新しい認知症治療薬の開発

認知症の患者数は2025年には700人を突破、65歳以上の5人に1人が認知症になると予想されています。現在、治療は薬物療法とリハビリテーションが主体ですが、認知症に関わる治療薬は日々研究され、新しい薬が登場しつつあります。どのようにして新しい薬ができあがるのか、その流れと現状を紹介します。


この記事の目次
  1. 認知症の治療薬は、日々研究が進んでいます
  2. 認知症薬の開発状況
  3. 認知症の薬はこうして出来上がります
  4. 治験は最新の治療を受けられるメリットが
  5. 薬の開発に向け、新しい取り組みが始まっています

認知症の治療薬は、日々研究が進んでいます

認知症について国内外の多くの研究者が原因究明と治療法開発に取り組んでいます。主要4種の認知症のうち脳血管性認知症は脳梗塞等の血管障害が原因と考えられている為、血管障害に対する薬がよく処方されています。

その他のアルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型の3つにおいては下記の様なタンパク質が原因の1つだと考えられています。

原因物質
アルツハイマー型 タウ・アミロイドβなど
レビー小体型 レビー小体・αシヌクレインなど
前頭側頭型 TDP-43・タウなど

これらの異常タンパク質が脳内に蓄積すると神経細胞が死滅し、認知機能が低下すると考えられ、タンパク質の産生や蓄積を抑えたり、除去したりする薬が開発されています。4種のうち根本治療の可能性があるのは現在はアルツハイマー型のみと言われていますが他の認知症についても研究が盛んに行われています。ドネペジル(アルツハイマー型認知症治療薬)がレビー小体型に適用されている様な例も、またあるかもしれません。

認知症薬の開発状況

認知症薬の開発は世界共通の課題とされており、多くの大学や研究所、企業等がそれに取り組んでいます。日本でも、製薬企業の多くが認知症治療薬の開発を進めています。中には新薬の開発ではなく、ジェネリック医薬品を製造販売しているメーカーもあり、とくにトップ企業のほとんどが、認知症治療薬に携わっていると言えるでしょう。

現在開発されている薬のほとんどは現在販売されているものと違い、病気の改善を目指しています。さらにその薬の幾つかは治験の最終段階である第3相(事項「認知症の薬はこうして出来上がります」参照)まで進んでおり、もし治験が上手くいけば認知症が治る未来も遠くはないのかもしれません。

認知症の薬はこうして出来上がります

認知症の薬が発売され、一般の患者さんが使用できるまでには、10〜18年ほどの長い研究開発期間を要します。

最初に薬になる可能性のある化合物について試験管内での作用を調べ、その中でも薬として役に立ち、かつ副作用が少ないと思う化合物を、ラットなどの動物を使った試験を経て、ヒトを対象とした治験に進みます。

治験とは、人での有効性や安全性を調べる試験の中でも、厚生労働省から薬として承認を受けるために行われる臨床試験のことです。方法や施設について、それぞれ省令等で厳しく定められており、患者さんの人権を最優先に行われます。

治験は最新の治療を受けられるメリットが

治験には、少数の健康な成人を対象とした第1相試験、少数の患者さんを対象にした第2相試験、多数の患者さんを対象に、既存薬との比較などを含めてその効果を確かめる大規模な第3相試験に分けられます。

なかでも第3相試験は、認知症を患っていて、一定の基準をパスした方ならどなたでも参加することができるため、最新の医療をいち早く受けられるという大きなメリットがあります。

この他に、通常よりも詳しい検査や診察が行うため自分の病状をより詳しく知ることができる、治験薬や検査にかかる費用を負担してくれる、交通費などの謝礼がもらえるというメリットもあります。

しかし、その反面、治験のスケジュールを守る必要があったり、現在通院している病院を変更する、医師が予想しない副作用が起こることもあります。

治験には、医療機関に問い合わせる、治験を募集するサイトなどから申し込むことができますが、内容をよく理解した上で治験に参加することが大切となります。

薬の開発に向け、新しい取り組みが始まっています

現在、厚生労働省では、臨床研究や治験の活性化、推進に向けた取り組みを行っています。国立高度専門医療機関センターが、がんや神経疾患、老年性疾患などの患者さんの情報を登録、協力病院とをつないで、より治験に参加しやすいような仕組みを作るというものです。

認知症に関しては、国立長寿医療研究センターが昨年から軽度認知症障害の患者さんの登録募集を開始し、全国22施設との連携を図り、患者さんがより治験が受けやすくなり、新しい薬がいち早く世の中に出るような取り組みを行っています。

こうした取り組みが進むことで、認知症を治療できる薬の選択肢が増えていくことが予想されます。認知症の治療がより進むよう、より早い新しい薬の登場を待ちたいところです。


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