認知症予防にマインドフルネス瞑想が効く?

2017年11月6日

2015年には4700万人とも言われる全世界の認知症発症者数は、2050年には1億3200万人にまで増加すると見積られています。発症者数の抑制は人々の健康のためだけではなく、社会的、また経済的な効果も大きいことから、WHOは認知症予防と治療を公衆衛生上の最優先課題としています。
治療法の研究とともに積極的に進められているのが、予防に関する研究です。いくつかの研究から、食生活の改善や定期的な運動、またストレスの軽減は予防効果が大きいとされています。ストレス対策にはいくつかの方法がありますが、その一つが「瞑想」です。今回は、瞑想による認知症予防の効果を調べた研究をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっと
認知症ねっと編集部
認知症ねっと
この記事の目次
  1. マインドフルネス瞑想とはどんなもの?
  2. マインドフルネス瞑想で脳の結びつきが強くなる
  3. 瞑想の認知症予防の効果に期待

マインドフルネス瞑想とはどんなもの?

アメリカのハーバード医科大学のグループは、瞑想の効果を調べる試験的な研究の成果を2014年に発表しました。被験者は「軽度認知障害」と診断された14人です。
被験者を2つのグループに分け、一つのグループでは、毎週2時間の「マインドフルネス瞑想」を含めたセッションを、8週間にわたって行いました。また週に1回のセッション以外にも、毎日30分ほど、自宅で瞑想を行ってもらうようにしました。もう片方は対照グループで、通常の治療を受けるだけです。

マインドフルネス瞑想については、すでにご存知の方もおられるでしょう。瞑想は仏教などの修行として古くから行われていますが、現在では宗教的な側面を除いて、瞑想が精神に及ぼす良い影響や、健康への効果が注目されています。瞑想にはいくつかの種類があります。その中の一つであるマインドフルネス瞑想は「観察瞑想」や「みつめる瞑想」と言われるように、物事を批判したり判断したりすることなく、ただ「ありのままに観察する」というものです。自分の置かれている状況や心に浮かぶ事柄を、感情を抜きにして第三者的に見つめる訓練を行います。

マインドフルネス瞑想で脳の結びつきが強くなる

8週間の瞑想訓練後、心理的テストや認知機能テストを行い、グループ間で結果を比較しました。その結果、両グループで認知機能テストの成績に大きな違いはありませんでした。しかし、一人一人の経過を解析すると、瞑想グループでは成績が改善する傾向が見られる人が多いのに対して、対照グループでは成績が悪くなる傾向が見られました。

さらに、脳に生じる変化を詳細に解析するために、「機能的核磁気共鳴法(fMRI)」によって、活動している脳の領域を調べました。解析の結果、瞑想を行ったグループでは「後部帯状回」という部位と「内側前頭前野」という部位の繋がりが、対照グループよりも強くなっていることがわかりました。

脳はいくつもの領域に分けることができ、それぞれが異なる機能を担っています。最近の研究から、脳の各領域は個別に働くというよりも、協調して一つの機能を果たすことが明らかになってきました。これを脳の「ネットワーク」と呼んでおり、いくつかのネットワークが存在します。中でも「デフォルトモードネットワーク」は、学習したり、考えたりしていない状態のときに活発になる「安静時ネットワーク」の一つです。
瞑想グループで強い繋がりが見られた「後部帯状回」と「内側前頭前野」は、このネットワークに関わる領域で、アルツハイマー型認知症では特に衰退が著しい領域だといわれています。今回の研究から、瞑想によってデフォルトモードネットワークの働きが強くなる、または維持されることが明らかになりました。

また、脳の体積を比較したところ、記憶に大きな役割を果たす「海馬」という部位の体積が、対照グループでは減っていたのに対して、瞑想を行ったグループでは変化がありませんでした。アルツハイマー型認知症の方の脳では、海馬の顕著な委縮が観察されます。瞑想を行うことで、海馬の委縮を抑えることができる可能性が示されました。

瞑想の認知症予防の効果に期待

今回ご紹介した研究は試験的なもので、対象とする被験者の数が少ないため、瞑想の認知症予防効果を断定することはできません。しかし、他の研究からも瞑想によって、脳の前頭葉の血流が増えたり、ネットワークの結びつきがよくなったなど、脳に良い影響があることが報告されています。今後は、さらに大規模な調査研究が行われることが期待されます。『認知症ねっと』で以前インタビューした「メモリークリニック御茶ノ水」の朝田隆先生も、認知症予防と瞑想の関係性に触れています。ぜひ、以下の記事も参考にしてください。


▼ご紹介した論文
Meditation for adults with mild cognitive impairment: a pilot randomized trial.
Wells RE et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Apr;61(4):642-5. doi: 10.1111/jgs.12179.

Meditation’s impact on default mode network and hippocampus in mild cognitive impairment: a pilot study.
Wells RE et al.Neurosci Lett. 2013 Nov 27;556:15-9. doi: 10.1016/j.neulet.2013.10.001. E

▼参照文献
『臨床瞑想法』大下大圓 (2016)日本看護協会出版会

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