認知症高齢者への接し方:①介護者の心構え

認知症の人への接し方は?

今までゴルフが好きだった父が急に家から出ようとしなくなった、おしゃれだった母が服装に無頓着になった、毎週通っている道に迷った夫が警察に保護された、持病の薬を几帳面に服用していた妻が、薬の管理ができなくなってしまった…など、認知症によって今までの性格や行動までが変化してしまう場合があります。そのような様子に家族は驚いてしまうと共に、「認知症になってしまった…」「認知症の介護の話は聞いていたけど、実際はこんな感じなんだな…」など様々な思いが湧き出てくると思います。

認知症の人と接する上で家族が大切なことは、「以前の姿」と「今の姿」を比べないことです。今までできていたことができなくなったり、思い出したいけど思い出せない、何となく変だな…という変化は、認知症の人ご自身が一番先に気づいています。しかし、その現実を認めたくない、忘れたりできなくなっていくことへの不安、この先どうしたら良いのかという苦しみを感じているのはご本人なのです。

家族は、今までできていたことができなくなることへの失望、何度も同じことを言わなければならないむなしさや悲しさ、何とか認知症を進ませたくないため必死に元気な時と同じ生活を強いる場合もあるでしょう。しかし、介護者の否定する言動やイライラした態度は、すぐに認知症の人に伝わり、より一層混乱して、悪循環になります。

このような場合、介護者は少し離れた場所から見守りを行い、危険行動がないか観察をしましょう。そして、深呼吸をして落ち着きましょう。

また、認知症の症状は人それぞれですし、その日によって状況も異なります。1回やってみてうまくいかなくても、他の方法を考えて実践してみましょう。

介護者はひとりで頑張るのではなく、ケアマネジャーや訪問介護などを活用して、認知症の人が様々な介護の専門職と関わる機会を作ることも大切です。

認知症の人と話をする際に注意することは?

認知症の人に話しかける際の注意点として、正面に回り、目線を合わせてから話しかけます。目線を合わせることで、「これから話しますよ」という合図になります。ゆっくり、適度な声の大きさで話しかけます。短く、分かりやすい言葉で話しかけましょう。

例えば、「寒いから上着を着てから散歩に行きましょう。」と言われるよりも、「寒いですね。」「コートを着ましょう。」「散歩に行きましょう。」と具体的な行動をひとつずつ説明しましょう。

認知症によるもの忘れを否定しない・思い出させようとしない

認知症の人が何度も同じ話をする、何度も同じ質問をしてくると、いくら寛大な家族と言っても、少なからずともイライラすると思います。しかし、そこで「何度も言ったでしょ」「さっきご飯食べたでしょ」「忘れたの?」と説明しても、認知症の人は、同じ話をした記憶やご飯を食べた記憶がないので、「何でそんな意地悪を言うんだ」と嫌悪感が残ります。

一方で、認知症の人自身も自分の記憶が薄れていることや失敗してしまったことに対して、恐怖を感じています。そのことを何とか取り繕うとしている場合もあります。そのため、失禁で汚してしまった下着を箪笥にしまったり、自分でしまい込んだ通帳をもの盗られ妄想として誰かの責任にしてしまうのです。

例えば、認知症の人が「ご飯まだ?」と聞いてきました。ご家族は「テレビを観て待っていて下さい。」と言い、録画しておいたテレビ番組を観てもらうなど、気をそらすことも大切です。

もの盗られ妄想の場合、「一緒に探しましょう。」と言いながら、「この辺りはどうですか?」と本人が見つけられるように促します。そして、本人に見つけてもらうことが重要です。「ありましたね。良かったですね。」と安心する声かけを行いましょう。

介護者もストレス発散しましょう

介護は家族だけで行うものではありません。介護の専門職であるケアマネジャーを中心に、訪問介護、デイサービスやデイケア、ショートステイを利用しましょう。そして、介護者が自分の時間を作りましょう。

例えば、介護者の会や認知症カフェに参加することで、同じ悩みを持った人たちと話をすることができます。自分のためだけの時間を作り、リフレッシュしましょう。

できることは自分でやってもらう

認知症だから、「包丁を持たせるのは危ない」「火を使うのは危険だから台所には入らないで」「時間がかかるから私がやったほうがはやい」と思う場面があるかもしれません。しかし、ゆっくりかもしれませんが、介護者が見守っていればできることはたくさんあります。

認知症の人は、1日の中でも調子が良い時、悪い時があります。今日は調子が良さそうだな、というタイミングを見計らって、得意なことや自分でできることを積極的に行ってもらいましょう。



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