2017/09/12

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1型糖尿病などに移植効率を高めた新治療法

糖尿病は、代謝に必要とされる十分な量のインスリンが分泌されない、または機能しないという病理学的な特徴がみられる疾患で、とくに1型糖尿病では、インスリンを分泌する膵β細胞が破壊され、高血糖を呈するものとなっていることから、一度発症すると持続的なインスリン注射が必要になります。

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膵島細胞移植での問題点克服を目指して

1型糖尿病の場合、自らインスリンを産生することができないため、生涯インスリンを補給していかなければなりませんが、低血糖を起こす危険性や動脈硬化など、心疾患系リスク、合併症リスクが高い状態が続くという問題があります。

根本的な治療になり得る膵島細胞移植は、インスリン注射なしの血糖コントロールを可能にしますが、数多くのドナー由来膵島細胞が必要となるほか、移植された膵島は数年の内に機能を喪失してしまうなど、課題も多く残されているのが実情です。

こうした中、オーストラリアのGarvan Institute of Medical ResearchのHerbert Herzog博士、Shane T.Grey博士、自治医科大学医学部統合生理学部門の矢田俊彦教授、出崎克也准教授、中田正範准教授らの研究グループが、移植効率を高める新たな治療法を見出し、発表しました。「Nature Communications」に9月8日付で掲載されています。

Y1受容体シグナル伝達が鍵!

研究グループは今回、Y1の働きに着目、このY1受容体を欠損させた膵島を糖尿病のモデルマウスに移植したところ、高血糖状態の正常化が促進されることを確認しました。移植マウスやヒト膵島で、薬理学的にY1受容体を短期遮断した場合にも、同様のこうした変化が起きたそうです。

そこでY1受容体拮抗薬を、肥満を有しない糖尿病モデルマウスに用い、治療を行ったところ、糖尿病様症状が改善、進行を抑制することができました。

メカニズムとしては、Y1受容体のシグナル伝達が、CREB媒介経路を介して解糖やATP産生に関わるいくつかの重要な酵素の応答低下を招いており、そのために膵島でのcAMP産生が阻害され、結果的にインスリンの分泌を妨げるものとなっていると考えられています。

これらの結果から研究グループでは、Y1受容体のシグナル伝達が、膵β細胞におけるインスリン分泌を妨げる要因となっており、これを薬理学的に阻害すれば、インスリンの分泌を促進させることもできることが判明したとし、こうしたY1受容体シグナル伝達の操作が、十分なインスリンが産生・分泌されないことに由来する糖尿病症状への、全く新たな治療アプローチになり得るとしています。

外部リンク

Nature Communications : Inhibition of Y1 receptor signaling improves islet transplant outcome