認知症当事者が医療関係者へ伝えたいこと②【第35回日本認知症学界学術集会】

2017年2月2日
岩佐さんとお母様

12月1日~3日、東京国際フォーラムで行われた「第35回日本認知症学界学術集会」。2日目の会長企画シンポジウムは『医療関係者へ伝えたいこと、期待したいこと』と題され、認知症当事者やその家族、支援者が登壇しました。参加者の多くがドクターである学術集会で、直接想いを伝えるのは画期的な試み。

認知症ねっとでは、このシンポジウムの様子を2回にわけてお届けします。

2回目となる今回は、若年性認知症を患うお母様の介護を担うフリーアナウンサー、岩佐まりさんのスピーチをご紹介。診断から現在までの歩みを振り返る中で、医療従事者に向け、是非考えていただきたいことを提示されています。 闘病・介護の日々を送っていらっしゃる読者の皆様の中には、共感される方も多くいらっしゃることでしょう。

はじめは担当医だけが頼みの綱。患者や家族と信頼関係を築いて

異変は母親が55歳の時。もの忘れのほか頭痛やめまいなどを訴え、色々な病院をめぐったものの、原因はわからなかったといいます。やっと「もの忘れ外来」の存在に辿りついて受診に至り、MCIと診断されたのは、それから3年後のことでした。

「病名が告げられ、薬を処方されて、『では次は1ヵ月後に来てください』と先生はおっしゃいました。当時の私たちは『MCIって認知症なの?認知症じゃないの? 』と、聞きたいことが山ほどありましたが、普段接しなれない医師に些細なことを聞いてよいのかわからず、聞く事ができませんでした」

認知症が「恥ずかしいもの」という認識と、病気を認めたくない気持ちから、周りの人にMCIの事実を伏せるよう母から頼まれた岩佐さん。誰にも相談できず、将来に不安を抱えます。そしてご本人も「認知症になる」という恐怖心と喪失感から引きこもり、「死にたい」と娘に電話をかけてくるように。家事全般をこなすようになった父親にも大きな負担がかかりました。

「本人もご家族も周りに言えない人が多く、一人で抱えてしまいがちです。だからこそ、先生と信頼関係を築いて、病気を理解するために患者や家族とコミュニケーションをとり、家族の意見を聞いてあげてほしいと思います」

MCI診断以降、鉄分のサプリメントを処方されていた母親は2年後にアルツハイマーとの診断を受け、アリセプトが処方されました。「やっと薬が処方された」と喜んだのも束の間、症状に変化はありません。
「治療薬ではないこと、もの忘れが改善されるわけではないこと、副作用のことなどを教えてもらえると、薬に対する家族の理解もより深まったのでは、と思います」

その後は、病状が進んで薬の管理も出来なくなり、オーバードーズで寝込む事態にも発展しました。
「薬に日付を書いても○をつけても、飲み忘れたりたくさん飲んでしまったりします。だからこそ、家族のサポートが必要なのです。私は一度失敗してからそうしたことに気づいたけれど、処方時に教えていただけると、失敗することなく対応することができたのではないかと思います」

苦しい初期段階に適切なアドバイスを!

そんな経験を重ねた岩佐さんは、本人や家族にとって、認知症で一番つらい時期は初期だと訴えます。
「病気への理解が初期にはありません。対応の仕方もわからない、福祉制度も知らないんです。どうしたらいいのかとにかくわからないんです。私の母は現在末期で、一人では何もできず、意思疎通もできないため、とても過酷な介護生活です。それでも、初期の頃が一番つらかった。今は病気のことも福祉制度も知ってるし、介護仲間だっているんです。

ですから、今なんとか病気を治したいと思って駆け回っている初期段階の患者さんがいらっしゃったら、どうぞそのご家族にしっかりと病気の説明、薬のこと、対応の仕方を教えてあげてほしいと思います。苦しいのは初期の方々なのです」

福祉制度に関しても、どこからも情報を得ることが出来ないまま、利用が遅れました。ぎりぎりまで家族だけでがんばった結果、デイサービスを受けるタイミングで要介護認定を知り受けた時には、既に要介護3がついたといいます。

「もっと早くから福祉制度を利用していれば、父の負担も軽くなっていたのに。もっと早く障害年金や自立支援制度を利用していれば家計は楽だったのに。若くして認知症になって働けなくなると病気のことだけでなく、生活も大変になります。また、高齢者にとっては、わずかな年金だけでは医療費も痛い出費なのです」

岩佐さんは会場のドクター達に向かってさらに続けます。
「必要な患者に応じて提案できる制度の引き出しを先生方が沢山持っていてくれたらどれだけ心強いでしょう。 というのも、認知症になってまず駆け込むのは病院。最初はほとんどの人が福祉制度を知りません。例えば『利用できる福祉制度があるので、地域包括センター支援センターに相談してみてください』というアドバイス一つでも、初期の家族にとってはとてもありがたいものなのです」

生活面に余裕ができることが、病気と向き合う家族を支え、進行を遅らせることにつながると岩佐さんは語ります。


介護の仕方で抑えられる病気の進行や周辺症状

アルツハイマーが進行すると、暴言暴力などの周辺症状が出てきます。岩佐さんの母親も、お風呂に入る時に暴れたり、ごはんを投げつけたりといった行動を取るようになりました。しかし、そこには本人なりの理由があったのです。

「理由があることを知らない、知ろうとしない家族は病院に行って薬を求めます。しかし、暴言暴力には理由があって、介護の仕方ひとつで減らすことができるんです」

理由があることに気づいた岩佐さんは、ひとつひとつ原因を探り、対処していったのです。 たとえば、お風呂を嫌がるのは脱衣所の寒さと衣服を脱ぐ手順がわからなかったから。そこで冬場は脱衣所を暖め、声かけしながら衣服を脱ぐお手伝いしました。

適切な対応で、暴言暴力が減ることを実感された岩佐さんは、最後に改めて、今後の認知症医療に対する希望と期待を語ります。

「介護者の正しい病気への理解、介護者の適切な対応が、認知症の進行を遅らせるための重要な部分です。そしてそれを真っ先に家族に教えられるのは、役所ではなく、認知症コールセンターでもなく、身近な病院の先生なのではないでしょうか。 服薬と介護の大切さ、この両方の面からアドバイスいただける、認知症医療に期待しています」

▼関連リンク
認知症当事者が医療関係者へ伝えたいこと①【第35回日本認知症学界学術集会】

▼外部リンク
岩佐まりさんが、日々の介護を綴るブログです。
岩佐まりオフィシャルブログ「若年性アルツハイマーの母と生きる」


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