AI(人工知能)によるアルツハイマー型認知症の発症予測

2019年1月21日

「AIドクター」というのをご存知でしょうか? いまや私たちの生活の数々の場面で力を発揮する「AI(人工知能)」は、医療の分野への応用も進んでいます。AI技術の進歩は目覚ましく、将来的にはAIが病気の診断を行う日がやってくるかもしれません。

今回は、AIによる、アルツハイマー型認知症の発症予測の可能性を調べた研究を、ご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっとACADEMICS
認知症ねっと編集部
認知症ねっとACADEMICS
この記事の目次
  1. AIとは?
  2. AIと医師の認知症発症予測能力を比較
  3. 補助診断としての人工知能利用

AIとは?

「AI(人工知能)」とは、人の知能を機械で再現しようとするもので、研究が始まったのは今から60年も前のことです。何度か行き詰まりを経験しながらも、今再び第3次AIブームが訪れた背景には、「ディープラーニング(深層学習)」とよばれる技術の発達があります。ディープラーニングとはコンピューターの学習技術のことで、この技術が進んだおかげで、より「人間らしい」判断ができるように、コンピューターを学習させることができるようになりました。

この度、アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、PET画像からAIが認知症発症を予測することができるかについて調べました。

「PET(陽電子放射断層撮影)」とは核医学検査のひとつで、陽電子(ポジトロン)という特殊な電子を利用します。脳は糖をエネルギー源としているため、糖の代謝の様子から脳の状態を読み取ることができます。PETでは、放射性物質で標識したブドウ糖を脳に取り込ませ、その代謝の様子を画像にします。今回の研究では、1002人のPET画像2109枚を用いました。平均して54カ月の追跡調査を行い、その間にアルツハイマー型認知症や軽度認知障害を発症したかどうかを調べました。

AIと医師の認知症発症予測能力を比較

まず、画像の90%を用いて、将来的にアルツハイマー型認知症や軽度認知障害を発症する人の画像の特徴をAIに学習させました。AIの発症予測の能力評価は、残りの10%の画像を用いて行われました。

その結果、数年後にアルツハイマー型認知症を発症すると正しく診断を行う「感度」は81%でした。同時に、数年後に認知症を発症しない人を正しく判断する「特異度」は94%でした。AIのアルツハイマー型認知症発症診断の「精度」は76%でした。また、軽度認知障害に対する診断の感度、特異度、精度はそれぞれ54%、68%、55%でした。

次に、AIと人間の医師の発症予測能力を比較しました。実験には、平均して76カ月の追跡調査を行った40人のPET画像を用いました。アルツハイマー型認知症患者さんの発症以前のPET画像を診て、AIが「いずれ発症する」と診断する感度は100%でした。同じ患者さんの画像を、経験のある医師3人(または5人)が診断したところ感度は57%となり、AIの予測感度のほうが、よい結果になることがわかりました。ただし、特異度は医師のほうが高く、AIが82%だったのに対し、医師では91%でした。精度はAIが54%、医師は57%という結果でした。

また、将来的な軽度認知障害の予測の場合には、感度はAIが43%、医師は14%、特異度はAIが58%、医師が76%、精度はAIが18%、医師11%となり、アルツハイマー型認知症の予測よりも難しいことが分かりました。

この研究により、PET画像から数年後の認知症発症の予測をするために、人工知能は有力なツールになる可能性が示されました。

補助診断としての人工知能利用

今回の研究で示されたように、人間の医師であっても、PET画像だけから数年後の認知症発症の予測をするのは難しいものです。しかし、長年診療に携わっている医師の経験は、機械には決してまねのできないものでしょう。またこれに対し、機械には人がもつ先入観がないため、ときに、医師が気づかなかったようなことを発見することもあるでしょう。近い将来、学習の精度がより高まることで、人工知能が医師の診断を補助するようになり、認知症の早期発見、早期予防につながることを期待したいと思います。

▼ご紹介した論文
A Deep Learning Model to Predict a Diagnosis of Alzheimer Disease by Using 18F-FDG PET of the Brain.
Ding Y et al..Radiology. 2018 Nov 6:180958.


このページの
上へ戻る