血液中のカルシウム濃度と、軽度認知障害からアルツハイマー病への移行を調べた研究

2019年5月9日

「軽度認知障害」では、物忘れが激しいなど認知機能の低下による症状があります。適切に対処することで認知機能が回復することもありますが、高い確率で認知症に移行することから、認知症の前段階とも考えられています。

今回は、血液に含まれるカルシウムの濃度と、軽度認知障害からアルツハイマー病への移行との関係を調べた研究をご紹介します。

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認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. J-ADNI調査では軽度認知障害の約半数が認知症へ移行
  2. 軽度認知障害からアルツハイマー病への移行に関わる要素

J-ADNI調査では軽度認知障害の約半数が認知症へ移行

J-ADNI研究は、認知機能の低下から認知症にいたるまでの過程を調べることを目的に2008年から3年間、日本全国の537人を対象に行われた大規模な追跡調査です。東京大学の岩田淳講師のチームは、J-ANDI研究の血液データを中心に解析を行い、軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行に関連している要素を調べました。

J-ADNIの被験者には軽度認知障害と診断された人が234名いました。3年間の追跡調査期間中に認知症に移行した人は、約半数の121人でした。研究チームがこの121人に特徴的な要素を調べた結果、血液中のカルシウム濃度が観察開始時点から低いことが明らかになりました。

カルシウム濃度は観察開始時点で正常であっても、「低め」であれば認知症に移行しやすいことも分かりました。

同様の調査は北米でも行われており、今回得られた日本人の結果と北米での研究結果を比べたところ、北米の調査研究ではカルシウム濃度と認知症への移行との関係を見出すことはできませんでした。

以上の結果から、血液中のカルシウム濃度が軽度認知障害から認知症への移行の指標になる可能性が示されました。しかし、北米のデータでは同様の結果が得られなかったことから、この性質は日本人、またはアジア人に特徴的である可能性も考えられます。

軽度認知障害からアルツハイマー病への移行に関わる要素

血中のカルシウム濃度が認知機能の低下にどのように関わっているのかについては、明らかではありません。血液中のカルシウムが直接認知機能の変化に関わるのか、または脳の中で起こっていることを間接的に反映しているのかについては、今後の詳細な研究が待たれます。

軽度認知障害になると高い確率で認知症に移行する一方で、いったん低下した認知機能が再び改善する人もいます。軽度認知障害が認知症へ移行するメカニズムはまだはっきりとは分かっておらず、カルシウムとの関連も含めて生活習慣や食生活などを詳細に検討する必要があるでしょう。

▼ご紹介した論文
Lower Serum Calcium as a Potentially Associated Factor for Conversion of Mild Cognitive Impairment to Early Alzheimer’s Disease in the Japanese Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative.
Sato K et al, J Alzheimers Dis. 2019;68(2):777-788.


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