たった一晩の徹夜でもβ-アミロイドは蓄積する

2018年5月24日

夜更かしした翌日、寝不足で集中力がない、気分にムラがでる、仕事の効率が悪いなどは、誰しも経験があるのではないでしょうか。「睡眠」が健康維持のために大切なことは、今さら申し上げる必要もないでしょう。
今回は、たった一晩の徹夜がどれほど脳に影響するのかを調べた論文をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっとACADEMICS
認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. 睡眠は脳の掃除時間
  2. 一晩の徹夜が脳に与える影響を調べる
  3. 認知症の発症にも影響する可能性

睡眠は脳の掃除時間

アルツハイマー型の認知症では、脳に「β-アミロイド」というタンパク質が多く見られるのが特徴です。β-アミロイドは、神経細胞が情報を伝える活動にともなって産生されるタンパク質です。健康な人の脳でも作られますが、通常は一定の濃度に保たれています。しかし、何らかの原因で生成と除去のバランスが崩れると、β-アミロイドが互いに結合して集合体になり、神経細胞の働きを妨げたり、破壊してしまったりします。

過剰なβ-アミロイドを排出するために重要だといわれるのが「睡眠」です。最近の研究によって、睡眠は単に体の疲労をとるだけではなく、脳の老廃物を除去するために重要な時間であることが明らかになってきています。慢性的に睡眠時間を短くしたマウスやショウジョウバエでは、過剰なβ-アミロイドの蓄積が観察されます。同様の傾向は人でも見られることが脳の画像解析から明らかになっており、寝不足は疲労感や集中力の低下などだけではなく、脳にもダメージをもたらすと考えられます。

一晩の徹夜が脳に与える影響を調べる

それでは一晩だけの徹夜なら、それほど健康には影響しないのでしょうか? この度、アメリカの研究グループが調べたのは、一晩の徹夜による脳への影響です。実験に参加したのは22歳から72歳までの健康な20人で、徹夜で過ごした翌日(約31時間起きたままの状態)と、睡眠(約9時間)をとった翌日、それぞれの脳の状態を調べ、β-アミロイドの蓄積ぐあいを比較しました。方法としては、β-アミロイドに特異的に結合する物質を投与してPET(陽電子放射断層撮影)法により、脳のどこにβ-アミロイドが蓄積しているのかを調べました。

解析の結果、徹夜後の脳では通常の睡眠後の脳よりも、β-アミロイドが蓄積していることが分かりました。とくに右の海馬や視床といった部分の蓄積が顕著でした。この領域は、記憶や気分といった脳の働きと深く関係しています。そこで、被験者の気分とβ-アミロイドとの関係を調べたところ、徹夜後に気分がよくないという人ほど、β-アミロイドの蓄積の割合が多いことがわかりました。この傾向は、性別や年齢、さらにアルツハイマー病の発症リスクに関わる「ApoE」という遺伝子のタイプとも関係ありませんでした。

以上の結果から、たった一晩徹夜するだけでも、脳にはダメージをもたらすことが示唆されました。この傾向は、年齢や性別に関係ないこともわかりました。

認知症の発症にも影響する可能性

今回ご紹介したように、たった一晩寝られないだけでも、脳には老廃物がたまってしまいます。慢性的な睡眠不足では老廃物の除去が十分に行われず、徐々にβ-アミロイドが蓄積して、やがて神経細胞に多大なダメージをもたらす可能性もあります。

ただし、現在までに調べられた「ApoE」遺伝子タイプによるβ-アミロイドの蓄積領域の違いは、今回の結果とは異なることから、睡眠不足によるβ-アミロイドの蓄積が、認知症の発症に直接関わるかどうかは今後の研究課題です。今回の論文からは、毎晩、質の良い睡眠をとることはとても大切であることを、あらためて感じさせられました。

▼ご紹介した論文
β-Amyloid accumulation in the human brain after one night of sleep deprivation.
Shokri-Kojori E, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. Apr 24;115(17):4483-4488. 2018.


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