認知症リハビリで生活力向上を目指す【第35回日本認知症学会学術集会】

2017年3月21日

認知症の進行予防や症状緩和に役立つリハビリテーション。 今回は、昨年12月に行われた日本認知症学会学術集会における群馬大学名誉教授、山口晴保先生の講演の中で触れられた「認知症リハビリの5原則」について紹介します。先生の講演内容をもとに、5原則とはどのようなものか、なぜ重要なのかを詳しく解説していきます。

この記事の監修
認知症ねっと編集部
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認知症のリハビリは脳を活性化させ進行を防ぐ

年々その患者数が増加の一途をたどる認知症。現在のところ、認知症を完治させる方法は発見されておらず、治療は進行予防や緩和を目的として行われます。主となるのは薬物治療ですが、それに併せて行われているのが認知症のリハビリテーション(以下リハビリ)です。

認知症におけるリハビリは、脳を刺激し活性化するというもの。 「”認知機能を上げる”ということではなく、むしろ残存機能を活かしていかに生活力をあげるかが、求められていることだと思います」と山口先生。

具体的には効果が実証されている運動のほか、昔の遊び道具や思い出の品を使って古い記憶を引き出し脳を活性化させる「回想法」や、音楽を聴いたり歌ったりする「音楽療法」、工作や折り紙、芸術に触れることで脳を刺激する「芸術療法」などがあります。また、家事などの一部を患者に役割として与え取り組んでもらう「作業療法」は家庭内でも取り入れやすいリハビリです。

認知症のリハビリ療法とは?

認知症リハビリで重要となる「5原則」

認知症予防の研究者である山口先生は、認知症患者にリハビリを行ううえで、「認知症リハビリの5原則」を意識することが大切だと話します。

<認知症リハビリの5原則>
(1)快刺激:患者もリハビリを施す側も笑顔で楽しく行うことを心がける
(2)コミュニケーション:密なコミュニケーションで患者に安心を与える
(3)褒め合い:患者を褒める、また患者同士が褒め合うことで意欲が向上する
(4)役割:患者がなんらかの役割を持ち患者が主体となって活動することで生きがいをつくる
5)失敗を防ぐ支援:患者の失敗を未然に防ぎ成功体験を増やす

この5原則に沿ったリハビリを老人保健施設で行ったところ、認知機能の評価スケールである長谷川式やMMSEの得点に増加が見られたといいます。

山口先生によると、一番大切なことは”褒めながらやること”。「認知症の人はいつも不安を持っています。存在を肯定されること、他者に自分の存在を受け入れてもらうことは、大きな意味を持っているのです。認知症の人はほとんど褒められることがないので、とても大きな効果があると思っています」

低下した認知機能を強引に上げようとするきついリハビリでなく、残された機能を生かし、相手を尊重し褒めながら、楽しめるリハビリを行うことが、認知機能の向上、生活力の向上につながると考えられるのです。

取り入れていきたい具体的なリハビリとは

高い効果が期待できるリハビリにはどのようなものがあるのでしょう。山口先生は以下のリハビリを勧めています。

●運動

認知症のリハビリの中でも効果が高いとして知られているのが運動です。

運動をして筋肉を動かすと、さまざまな指令が脳に届き、脳から神経細胞を育むホルモンがつくられます。このホルモンは記憶力を司る「海馬」という部分でも増え、記憶力の向上が期待できるのです。ほかにも、運動をすることでさまざまな栄養因子が増えることがわかっており、認知症発症後でもエクササイズなどの運動をすることにより、進行の抑制が可能であることが、疫学調査によりわかっています。

●アロマセラピー

癒しの効果があることで知られるアロマですが、認知症の興奮性周辺症状を鎮めるのにも効果が発揮されることが報告されています。アロマオイルを使ってのマッサージもスキンシップのひとつとしてよいと考えられます。

●グループ作業

洗濯などの家事や農作業といったなんらかの作業を少数のグループで行い、認知症患者に役割を与え行ってもらうというリハビリです。認知症患者が能力を発揮し、褒められる機会をつくることで元気ややる気を引き出します。

有酸素運動で認知症予防 筋トレで認知症予防 認知症のリハビリに作業療法

認知症のリハビリは患者が「楽しむ」ことが大切

認知症患者は「できないから」「危ないから」といった理由で作業を取り上げられてしまうことも少なくありません。しかし、もともとは家事や仕事をしていた方たちです。そういった方たちに能力を発揮する場面をつくることで、脳の活性化が期待できます。 さらにその中で褒め合い、笑顔で楽しくリハビリを行うことで患者もリハビリを行う側もやる気が高まるでしょう。

「リハビリ療法」というと固く身構えてしまうかもしれませんが、何よりもお互いが楽しみ、コミュニケーションをとることが大切なのです。


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