ダンストレーニングが脳に与える効果とは?~ドイツの研究より

2017年9月14日

皆さんはどんなご趣味をお持ちですか? 読書や旅行、手芸やスポーツなど、仕事や日常の忙しさから離れて気分転換することは、健康を保つ秘訣でもあります。「今、特にこれといった趣味がなくて」という方にぜひお勧めしたいのが「ダンス」です。

今回は、ダンスが脳に与える影響について調べた論文をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっと
認知症ねっと編集部
認知症ねっと
この記事の目次
  1. ダンスが神経細胞を育てる?
  2. ダンスが高齢者の脳に及ぼす影響を調査
  3. 記憶をつかさどる「海馬」とは?
  4. 他の運動より有効? 海馬に起こった変化とは?
  5. まずは簡単な運動からはじめてみませんか

ダンスが神経細胞を育てる?

ダンスが高齢者の脳に及ぼす影響を調査

ドイツのマグデブルグ大学らのグループは、ダンスが高齢者の健康に良い影響があることを示す論文を発表しました。研究に参加したのは平均年齢約68歳の方々で、このうちの14人にはダンス、残りの12人にはダンス以外の運動を1年半にわたって行ってもらいました。トレーニングは1回90分で、最初の半年は週に2回、残りの1年は週に1回ずつ行われました。

ダンストレーニングの内容は、重心移動や回転、片足立ち、スキップやバレエの動き、ジャズダンスのステップなど、基本的なダンスの動きの他にも、振り付けを覚えてもらいました。もう片方のグループは持久力、耐久力、柔軟性を増す運動を軸に、ウォームアップとクールダウンは毎回行い、最初の半年はエアロバイク、残りの期間はノルディックウォークを中心に行われました。
トレーニング効果の判定として、トレーニング期間に入る前と、1年半のトレーニング期間後、それぞれに平衡感覚や視覚などの感覚器官の測定を行い、結果を比較しました。またMRI画像から脳の「海馬」という部分の体積の比較も行われています。

記憶をつかさどる「海馬」とは?

「海馬」とは脳の中心近く、左右1対にある器官です。神話に出てくる「馬と魚」からなる動物に似ていることから、このような名前がつけられています。海馬は「記憶」をつかさどる部位として知られています。またプロのダンサーの脳を調べた研究から、海馬の体積は、視覚や平衡感覚などとも関係があることが報告されています。

海馬はいくつかの領域に分けることができ、たとえば「海馬台」という領域はワーキングメモリーや空間の知覚に関わります。また「CA3」は記憶を思い出す機能(想起)に関係していて、「CA1」は記憶の固定に関係しているといわれています。とくに「歯状回」という領域では、近年、神経細胞が増殖することが明らかにされています。これまでの知見では、神経細胞の数は赤ちゃんのときが最も多く、その後は減るだけだと考えられてきました。神経細胞の増殖は記憶力や、平衡感覚などの向上とも関係があると考えられます。

他の運動より有効? 海馬に起こった変化とは?

結果を解析したところ、ダンストレーニングを行ったグループは、バランス感覚が統計的に有意に上昇していました。MRI画像の解析の結果、どちらのトレーニングを行ったグループでも、左の海馬のCA1、CA2、海馬台の体積が増えていたのです。さらに、ダンスグループに限っては左の「歯状回」と右の海馬の体積も増えていることがわかりました。

以上の結果から、健康な高齢者が定期的にダンスレッスンを受けることで、バランス感覚が養われ、またその背景には脳の「海馬」の変化が影響していることが示唆されました。

まずは簡単な運動からはじめてみませんか

年をとると誰でも、大かれ少なかれ体力や認知機能が衰えてくるものです。しかし今回ご紹介した論文からもわかるように、定期的な運動を生活に取り入れることで、高齢者であっても脳に良い影響があるということがわかります。

今回の研究では、ダンス以外の運動でも海馬に影響することがわかりました。もちろん高齢者だけでなく、若い人にとっても運動は脳に良い影響を与えます。「急に運動といってもハードルが高いな」と感じる方は、まずはウォーキングからでも、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。

▼ご紹介した論文
Dancing or Fitness Sport? The Effects of Two Training Programs on Hippocampal Plasticity and Balance Abilities in Healthy Seniors.
Rehfeld K, et al. Frontiers in Human Neuroscience. Published online June 15 2017 doi:10.3389/fnhum.2017.00305


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