認知症と共に暮らせる社会へ【第35回日本認知症学会学術集会】

2017年3月17日

新オレンジプランで掲げられている「認知症の人の意思が尊重され、出来る限り住み慣れた地域の良い環境で、自分らしく暮らせる社会の実現」には、どんなことが必要なのでしょうか。
昨年12月に行われた日本認知症学会学術集会では、このテーマを掘り下げたシンポジウムが多数行われました。認知症と共に暮らせる社会を築くために必要なことを、各先生の講演から紹介します。

【高橋紘士先生】進行を緩和するための環境とは

一般財団法人高齢者住宅財団理事長 高橋紘士先生は認知症の方の住まいに関する講演の中で、粟田主一先生(東京都健康長寿医療センター研究所)のコメントを引用し、「認知症というものは、つながりを大切にした環境が重要」「認知症の進行を緩和するために、慣れ親しんだ場所で慣れ親しんだ時間の流れを過ごすことが不安と混乱を減らす」とのキーワードを挙げました。

大切なことは、まず第一に「尊厳」。つまり”自分で決めること”が生活機能向上に大きな影響を与えます。どんな適切なケアがあっても、意欲を阻害するようなケア行為はむしろ生活機能の低下を招きます。高橋先生は、そこには環境的な要因が深く関っているとしています。

では、当事者にとって最適な生活環境・ケア環境とはどのようなものなのでしょうか。

例に挙げられた福祉施設は、認知症のお年寄りと子供たちが一緒に過ごす共生型のモデル。 老人だけを集める従来の日本のケアに真っ向から挑んだこの施設では、子供たちと過ごした利用者のモチベーションレベルがグンと上がったといいます。

また、別の例では地域全体で認知症を見守る街が紹介されました。認知症の人でも行動を制限せず、自由に散歩したり野良仕事をし、その安全を地域全体で見守るのです。地域住民と専門家の「プロアマ混合」の地域ケアと言えるでしょう。

認知症の方に必要なのは親和的居住空間と生活支援。「身の置きどころ」を作り、孤立しない環境が、進行の抑制には欠かせない条件なのです。

【松下正明先生】認知症になっても幸せに生きられる社会に必要なこと

東京都健康長寿医療センター理事長/東京大学名誉教授の松下先生の講演は、施策に関する勉強会の成果報告のほか、当事者の尊厳やエイジズムといった倫理的な話題にまで及びました。

エイジズムとは高齢者への偏見・差別の問題。高齢であるという理由で人をステレオタイプ化して差別することを言います。松下先生はエイジズムが社会に存在していることに警鐘を鳴らすとともに、ニュースを例に挙げ、在宅や施設における虐待の存在にも触れました。

「認知症を抱える人を含めた超高齢者が、偏見や虐待のない安全・安心で幸せな生活を送れるように、社会全体で意識を変えていかなければいけません。それが当事者の尊厳や人権を守ることにつながります。認知症の専門家が中心となって、偏見や差別、虐待をなくしていくことが、当事者の尊厳を守ることであり、そしてその究極の目的が”誰もが認知症になっても幸せに生きる社会”の実現であると考えています」

介護が虐待にならないために ユッキー先生の認知症コラム「尊厳を支える認知症ケア~施設内虐待」 ユッキー先生の認知症コラム「尊厳を支えるケア~家族による虐待とは」

【武池一先生】多職種の連携と情報共有

藤田保健衛生大学医学部認知症・高齢診療科教授の武池先生が言及するポイントは情報共有。ケアパス連携シートを上手く活用し、仕組み・枠組みをつくる取り組みが紹介されました。

「認知症のケアの仕組みづくりに重要なのは、自治体を含め色々な職種が連携する仕掛け。わかりやすい連携ツールを作っての情報共有はもちろん、単に情報を伝えるだけではなく、グループワークなどを行って理念を伝える機会を増やしていくことも大事です」

また、当事者と専門職の間の障壁を打破するためにも適切な情報共有が必要と訴えます。 「当事者視点を重視することは大事ですが、専門職主体の介入も必要です。でも専門職主体の介入にしてしまうと、当事者視点が消されてしまいます。そのあたりも考慮し、最終的に考えたのは、当事者と専門職との情報相互俯瞰、同じ情報を持つということです」

こちらを実現するために取り入れたインターフェースが本人・ご家族が記入するノート。自分の年表なども含めたこのツールの活用は、医療従事者等、当事者を取り巻く第三者が、本人や家族の想い・暮らしを深く知ることに通じるといいます。

「ケアパス連携シート」「オレンジつながり手帳」等のツール活用で、様々な立場の人が、必要なことを理解しやすい環境が構築できるのです。武池先生は「専門職、当事者・家族の連携を深めていき、それによって最終的には認知症の疾病感を変えていきたい」と展望を語りました。


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