生活習慣を改善して認知症を予防する~フィンランドのFINGER研究から

2017年11月10日

超高齢社会になる2025年には、5人に一人が認知症を発症すると予測されています。しかし、認知症は新たな生活習慣病とも言われるように、健康的な生活を心がけることで予防ができると期待されています。今回は、生活習慣の改善によって認知症予防にめざましい効果を示した、フィンランドの研究をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっと
認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. 食生活だけでなく、運動習慣や脳トレなど総合的に生活改善を行う
  2. まずはバランスのとれた食生活
  3. 定期的な運動や脳のトレーニング
  4. 総合的に生活習慣を見直すことで認知機能低下のリスクが抑えられた
  5. 生活習慣を少しだけ変えてみませんか

食生活だけでなく、運動習慣や脳トレなど総合的に生活改善を行う

2009年から2011年にかけてフィンランドで行われたのが「高齢者の生活習慣への介入による、認知機能障害予防の研究」です。英語のタイトルから頭文字をとって「FINGER(フィンガー)」研究と名づけられました。研究に参加したのは60歳から77歳までの1260人です。被験者として認知機能が年齢相当か、少し低いくらいの人が選ばれました。この中から半分の人をランダムに選び「生活習慣改善グループ」として、食事療法、運動、脳のトレーニング、血圧管理など様々なプログラムを2年にわたって受けてもらいました。残りの半分の人たちは「対照グループ」として、一般的な健康アドバイスだけを定期的に受けてもらいました。 プログラム実施期間に入る前と1年後、さらに2年後のプログラム終了時に「認知機能テスト」を行い、結果を比較しました。

まずはバランスのとれた食生活

「生活習慣改善グループ」が行った食事療法を以下にご紹介しましょう。ぜひ、ご自身の食生活と比べてみてください。

タンパク質は1日に摂取する総エネルギーの10%から20%にする
脂肪分は1日に摂取する総エネルギーの25%から35%におさめ、以下の内容にも気をつける
・飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸は10%以下
・一価不飽和脂肪酸は10%から20%
・多価不飽和脂肪酸を5%から10%
(オメガ3脂肪酸を1日に2.5グラムから3グラム含める)
炭水化物は1日に摂取する総エネルギーの45%から55%にする
食物繊維を1日に25グラムから30グラムとる
塩分は1日5グラム以下
アルコールは1日に摂取する総エネルギーの5%まで
砂糖は1日50グラムまで
バターの代わりに植物性マーガリンや菜種油を使用
少なくとも1週間に2回魚を食べる
野菜や果物を豊富に取り、精製していない穀物、低脂肪牛乳、肉製品を積極的にとりいれる

定期的な運動や脳のトレーニング

さらに、「生活習慣改善グループ」の人たちは「運動」と「脳のトレーニング」も行いました。運動プログラムはそれぞれの人の体力や体調に合わせて用意され、ジムで理学療法師の指導のもとで行いました。内容は膝屈伸や腹筋、背筋などを含む週に1回から3回の筋肉トレーニング、そして週に2回から5回の有酸素運動です。

「脳のトレーニング」は、グループセッションと個人セッションに分けて行いました。グループセッションでは、記憶や認知機能の年齢による変化や、日常生活への対応のしかたなどを学びました。さらに、コンピューターを使って学習進度の測定を行いました。個人セッションは、ワーキングメモリーやエピソード記憶、実行機能などの認知機能を鍛えることを目的に作られたプログラムを、各自が家でコンピューターを使って、1回に10分から15分、週に3回行いました。

さらに、メタボ健診と血管リスク管理として、定期的に血圧や体重、BMIなどの身体測定を行いました。

総合的に生活習慣を見直すことで認知機能低下のリスクが抑えられた

次のグラフは、プログラム期間前後に行われた認知機能テストの結果を表したものです。どちらのグループも、プログラム終了時のほうが最初よりも成績が良くなっていることがわかります。特に「記憶」に関しては、両グループ間の差は、それほど大きくありませんでした。

Ngandu T, et al. Lancet. 2015 Jun 6;385(9984):2255-63 Fig.2を和訳

しかし、「実行機能」や「処理速度」といった項目では、「生活改善グループ」のほうが「対照グレープ」よりも成績が著しく向上していました。「実行機能」とは、ある課題や目的を果たすために、必要な情報を判断して計画を立て、その計画を効率的に実行して目的を果たす能力です。プログラム終了時の「改善グループ」の成績は「対照グループ」に比べて、実行機能で83%、また処理速度は150%高くなっていました。さらに解析したところ、「対照グループ」は「生活改善グループ」よりも、約1.3倍、認知機能低下のリスクが高いことがわかりました。以上の結果から、生活習慣を様々な側面から見直すことで、認知機能の低下を効率的に抑えられることが示唆されました。

生活習慣を少しだけ変えてみませんか

FINGER研究は健康な高齢者を対象に行われたため、軽度認知障害や認知症の方の症状改善に繋がるかどうかはわかりません。しかし、生活習慣を変えることで、認知機能の低下を抑える可能性を示したことは大きな成果です。上記に挙げた全てのプログラムを行うことはできなくても、例えば塩分や糖分をいつもより控えてみる、散歩を習慣づけるなど、今すぐできることから始めてみてはいかがでしょうか。大切なことは、普段の食事や運動が老後の自分の健康にも繋がる、ということを意識して生活することかもしれません。

▼ご紹介した論文
A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): a randomised controlled trial.
Ngandu T et al. Lancet. 2015 Jun 6;385(9984):2255-63. doi: 10.1016/S0140-6736(15)60461-5.

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