認知症看護認定看護師はどんな看護師?

「認知症看護認定看護師」は、認知症看護の分野において、熟練した看護技術と知識があることを認められた看護師です。このページでは、認知症看護認定看護師の役割や能力、活動内容などについて解説します。

この記事の目次
  1. 認知症看護認定看護師とは
  2. なぜ認知症看護認定看護師が必要なのか
  3. 認知症看護認定看護師の役割
  4. 認知症看護認定看護師のあゆみ
  5. 認知症看護認定看護師の資格取得まで
  6. 活動内容は?
  7. 実践
  8. 指導
  9. 相談
  10. 認知症看護認定看護師の活躍で今後何が変わる?

認知症看護認定看護師とは

「認知症看護認定看護師」は、救急看護や緩和ケアなど21の分野が特定されている「認定看護師」のうちのひとつです。認知症について一定の知識と経験を積んだのち、専門の教育機関で更に深く学び、資格を取得します。認知症看護の現場で、高い専門性に基づき、熟練した看護を行うとともに、現場の指導者としての役割を持っています。


なぜ認知症看護認定看護師が必要なのか

急激な高齢化に伴い増え続ける認知症。認知症による症状は多種多様で、特に徘徊や暴言・暴力などの周辺症状については、対応が非常に困難なこともあります。そして対応に困った現場の看護師がストレスを抱えてしまうことや、事故防止のため抑制や薬剤に頼らざるを得ないこともあり、ケアの質、患者の生活の質が低下してしまうことが問題となっています。

周辺症状には隠れた思いやニーズがあり、適切な対応で症状の緩和が期待できることが知られていますが、それには熟練を要し、増え続ける認知症患者に対して、看護や介護の現場では必要なスキルを身に着けた人材が不足しています。

そのような現状の中、熟練した看護の実践とともに人材育成を行い、認知症ケアの質の向上において大きな役割を担う認知症看護認定看護師の需要は、急速に高まっているのです。

認知症看護認定看護師の役割

病院や施設などにおける認知症看護の質の向上を目指し、2006年に日本看護協会により認定が開始。10名の認知症看護認定看護師が誕生しました。全国9か所の教育機関が開校し、2017年現在までに1,003名が認知症看護認定看護師の資格を取得しています。

※出典:日本看護協会

認知症看護認定看護師のあゆみ

認知症看護認定看護師には具体的に以下の役割を担っています。

・認知症高齢者の権利を擁護し、意思表出能力を補う対応をする
・認知症の周辺症状を悪化させる要因・誘因に働きかけ、行動障害を予防、緩和させる
・認知症の発症から終末期まで、認知症の状態把握を含む高齢者の心身の状態を統合的にアセスメントし、各期に応じたケアの実践、ケア体制づくり、介護家族のサポートを行う
・ 認知症高齢者が安全で安心できる生活・療養環境を得るための対策を立てる
・他疾患合併による影響をアセスメントし、治療的援助を含む健康管理を行う

引用:認知症看護認定看護師会

認知症看護認定看護師の資格取得まで

5年以上の臨床経験のうち、3年以上認知症看護の経験を持つ看護師が、専門の教育機関で6か月間勉強することで受験資格が得られます。受検後、合格して初めて認知症看護認定看護師として資格取得となります。

活動内容は?

現場のリーダーとして以下の活動を行います。

実践

・徹底的な観察によるアセスメントを行い認知症患者の隠れたニーズを読み取る
・適時的確なケアを行うことにより患者を快適な状態に導き、周辺症状を予防・緩和
・専門的知識に基づく環境整備による事故防止、症状の悪化防止
・合併症にも配慮した健康管理、医療との連携

特に入院後は、環境の変化や活動量の低下で認知症の症状が悪化すると言われています。病棟では家庭に近い環境を整える、生活にメリハリをつけるなど、その対策に力を入れ、患者が入院前の認知機能を保ったまま退院できるよう努めます。
また訪問看護ステーションなど在宅での看護では、他職種や地域との連携も積極的に行い、家族で孤立しない体制づくりなど、より良い介護環境を整えます。

指導

・実践を通して、認知症の多様な症状への具体的な対応のノウハウを指導
・勉強会やマニュアル整備など

相談

・周辺症状などから介護に行き詰まり、困窮している家族へのケア・アドバイス
・ケアに問題を抱える看護・介護のチームへのアドバイス

認知症看護認定看護師の活躍で今後何が変わる?

認知症看護認定看護師の歴史は始まったばかり。その数は全国でまだ1,003名と少なく、病院や施設で直接出会うことも、それほど多くはないでしょう。しかし高まる需要に応じて毎年受験者は増えており、現場で活躍する認知症看護認定看護師も年々着実に増え、活動も成熟してきています。

いずれ病院や介護施設などの多くの現場に、認知症看護の指導者として配置されるようになれば、全体の看護の質はもちろん、認知症と共に生きる方の生活の質も向上していくでしょう。

認知症の介護現場には、長年認知症の方と関わり、経験から上手な対応を身に着けたベテランの介護職の方もたくさんいます。
しかし認知症の発症機序や病態を熟知し、合併する様々な疾患の症状を考慮したうえで対応できるのが、認知症看護認定看護師です。これまでは医師に相談していた認知症や合併症についての複雑な悩みなども、これからは認知症看護認定看護師に相談できるようになっていくことでしょう。今後の活躍に期待しましょう。


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