発症から診断まで:②認知症の中核症状と周辺症状 (行動・心理症状:BPSD)

この記事の目次
  1. 認知症によって現れる症状とは?
  2. 中核症状とは?
  3. 記憶障害とは?
  4. 見当識障害とは?
  5. 実行機能障害とは?
  6. 理解・判断力の障害とは?
  7. 失語・失行・失認とは?
  8. 周辺症状(行動・心理症状:BPSD)とは?
  9. 周辺症状への対応とは?
  10. 徘徊の対応は?
  11. 妄想の対応は?
  12. 幻覚の対応は?

認知症によって現れる症状とは?

認知症の症状として、中核症状と周辺症状(行動・心理症状:BPSD)の2種類があります。

中核症状とは、脳の障害により直接起こる症状です。脳の神経細胞が破壊されて、脳の働きが低下します。認知症の全ての人に必ずみられる症状です。

一方、周辺症状とは、本来の本人の性格や環境、人間関係などに影響されて現れる症状です。症状の現れ方は人それぞれです。行動・心理症状(BPSD)とも言われます。

中核症状とは?

中核症状には、記憶障害、見当識障害、実行機能障害、理解・判断力の障害、失語・失行・失認などがあります。

記憶障害とは?

記憶とは、新しい情報を脳が学習して覚える『記銘』、情報を保管する『保持』、必要な時に情報を思い出す『想起』を行うことで、脳に定着します。これが、記憶のメカニズムです。

しかし、記憶障害が起こると、体験や出来事そのものが記憶として定着されないため、「忘れた」という自覚がありません。

この記憶障害が現れるのがアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症は、短期間の記憶をとどめる海馬が障害を受けるため、新しいことが覚えられなくなります。

しかし、手続き記憶と呼ばれる同じ体験を繰り返したり、昔から繰り返して習得した記憶などは、保たれる場合が多いです。

見当識障害とは?

見当識とは、年月日、時間、季節、場所、人物などを認識する能力のことです。日頃、何気なく行っている自分の置かれている状態を把握したり、周りの人との関係性を把握して、良好に保とうと働きかけをしています。

最初に起こる見当識障害は、時間です。今日の日にちや曜日、時間を間違えることが多くなります。例えば、「病院の受診の日を忘れてしまった」、「約束の時間を間違えた」などが起こります。

徐々に進行すると、年月日や季節感が分からなくなり、季節に合った服装を選んで着ることができなくなります。

次に起こる見当識障害は、場所です。通い慣れた場所に出かけたのに道に迷ってしまう、自分の家のトイレに迷う、などがみられます。

そして、人の顔や名前を間違えたり、忘れます。例えば、自分の息子を父親と間違えるなどがみられます。

実行機能障害とは?

実行機能とは、目的をもって計画したことを実行する能力です。例えば、洗濯機を回している間に、掃除機をかけて、洗濯物を干す、冷蔵庫にある食材を確認して必要な食材を買いに出かけるなどの効率的な行動のことを言います。

しかし、実行機能能力が障害されると、洗濯が終わるまで他の家事ができない、2つのメニューを同時進行で調理できない、急に予定が変更するとどうしていいのか分からないなどがみられます。情報を統合して遂行することが難しくなるため、手際が悪くなった、今までよりも時間がかかるようになります。

理解・判断力の障害とは?

理解することに時間がかかる、情報を処理することが難しくなるため、2つ以上のことを並行してできなくなります。例えば、「郵便局に行って、ATMでお金をおろしてから、スーパーで卵を買って来て。」と言われると混乱します。

また、いつもと違うことが起こると混乱します。例えば、いつもの道が工事中で迂回しなければならない時はどこを通って良いのか分からなくなります。

その他、あいまいな表現が分からないため、具体的な行動を説明する必要があります。

失語・失行・失認とは?

失語とは、「聞く」「話す」「読む」「書く」の言葉に関わる能力が低下し、言葉の理解ができない、自分の言いたいことが伝えられないなどがみられます。そのため、もどかしさから苛立ちや分かったふりをする場合があります。

失行とは、目的とする行動が取れなくなります。例えば、セーターを足に通したり、お茶の入れ方が分からなくなります。

失認とは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚が正常に働かなくなります。時計が何を示しているのか分からない、自分と他の人の位置関係や空間の距離感が取れなくなり、人や物にぶつかってしまうなどがみられます。

周辺症状(行動・心理症状:BPSD)とは?

周辺症状とは、本来の本人の性格や環境、人間関係などに影響されて現れる症状です。症状の現れ方は人それぞれです。行動・心理症状(BPSD)とも言われます。 周辺症状は、行動面における症状として、徘徊、暴言・暴力、介護拒否、多弁・多動、異食、弄便などがみられます。また、精神面における症状として、抑うつ、せん妄、妄想、幻覚などがあります。

周辺症状への対応とは?

周辺症状の現れ方は、人それぞれです。本人の性格や、生活習慣をふまえて関わることが大切です。

また、かかりつけ医に相談をして薬物療法を受けたり、リハビリテーションである絵や歌、運動など本人が好きなことや得意なことを行ったり、昔の体験を話す回想法を行うことも有効です。

徘徊の対応は?

認知症にて徘徊がみられている方は、何らかの意味や理由があります。例えば、毎日勤勉に会社員として出勤していた人が出勤しないと気が済まない、農業をしていた人がナスの収穫に行かなければならない、などその人それぞれの人生の生き様が現れています。家族は「徘徊が始まった」と心配のあまり、家から出られないようにしたり、叱ったり、説得するのは逆効果の場合があります。

対応方法として、しばらく一緒に歩いて会話をする、「お茶でも飲みませんか?」「好きなテレビ番組が始まりますよ。」などと言って録画しておいた好きな番組を流すなど気をそらすような関わりをすることも有効と言われています。日中一人で過ごされている場合は、玄関にカメラを設置する、靴にGPSを装着するなどの方法もあります。

また、お住まいの市町村で徘徊に対するサービスを行っている場合があります。例えば、GPSの貸し出し、QRコードやステッカーを服につける、など様々な工夫をしています。お住まいの役所に聞いてみましょう。

そして、徘徊により行方不明になった場合は、速やかに警察に連絡をしましょう。

妄想の対応は?

妄想の中でも、現れる頻度が高いのがもの盗られ妄想です。認知症でなくても、貴重品をどこに置いたか忘れてヒヤッとする体験をした人もいるのではないでしょうか。

貴重品を大切にしまっておこうと厳重に管理しますが、認知症の場合、しまったこと自体を覚えていません。その結果、いつもの場所にしまったのに、財布がないことへの驚きや、見つからないあせり、不安などが高まり、取り繕うために「盗まれた!」という妄想がみられます。

もの盗られ妄想は、記憶障害による本人のあせりや不安の表れです。まずは、あせりや不安を軽減するように関わりましょう。例えば、「一緒に探しましょう。」「いつもしまってある場所はどこですか?」など一緒に行動することが大切です。そして、本人に見つけてもらいましょう。先に見つけてしまうと「やっぱり盗んだに違いない」ということになりかねません。

「盗まれた」とあらぬ疑いをかけられるのは、誰しも嫌なことです。しかし、「するわけないでしょ!」感情的に対応しても、認知症の方の不安は大きくなり、より一層興奮してしまう場合もあります。深呼吸をしてから、落ち着いて対応しましょう。

もの盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症の特徴的な症状のひとつと言われています。そのため、もの盗られ妄想がみられたらかかりつけ医に受診をしましょう。認知症の発見につながる場合もあります。認知症と診断されている場合には、ケアマネジャーに相談してデイサービスやデイケアなどを利用する、家族が一息できる環境を整えるようにしましょう。

物盗られ妄想の原因と対応

幻覚の対応は?

幻覚とは、実際には存在しないのに、感覚的に鮮明な印象をもつ体験を幻覚と言います。実際にないものが「見える」幻視のほか、実際には聞こえないのに「聞こえる」幻聴、幻味、幻臭、体感幻覚などがあります。

特に、レビー小体型認知症で多くみられるのが幻視です。例えば、「子どもが部屋で遊んでいる。」「部屋に虫がいるから、追い払ってちょうだい。」など人・虫・小動物など臨場感のある幻視が特徴的と言われています。

このような幻視を訴えられた場合、肯定も否定もしない対応をします。肯定をすると、より一層幻覚が進んでしまう恐れがあります。一方、否定をすると、拒否されたという否定的な感情が残り、悪循環になります。

幻視を訴えられた場合、その場に一緒に行きましょう。そして、「この場所で見えたのですね。今は見えませんよ。」などと落ち着いた声かけをします。

加齢に伴って、視力や暗い場所でのものを判別する能力が低下します。その上、夜間にトイレに行く回数も増えます。そのため、転倒予防も兼ねて足元を照らすように間接照明を置いてみてはいかがでしょうか。

また、認知症がなくても、寝ぼけて天井の柄や壁の染みなどを見間違えをする場合があります。このような場合は、壁紙などを利用して隠すことも有効な方法のひとつです。

認知症による幻覚や錯覚(原因と対応)


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