活発に動く人ほど脳の灰白質が発達している

2018年2月28日

体を動かすことが良いとはわかっていても、仕事や家事に忙しくまとまった時間がとれない、という方も多いでしょう。しかし、健康維持に必要な運動は日常のちょっとした工夫次第で行うことができます。今回は運動が脳に与える影響について調べた研究をご紹介します。

この記事の執筆
認知症ねっとACADEMICS
認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. 体を動かすことで脳はどんな影響を受ける?
  2. 運動は日常のちょっとした心がけでできる

体を動かすことで脳はどんな影響を受ける?

年を取ると多かれ少なかれ、記憶力や集中力が衰えてきます。これには脳の構造の変化が関係していると推察され、たとえ健康な人であっても、年を経るにしたがって脳の体積は少なくなり、その影響は認知機能にも現れると考えられます。脳の健康維持に効果的だと言われているのが「運動」です。2018年に発表された高齢者の脳に関する研究から、日常生活の中で活発に動いている人ほど、脳の「灰白質」が多いことがわかりました。

人の脳には白っぽく見える「白質」と、灰色に見える「灰白質」があり、大脳では中心に近いほうが白質、それを覆うように灰白質があります。白質は神経細胞から伸びた長い枝が集まった部分で、神経細胞の中心である細胞体は灰白質に集まるため、灰白質が減ることは神経細胞が減ることを示すと考えられています。

研究は、80歳以上の262人を対象に行われましたが、被験者の中に認知症または軽度認知障害と診断された方は含まれませんでした。家事や買い物、庭仕事など、日常生活の中でも体を動かす機会はたくさんあります。この研究の目的は、そういった日常的な運動が与える影響を調べることです。被験者は「アクティカル」という腕時計のような測定器を、利き腕とは反対の腕に24時間、10日間にわたって装着し、活動量を調べました。灰白質の体積はMRI(核磁気共鳴装置)を使用して測定、さらに被験者には認知機能テストを受けてもらいました。

BMIや性別、学歴、収入など様々な要素を含めて解析を行った結果、灰白質の大きさと最もよく相関していたのは「活動量」でした。また、日常的によく体を動かしている人ほど、脳の灰白質が多い傾向にあることがわかりました。しかし、興味深いことに、認知機能テストの成績と灰白質の大きさとの間には相関は見られませんでした。今回は縦断的な研究ではないため、運動による灰白質の増減が認知機能に与える影響について結論づけることはできません。今後、継続的な調査が行われることで、日常の活動量が認知機能に与える効果が明らかになることを期待します。

運動は日常のちょっとした心がけでできる

有酸素運動を続けると血液の循環機能が高まり、血流がよくなると考えられます。酸素は血液によって各臓器に運ばれており、脳は最も多くの酸素を必要とする臓器です(全身の酸素消費量の約20%)。そのため、脳の健康維持に運動は大きな役割を果たすと言われています。運動というと、スポーツウェアに着替えてジムでウェイトトレーニングやスイミング、などと難しく考えがちですが、健康維持に必要な運動は日常の中のちょっとした時間でも行うことができます。たとえば、エレベーターの代わりに階段を使用する、テレビを見ながらストレッチをしてみるなど、まずは今すぐできることから始めてみましょう。

厚生労働省では健康維持のために必要な運動量の目安として、「毎日プラス10分の運動」をアクティブガイドとして推奨しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。

▼ご紹介した論文
Accelerometer Physical Activity is Associated with Greater Gray Matter Volumes in Older Adultswithout Dementia or Mild Cognitive Impairment.
Halloway S et al., J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci. 2018 Feb 8. doi: 10.1093/geronb/gby010.

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