不安感とアミロイドβの蓄積に関係があることを示した研究

2018年2月8日

アルツハイマー型認知症の症状として、うつや無気力といったものがあります。その他にも、不安や焦燥を強く感じるといった症状が出ることがあります。

今回は「不安感」を察知することで、認知症の早期発見につながる可能性を調べた論文をご紹介します。

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認知症ねっと編集部
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この記事の目次
  1. 不安感とアミロイドβの蓄積に相関がある
  2. アルツハイマー病の早期発見は難しい

不安感とアミロイドβの蓄積に相関がある

アルツハイマー病の患者さんの脳には「アミロイドβ」というタンパク質が多く観察されます。アミロイドβは健康な人の脳にもありますが、生成と分解のバランスが崩れると、凝集、蓄積して神経細胞の働きを妨げたり、壊してしまったりします。アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病を発症する10年以上も前から始まるとも言われています。

この度「American Journal of Psychiatry」に発表された論文は、認知機能が正常な人を対象に、「不安感」とアミロイドβの蓄積との関係を調べたものです。研究に参加したのは62歳から90歳までの健康な270人です。研究を開始した時点では、認知症を始め、脳や神経の疾患と診断された人はいませんでした。約1年から5年の間(平均調査期間3.8年)、定期的に神経心理学的検査や認知機能の検査を受けてもらい、さらにアミロイドPETという方法でアミロイドβの蓄積具合を測定しました。

性別や年齢、学歴などの要素を統計的に補正し、結果を解析したところ、「うつ」の症状とアミロイドβの蓄積具合には関係があることが明らかになりました。全被験者の6パーセントの人は、調査開始以前に「うつ」と診断されたことがありました。また、調査を開始してから2年の間に「うつ」と診断された人は、全体の7パーセントでした。これらの人々は、「うつ」と診断されたことがない人たちよりも、アミロイドβの蓄積が多いことがわかりました。

さらに、どのような心理症状がアミロイドβの蓄積に最も関係しているかを調べたところ、「不安感」と強い相関があることがわかりました。「アパシー(無関心、無気力)」や「寂しい」といった心理症状についても調べましたが、それらの感情とアミロイドβの蓄積には関係は見られませんでした。

以上の結果から、認知症を発症していない人が「不安」を強く感じるようになった場合、アミロイドβの蓄積と関係がある可能性が示されました。今後は、「不安感」を測ることによってアミロイドβの蓄積を予想して、認知症発症予防を行えるようなレベルまで、研究の発展が望めるかもしれません。

アルツハイマー病の早期発見は難しい

つい先日、ノーベル化学賞受賞者である田中耕一博士らが開発した質量分析技術を使って、微量の血液からアミロイドβを検出する方法を、島津製作所のグループが発表しました。アミロイドβの検出には現在のところ、PETなど大がかりな装置が必要で、患者さんの負担が大きいことが課題です。血液から検出できるようになれば、健康診断などで手軽に検査が行えるようになります。実用にはまだ時間がかかるとのことで、今後の研究の進展が期待されます。

根本的な治療法がない現在、認知症は早い段階で見つけて、早期に治療を始めることが望ましいとされています。今回ご紹介した論文のように、「不安感」からアミロイドβの蓄積を予想することができれば、認知症の発症を効果的に抑えることに貢献するかもしれません。ただし、不安感といっても個人差が大きく、客観的な判断は専門家による診断が必要です。以前に比べて最近なんだか不安に感じることが多くなったという場合は、一度物忘れ外来などで相談してみるのもいいかもしれません。

▼ご紹介した論文
Longitudinal Association of Amyloid Beta and Anxious-Depressive Symptoms in Cognitively Normal Older Adults.
Donovan NJ et al., Am J Psychiatry. 2018 Jan 12:appiajp201717040442.

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