い習慣をやめていき、少しでも多くの「良い習慣」を取り入れていくことが糖尿病予防もしくは糖尿病をこれ以上悪くしないためには大切です。それなら体重はどのくらいがいいのか、毎日の歩数はどのくらいがいいのかなど、基準を知りたいと思う方もいらっしゃると思いますが、その基準はその人それぞれで変わってきます。まずは毎日行ってみて、無理のない基準を自分なり設けてみるのがいいでしょう。医療機関では、年齢や性別、身長、体重から必要なエネルギー摂取量や目標体重を設定しています。運動量も人によってできる範囲が変わってきますから、自分なり目標を定めた方が安全です。

自分が今後どうなりたいのかを考えることが大切

具体的な実践方法がわからない、という方にはまず目的、目標を明確にすることをおすすめします。例えば、スポーツ選手の食事といっても競技の種類や目指すレベルによって大きく変わってきます。自分が今後どうなりたいのかが固まっていなければ、食事や運動の内容を決めることができないといっても言い過ぎではありません。楽しく長生きしたいのか、スリムになりたいのか、また糖尿病だけを防げばいいのか、なりたい自分を思い浮かべてみましょう。

糖尿病の予防のためには、知識ももちろん大事なのですが、もっと大事なのは良い生活習慣を実践し継続していくことでです。食べ過ぎは誰しもよくないとわかっていても、実際にできるかどうかはまた違うように、どんなことでもいいから苦にならずに続けられる方法を探すことが重要です。家族に声を掛けてもらう、アプリを活用してゲーム感覚で行うなど、目標を達成するためにはどうしたらいいのかに的を絞って考えてみるのがいいと思います。実践しながら試行錯誤を繰り返していく。考えすぎるよりも、まずはやってみて自分に合った方法を探っていくことが大切だと思います。

自分に合った方法を試行錯誤しながら探して

糖質制限など、最近では糖尿病にならないためのさまざまな方法があらゆるところで情報として氾濫しています。しかし、食事療法や運動療法に関していうと、すべての人に合うものは個人的には存在しないと考えています。少し食べ過ぎてもすぐに太ってしまう人もいれば、そうではない人もいるように、他の人がうまくいくからといって、必ずしも自分に合うかといえばそうではありません。
また、身体にいいと言われている食べ物でも、食べる量によってはその人の健康状態を悪化させてしまうこともあります。食事療法や運動療法で最も気をつけなければいけないことは、「こうでなくてはならない」と決めつけないこと。
例えばプロ野球のイチロー選手は、毎朝同じものを食べて試合に臨んでいると聞いていますが、彼にとってはそれが「良い習慣」であっても、みなさんにとって同じように良い習慣ではないかもしれません。

糖尿病を予防することに関していえば、食事や運動の内容を気にするよりも、結果的に血糖値が悪くならないようになればいいということ。ですから、まずは自分自身を知って、どのような食事や運動が自分に合っているのか、そしてどんな方法であれば続けられるのか、その二つを意識するだけでも、良い方向に向かっていくと思います。まずはあれこれ考える前に生活を良いもの変えていく。実践を繰り返す中で、体重や歩数などの客観的な数字を使って自分の毎日の状態を知り、定期的な健康診断の結果をみて、改めて自分の生活をふりかえる。健康を維持していくには、これを飽きないように継続していくことが大切であると私自身は考えています。