日常活動に支障を感じる人や、幸福度が低い人ほど認知機能が低い傾向がある

2018年8月29日

朝起きて服を着替え、夜にはお風呂に入って…そんなごく当たり前の日常活動に支障を感じる人ほど、認知機能が低い傾向があることが、最近の研究で明らかになりました。今回は、認知機能に関する大規模なインターネット調査の結果を解析した論文をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっとACADEMICS
認知症ねっと編集部
認知症ねっとACADEMICS
この記事の目次
  1. 健常者登録システム『IROOP®』
  2. 認知機能と相関のある因子とは?
  3. 半年間の認知機能の低下と相関のある因子は?
  4. 日常の活動が認知機能にも影響する

健常者登録システム『IROOP®』

皆さんは『IROOP®』をご存知でしょうか?

IROOP®は国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターによって運営されている、インターネットを使った健常者登録システムです。今まで、認知症の人や軽度認知障害の人が登録するデータベースはありましたが、健康な人が登録するようなデータベースはありませんでした。IROOP®は40歳以上の健康な人のためのデータベースです。

このシステムは、認知症発症予防に効果的な方法を見つける研究目的で運営されています。インターネットを使うことで、広い地域から多くの人の情報を集めることができます。集めた情報を解析して、認知症が発症する前に現れる症状や、認知症発症の予防につながる生活習慣を効果的に見つけだすことができます。また、登録した人は半年ごとに行われる検査によって、ご自身の認知機能の状態を知ることができます。

認知機能と相関のある因子とは?

この度、IROOPで得られたデータを解析した論文が発表されました。2017年8月までの登録者は1038人で、平均年齢は59歳です。登録時に年齢や性別、生活習慣や病歴、体調などを入力し、認知機能テストを受けます。さらに6カ月後にも検査が行われました。6カ月後の検査に参加したのは353人で平均年齢は60歳でした。認知機能テストは電話で行われ、オペレーターが読み上げた10個の単語をできるだけ多く思い出すという15分ほどのテストです。検査の結果は登録サイトのマイページで確認することができます。

解析の結果、認知機能テストのスコアと最も相関が強い因子は「年齢」、そして「性別」でした。さらに、日常生活について「自分で風呂に入ったり服を着たりする」という設問の結果と、認知機能には強い相関がみられました。この設問に「難しい」と答えた人たちの認知機能テストのスコアは、「まったく問題ない」と答えたグループより3.8ポイント低くなっていました。

また、「過去1カ月の間に、ヤル気がなくて活動に支障をきたしたことがどれくらいありましたか?」という設問に、「かなり多く」と答えた人たちのスコアは、「まったく問題ない」と答えたグループより2.5ポイント低くなっていました。「10年前と比べて、スケジュールを立てたり、ものごとを構成したりする能力に変化がありますか?」という設問に「だんだん悪くなっている」と答えたグループでは、「以前と変わらない、または良好である」と答えた人たちよりも2.4ポイント低くなっていました。

半年間の認知機能の低下と相関のある因子は?

さらに、半年後の認知機能テストの結果を含めて解析したところ、「幸福度」と認知機能の低下との間には相関があることがわかりました。「自分では状況をどうすることもできないと感じますか?」という設問に「はい」と答えたグループのスコアは、「いいえ」と答えたグループより2.8 ポイント低くなっていました。

さらに、「過去1ヶ月間、あなたの健康状態や気分(うつ状態や不安状態)によって、家族や友人、近所の人たちとのおつきあいに支障が出たことはありますか? 」という設問に「かなり多く」と答えた人たちのスコアは、「まったく問題ない」と答えたグループより3.7ポイント低くなっていました。

以上のことより、健康な人では認知機能の低下は日常の動作を困難と感じるかどうかと相関があり、とくに「自分で風呂に入ったり服を着たりする」ことが難しいと感じているほど、認知機能が低い傾向がありました。また、半年後のテスト結果との比較から、自身の状況に満足できないと感じる人ほど、認知機能が低下している傾向がありました。

日常の活動が認知機能にも影響する

健康で体調に不安もなく身のまわりのことが自分自身で行える人は、そうでない人よりも幸福度は高いと考えられます。今回の研究結果から、幸福と感じている度合いは認知機能にも関係することが示唆されました。さらに、家族や友人、近所の人たちとのつきあいがうまくいっていると感じているかどうかも、認知機能の低下と相関していることがわかりました。社会的孤立は認知症の発症リスクの要因の一つともいわれます。

今回の研究からもわかるように、身体的に健康でいることはもちろんのこと、年を取っても社会とのつながりを持つことは、認知機能を保つ上でも重要な要素だといえるでしょう。

▼ご紹介した論文
Analysis of risk factors for mild cognitive impairment based on word list memory test results and questionnaire responses in healthy Japanese individuals registered in an online database.
Ogawa M et al., PLoS One. 2018 May 17;13(5)


このページの
上へ戻る