認知症初期集中支援チームとは? 支援の内容や役割を紹介
「認知症初期集中支援チーム」は、認知症の方とご家族を支援する専門家によるチームです。このページでは、認知症初期集中支援チームの活動内容や支援を受けるメリットなどについて解説します。
- この記事の目次
認知症初期集中支援チームとは

認知症初期集中支援チームはどんな機関?
認知症に関する医療や介護の専門職によるチームで、認知症の早期診断・早期対応に向けた支援体制を整えます。具体的には、認知症が疑われる家庭を訪問し、適切な医療や介護につなげる役割を持っています。
なぜ認知症初期集中支援チームが必要なのか
支援の特徴は、チームの連携による早期からの介入により、医療支援だけでなく、介護や生活環境の改善など、患者を取り巻く環境をサポートすることです。
認知症に関る問題として、早期に受診せずに悪化してしまったり、診断や十分なケアが行われず危機的状況を招いたりすることが挙げられます。認知症初期集中支援チームは、そんな状況を回避し、認知症になっても住み慣れた地域で安心した生活が続けられるよう、早期の段階を支援します。
認知症初期集中支援チームのあゆみ
2025年には患者数が700万人を超えると言われる認知症。認知症初期集中支援チームは、認知症高齢者を支援する国の施策、オレンジプランの2番目の柱「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」を目的として創設されました。
新オレンジプランでは、「2018年度には全国すべての市町村に配置する」という目標が掲げられ、今現在も多くの地域で設置が急がれています。
認知症初期支援チームの概要

支援内容は?
認知症初期支援チームは以下のような支援を行います。
アセスメント(評価)
情報を収集・分析し、認知症かどうか、家族の介護状況や生活状況なども確認します。
専門医療機関の紹介
認知症の疑いがある場合は最適な専門機関を紹介します。
介護サービスなどについての説明や利用支援
情報収集の内容を吟味し、必要な医療やサービスにつながるよう支援します。
生活する上でのケアやアドバイス・介護者へのサポート
本人だけでなく家族に対しても、認知症に対する啓蒙や生活する上でのアドバイス、サポートを行います。
具体的な活動は?
認知症初期集中支援チームの活動を、順を追ってみていきましょう。
家庭訪問で現状把握・情報収集
要請を受けるとチームで家庭を訪問し、情報収集をします。拒否されている場合も、まずはゆっくり話をして、信頼関係を作っていくところから始まります。
チーム員会議
集めた情報をもとにチームで話し合い、利用者に必要な医療や介護の計画を立てます。会議には地域包括センターの職員のほか、必要に応じ、かかりつけ医やケアマネージャーも出席します。
初期集中支援の実施
受診~診断を促します。その後は、介護保険の手続きや最適な介護・地域のサービスへと誘導。生活環境やケアについてのアドバイスや、介護者のサポートも行います。
引継ぎとモニタリング
支援を受けられる期間は最長6か月で、その後は地域包括センターへと引き継がれます。引継ぎで役割が終わるわけではなく、その後も適切な介護サービスが継続されているかチェックを続けます。
メンバーはどんな人?
認知症初期集中支援チームのメンバーは以下のように構成されており、チームの構成員の人数は地域の状況により異なります。
医師
チームには、認知症の臨床経験などの要件を満たした1名以上の医師が在籍し、専門的見地からチームをバックアップします。
2015年、専門医不足によるチーム設置の遅れが問題となり、医師の要件が緩和されたため、例えば町のクリニックの先生でも研修を受けることでチームに参加できるようになりました。
専門職
国家資格を持ち、業務年数や研修の受講などの要件を満たした以下のような専門職が2名以上在籍します。
保健師、看護師、准看護師、作業療法士、介護福祉士、精神保健福祉士、社会福祉士など
どんな場合に対象になるの?

対象者の条件とは?
支援の対象者には、まず大きく以下の3つの条件が決められています。
1.40歳以上(若年性アルツハイマーを含む)
2.在宅で生活している
3.認知症の疑いがある
具体的な対象者は?
具体的な対象者としては以下のようなケースになります。
医療サービス・介護サービスを受けていない(中断を含む)
・認知症の診断を受けていない
・医療サービスが継続できていない
・適切な介護保険サービスに結びついていない
・診断されたが介護サービスが中断している
医療サービス・介護サービスを受けているが認知症の行動・心理症状により家族や関係者が対応に困っている
・独居、老々介護、認知症同士の夫婦
・精神科疾患との合併
・近所からの苦情
・消費者被害
あなたの街でも支援を受けられる?

地域包括センターに相談を
利用者が地域包括センターなどに相談し、適応であると判断されればチームが派遣されます。まだ配置されていない市町村であれば、地域包括センターが相談を受けます。
チームの全国配置が完了し活動が軌道に乗れば、身近で活躍を見ることも増え、当たり前に支援を受けられるようになっていくことでしょう。
まずは「認知症初期集中支援チーム」の存在や活動内容を知り、ご自身の住む街の配置状況を自治体のホームページなどで確認しておきましょう。
住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために
認知症初期集中支援チームのモデル事業では、支援対象者の大多数が一人暮らしや高齢の夫婦でしたが、取り組みによって多くのケースが入院・入所をせずに地域での生活を続けられています。
1人で、あるいは夫婦で静かに暮らしている方は、家庭への医療従事者の訪問に抵抗を感じることもあるでしょう。受診をかたくなに拒否される方も、認知症にうすうす気づいてるものの、今の生活が続けられなくなることを恐れて診断を避けている場合もあるのではないでしょうか。
しかし認知症初期集中支援チームは、まさにそういう方々が、認知症と共に、今後も住み慣れた地域で暮らせるようお手伝いをするためのチームなのです。