コンピューターを使った脳トレの認知症予防効果-ACTIVE研究から-

2017年12月11日

日本を含む先進国では高齢化が進み、今後ますます認知症患者数は増えるとみられています。認知症で苦しむ人が少しでも減るよう、効果的に認知症発症を予防する方法の研究が盛んに行われています。その方法の一つが「認知機能のトレーニング」です。

今回は、コンピューターを使った認知機能トレーニングの予防効果を研究した論文をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっとACADEMICS
認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. コンピューターを使った認知症発症予防の効果を長期にわたって調査
  2. 認知機能トレーニングの方法によって、認知症発症リスクが変わる
  3. 誰でも手軽に行えるトレーニング法の開発が課題

コンピューターを使った認知症発症予防の効果を長期にわたって調査

アメリカ、南フロリダ大学の研究グループが、「健康な高齢者への高度な認知トレーニング」の研究を行い、2017年に「Alzheimer’s & Dementia」誌に発表しました。その頭文字をとって「ACTIVE(The Advanced Cognitive Training in Vital Elderly)」と名付けられたこの研究は、10年という長期にわたって認知症の予防効果を観察したものであり、多くの注目を集めています。

研究に参加したのは、65歳以上の健康な2802人で、開始時の平均年齢は74歳でした。被験者は4つのグループに分けられ、それぞれ異なる認知機能トレーニングを実施しました。第1のグループが行ったのは「記憶」に関するトレーニングで、「エピソード記憶」と呼ばれる個人的な出来事に関連させて、物事を覚える訓練です。第2グループでは問題を解決したり、関係性を見いだしたりする「推理」トレーニングを行いました。第3グループはコンピューターを使い、判断や決定などの「処理速度」の向上を目指したトレーニングで、被験者は、画面上に同時に出てくる多くの複雑な情報の中から、できるだけ短い時間で目的の物を見つけ出すというものです。正解するごとに、次の課題の制限時間が短くなります。そして、第4のグループは、実験群となる3つのグループとの比較を行うための対照群で、特に認知機能のトレーニングを行いませんでした。

それぞれのトレーニングは1回60分から75分のもので、最初の約6週間で10回実施されました。その後、各トレーニングに8割以上参加した被験者の中から無作為に選ばれた対象者に、11カ月後と35カ月後の追加トレーニングを行いました。トレーニングの効果は、定期的な認知機能テストによって測定され、実施時期はトレーニングの開始前、トレーニング開始から1年、2年、3年、5年、さらに10年後でした。

認知機能トレーニングの方法によって、認知症発症リスクが変わる

認知症を発症した被験者は、試験開始から5年間で189人、10年では260人でした。トレーニング別の発症者数を比較したところ、「記憶」と「推理」のトレーニングを受けたグループと、トレーニングを行わなかった対照グループとでは、認知症発症のリスクにほぼ差がありませんでした。一方、コンピューターによるトレーニングを受けたグループは、対照グループと比べ発症リスクが29%も低いことが分かりました。さらに調べたところ、トレーニング回数が多いほど、発症リスクが低くなるという結果も出ています。

以上の結果は、コンピューターを使った処理速度向上のトレーニングが、健康な高齢者の認知症発症リスクを効果的に下げる可能性を示唆していると言えるでしょう。

誰でも手軽に行えるトレーニング法の開発が課題

今回ご紹介した論文以外にも、コンピューターを使った「脳トレ」の認知機能への効果について述べた論文はたくさんあります。ただし、それぞれの研究は手法も対象も異なることもあり、認知症発症予防の効果を一概に判断できるものではありません。

ただし、今回の研究で「記憶」や「推理」のトレーニングでは、発症リスクを下げる効果は見られなかったことから、これらのトレーニングが必要とする脳の機能や脳に与える刺激は、コンピューターを使った処理速度向上のトレーニングとは異なると考えられます。また、コンピューターに慣れていない人や自己流では、せっかくの脳トレも効果が上がらない可能性もあるかもしれません。今後は、コンピュータートレーニングが脳に与える影響についての研究が進み、より多くの人が手軽に行えるトレーニング法の開発が期待されます。

▼ご紹介した論文
Speed of processing training results in lower risk of dementia
Jerri D. Edwards et al., Alzheimer’s & Dementia 2017 Nov 7;3(4):603-611.

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