「認知症にやさしい地域社会」各国の取り組みを公開!【ADI国際会議】

2017年5月23日

ADI国際会議の最終日、「認知症にやさしい地域社会」と題された全体会が開かれ、様々な地域から8カ国の状況や取り組みが発表されました。認知症に対する理解の深さや施策のありかたが、国や地域によって違う様子を紹介します。

たとえ状況が違っても、「認知症にやさしい社会」についての認識は世界共通。“当事者目線”と“認知症への理解深耕”の拡充に、全ての参加国が取り組んでいました。

この記事の執筆
認知症ねっと
認知症ねっと編集部
認知症ねっと
この記事の目次
  1. 日本:京都の認知症施策のあゆみ
  2. ナイジェリア:”認知症”という言葉さえない国
  3. イラン:小学生への啓蒙で家族にも認知症への理解を深め
  4. アルゼンチン:認知症カフェで啓蒙とサポートを
  5. インド:舞台劇を利用した啓蒙活動
  6. カナダ:当事者こそが”認知症にやさしい地域社会”を知る人
  7. イギリス:当事者が訴える安心して暮らせるコミュニティとは
  8. シンガポール:認知症でも人生を楽しめる支援
  9. 日本:地域一丸となって認知症をサポートする熊本県菊池市

日本:京都の認知症施策のあゆみ

橋本武也

京都地域包括ケア推進機構の橋本氏は、2004年に京都で行われたADI国際会議以降、当事者の発信が活発になったことに触れ「京都の認知症新時代の扉を開いた」と語ります。それから13年間、京都は独自の施策を当事者と共に進めてきました。

医療やケアにたどり着けない初期の”入り口”問題を早い時期から課題とした地域包括ケア、当事者視点のケアを言語化し疾病感を変える「京都文書2012」、そして2013年の「京都式オレンジプラン」と続きます。支援する側とされる側という垣根を取り払い「対等な関係のケアサポート」をキーワードに、現在は”本人評価”の確立に取り組んでいます。

「京都に暮らす当事者が『I can live well with dementia』と言える日が来ることを期待しています」

ナイジェリア:”認知症”という言葉さえない国

キキ・エドワーズ

アフリカ地域のADIアンバサダーであるキキは、まず「多くの人が認知症の偏見と戦っている姿を見られて嬉しい」と述べ、ナイジェリアにおける認知症をとりまく状況を報告。ナイジェリアには「認知症」に相当する言葉がなく、その症状から「Enchanted(魔法をかけられた)」「Mad(狂気)」などと呼ばれ差別されているそうです。暴力事件に発展することもあるという事実に、会場からは驚愕の声もあがりました。

偏見をなくす取り組みと共に、認知症の人を支援し、社会を啓蒙する様々な活動を行っており、多くの団体の立ち上げなどにも携わっています。

イラン:小学生への啓蒙で家族にも認知症への理解を深め

ファラネ・カボリ

多くの慈善団体での経験を活かし、イランアルツハイマー協会の役員として活躍する彼女は英語とペルシャ語の翻訳家。イランにも認知症への理解深耕が必須で、世界中の認知症の体験をイランに伝えるため、多くの啓蒙ツールなどの翻訳を行っています。

教育委員会と協働し、小学生を対象に行った啓蒙活動の成果を報告。高齢者に対する子供たちの態度が変わったほか、その両親に関しても理解が深まったといいます。6割以上の親が認知症を知らず「物忘れだと思っていた」状況を打破したという点においても、大いに意義のあるプロジェクトと言えるでしょう。 「どんな世代にも有効で、すぐにでも始められる低コストなプロジェクト」として、会場の注目を集めました。

アルゼンチン:認知症カフェで啓蒙とサポートを

ノエミ・メディナ

ノエミは認知症に対する偏見と闘い、当事者と介護家族の支援を行うA.L.M.A.の副会長。当事者や介護者が集う音楽とおしゃべりのカフェ、「Café con A.L.M.A.」を紹介しました。ラテンアメリカで初めての試みで、3年目になるそうです。

日本ではスタンダードになりつつある「認知症カフェ」と似たような取り組みが、南米初という事実に少し驚きますが、カフェはアルゼンチン国内でも存在が知られ、医療関係者の間でも広がりつつあります。音楽と共にダンスを楽しむ参加者の姿が印象的でした。

インド:舞台劇を利用した啓蒙活動

ミーラ・パッタビラマン

インドアルツハイマー病と関連疾患協会(ARDSI)の議長のほか、政府機関との協働事業にも携わり、カウンセラーとしても活躍してきたミーラ。舞台演劇を利用した啓発活動について発表しました。 有名な役者の協力も得て、各地を回る過酷なツアーを敢行。認知症に冒された人々の物語を舞台で見せることにより、認知症に対する理解が深まると共に「認知症でも良い人生が送れる」というメッセージが伝わったといいます。

この活動はメディアや政府にも注目され、メモリークリニック設立のリクエストにも役立つとのことでした。

カナダ:当事者こそが”認知症にやさしい地域社会”を知る人

マリア・ハワード

ブリティッシュ・コロンビア州のアルツハイマー協会CEOであるマリアは「Cureの前にCareを」と説き、当事者が力を持てるようなサポートをしたいと話します。 そのためには声をあげることが大切と述べ、携わる人々に対する教育も必要であること、研究に当事者が参加することなどを挙げています。

「当事者こそが“認知症にやさしい地域社会”がどんなものかを知っている人たちです。今日見聞きしたことを、認知症を知らない人々に伝えてください」と力強く訴えました。

イギリス:当事者が訴える安心して暮らせるコミュニティとは

ジーナ・ショウ&クリス・ロバーツ

イギリスからはアルツハイマー協会で認知症に関する情報や教育の啓蒙に従事する当事者のクリスとジーナが登場。グローバルな認知症に優しい社会の構築を推進しています。

若年性認知症当事者のジーナは、学校の子供たちの質問に答える形で認知症の啓蒙活動を行っており、子供たちが学んだことをビデオにした様子を紹介。 「孤独はコミュニティを作ることで解消します」と訴え「当事者にとって理解があり、参加でき、自分に価値があると感じられる世界を実現するために、全ての人を巻き込む必要がある」と話しました。

シンガポール:認知症でも人生を楽しめる支援

エニー・アーフィン&アスミン

当事者として登場したエニーは、前向きなオーラに溢れています。2012年にアルツハイマーの診断を受けた信心深いイスラム教徒の彼女は、それが神の意志であると信じ、全ての物事をポジティブに捉えました。 子供たちのおかげで様々なアクティビティに参加している様子を語り「認知症によって生活は変わりましたが人生を楽しんでいます」と語ります。

若年性認知症でも参加できるクラスや、認知機能の教室の様子、エニーも参加した啓蒙ビデオで認知症に対する社会の理解が深まった事実を目の当たりにし、「(認知症に関して)シンガポールは正しい方向に進んでいます」という言葉にも説得力がありました。娘のアスミンも「多くの支援を受けています」と報告しています。

日本:地域一丸となって認知症をサポートする熊本県菊池市

松永美根子

松永氏は介護老人保健施設の副施設長。地域で組織や官民の枠を超えた、認知症支援の仕組みづくりに尽力しています。

熊本県の認知症サポーター数は人口比で8年連続1位。菊池市では小・中学校の授業にも養成講座を取り入れているのだとか。 住み慣れた地域で安心して暮らせる環境を目指し、お店や公民館など街中に大きなオレンジリング掲げることで、当事者や家族を支える姿勢を広めます。

また、夜間の徘徊対策として「明るいところを目指す」特性に着目。夜でも明るいコンビニや新聞配達店の方に見守ってもらう取り組みも。あらゆる立場の人を巻き込み、地域資源を活用したやさしい地域づくりに挑戦中です。


このページの
上へ戻る