名古屋大、世界初、神経軸索の再生を阻害するメカニズムを解明

2019年5月23日

Dystrophic endballと呼ばれる異常球状構造を誘発

名古屋大学大学院医学系研究科分野の門松健治教授、坂元一真助教、尾崎智也特任助教の研究グループは、台湾中央研究院の Shang-Cheng Hung教授、鳥取大学の田村純一教授らと共同で、異なる糖鎖(※1)が神経軸索(※2)の伸長を制御する分子メカニズムを明らかにしました。
(※1)ブドウ糖(グルコース)などの糖が直鎖状あるいは分岐上に連なった生体高分子。 (※2)神経細胞の情報の出力を担う神経突起。多くの場合一つの神経細胞は一本の神経軸索を持つ。

特にコンドロイチン硫酸(CS)と呼ばれる糖鎖が、脊髄損傷などの外傷や脳梗塞などの虚血の際に、損傷軸索先端部にDystrophic endballと呼ばれる異常球状構造を誘発して、損傷後の神経軸索再生を阻害してしまうメカニズムを、分子・細胞レベルで、世界で初めて解明しました。

脊髄損傷や神経変性疾患などへの応用に期待

人間の神経細胞の軸索と呼ばれる部位は、身体の中でいわゆる「送電線」の役目をしており、様々な情報を電気信号で伝達しています。しかし、神経軸索も外傷などで切断されてしまうことがあり、一度切れてしまった神経軸索は二度と再生できません。CSが神経細胞受容体PTPRσを介して、本来、再生能力のある軸索をDystrophic endballと呼ばれる異常球状構造に変化させてしまい、その再生能力を止めてしまうからです。

本研究では、PTPRσがCortactinという分子を脱リン酸化し、オートファジーの流れを止めてしまうことがDystrophic endballの形成要因であることを明らかにしました。今後、このメカニズムの解明により、脊髄損傷や神経変性疾患などへの応用が期待できます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Chemical Biology」に掲載されました。また、本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業新学術領域研究「統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明(神経糖鎖生物学)」の支援を受けて、台湾中央研究院、鳥取大学、フィリピン大学らとの国際共同研究により行われました。

(画像はイメージです)

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