東京都の認知症施策【第35回日本認知症学会学術集会】

2017年3月15日

昨年12月に行われた日本認知症学会学術集会において、東京都福祉保健局高齢社会対策部 認知症対策担当課長 上野睦子氏は、国の施策新オレンジプランに寄り添った、東京都の取り組みについて発表しました。

「東京都の認知症施策:大都市における試み」と題された発表の内容を紹介します。

この記事の監修
認知症ねっと編集部
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東京都の現状

上野氏の従事するポストは「認知症対策は専門のチームで行う必要がある」との見解から、2016年4月に新設されました。東京では、大都市ならではの課題や問題点も抱えています。具体的な施策の紹介の前に、背景となる東京都の現状を簡単に説明しましょう。

●人口:1303万人(最多自治体:世田谷区90万人/最小自治体:青ヶ島200人)
→多様な自治体があるのが特徴。
●高齢者人口:301万人(2016年)
→高齢化人数の増加率は全国1位。さらに、2020年~2035年には、都内の高齢者の6割が後期高齢者になると推測されている。
●特色:1世帯の人数が少ない(夫婦・単身世帯が半数)
→今後も高齢化で単独世帯の増加が予想され、支援が難しくなる恐れあり。

都の具体的な取り組みとは?

都の認知症に対する活動は東京都高齢者保健福祉計画の中に組み込まれています。上野氏によると、中でも認知症対策推進会議と医療部会は東京都の目玉であり、特に医療部会は外部の有識者からの意見が聞ける貴重な機会だそう。

このように、外部有識者の意見なども取り入れながら行われている実際の取り組みを見ていきましょう。

認知症への理解を深める為の普及・啓発の推進

「知って安心認知症」(東京都健康長寿医療センター沼田先生監修)「自分で出来る認知症チェックリスト」公開

チェックリストは好評で、著作権を開示。現在では都内では29の自治体、都外でも多くの自治体・媒体で引用されています。

認知症初期支援チームの設置

国の事業に沿って、認知症専門医による指導のもと早期診断・早期対応に向けて地域包括支援センターなどに整備しています。

地域連携の推進と専門医療の推進

認知症疾患医療センターの設置

まずは平成24年度に12箇所に認知症疾患医療センター設置。その後26年には、島諸以外の区市町村単位で整備することとなりました。24年度に設置した12箇所は地域拠点型センターに、新しく設置したものは地域連携としています。

東京都では、センターの数は国の指定を上回っており、さらには年に2回の協議会開催、年6回以上の医療従事者向け研修実施など、充実した取り組みを実施。連携型センターはまだ1年に満たない実績しかありませんが、相談件数や鑑別件数を見ると拠点型センターの実績は26年度に比べて確実に増加しています。

認知症の早期診断対応の推進

認知症コーディネーターの設置

認知症コーディネーターを区市町村に配置。さらにアウトリーチを配置して区市町村へのバックアップを行っています。

●認知症コーディネーター

センターへの支援を担うのがこの認知症コーディネーター。認知症ケア在宅高齢者の支援に3年以上従事した経験者を、センター1箇所につき1名以上配置しています。 個別診療のバックアップを行い、認知症の疑いのある人の早期診断・早期対応を実現し、地域の対応力向上を目指します。 医療系専門職を認知症に専従してもらう事で更なる効果が期待できるでしょう。

●アウトリーチチーム

認知症の専門医1名以上と保健師看護師精神福祉士で3年以上の認知症対応経験者を複数名、センターに設置。コーディネーターからの依頼に元づいて対象者を訪問し、必要な医療や介護サービスに繋げるのがその役割となります。 

●認知症対策推進センター

島諸地域にはそもそも医療機関自体が少なく、センターがないため、島諸地域外から訪問して医療機関の対応力向上を目指します。患者の変化に気づきやすい歯科医師薬剤師などへの認知症対応力向上研修も開始されました。

地域生活の支援・家族支援

地域介入研究を施策に活かす

●長寿医療センター
板橋区の高島平団地で生活実態調査を行って介入支援を行うモデルの研究。

●医学総合研究所
世田谷区武蔵野市足立区で実施。スウェーデンのレジストリーを参考にしたケアプログラムの作成。

情報共有サイトの運営

早期の受診と行方不明者発見、保護の後押しを狙う情報サイトです。警視庁とも情報共有し、なるべく早い身元発見や保護を目指します。

認知症カフェ

認知症カフェの事業は医療機関と連携しています。さらに疾患センターでの開催は都が自治体に支援することで、活性化を狙います。

高齢者虐待

昨今増加している高齢者虐待。相談窓口も設置しています。発見された場合は地域包括支援センターへの連絡してください。センターで蓄積したノウハウはマニュアルとして公開し、防止に努めます。

ユッキー先生の認知症コラム:尊厳を支える認知症ケア~施設内虐待 ユッキー先生の認知症コラム:尊厳を支えるケア~家族による虐待とは~

若年性認知症

患者数が少なく、その支援はケアマネージャーなどにもあまり知られていない若年性認知症。支援のモデルとしてセンターを目黒と多摩に設置しました。

地域で支援者を見つけて落ちつく事を目的に、若年性の場合に深刻化し得る経済的な問題や、就労介護年金の相談など、経験あるコーディネーターが対応します。

ユッキー先生の認知症コラム:若年性アルツハイマーはどのように診断されるのか 【順天堂大学 本井先生インタビュー】65歳以下で発症する若年性認知症とは

国と歩調を合わせて充実を図る

認知症患者数が予想を上回る増加を続け、その対応は「待ったなし」の状況です。

大都市東京都では、国の施策に歩調を合わせると共に、独自の施策を展開しながらこの問題に取り組んでいます。今後は新オレンジプランの7番目の柱である「認知症の人やその家族の視点の重視」についても、より充実を図っていく予定です。


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