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【シリーズ改正道路交通法:2】現行制度と改正道路交通法のポイント

2017年2月6日

シリーズ改正道路交通法第2回は、2017年3月に施行される改正道路交通法について、押さえておきたいポイントをピックアップ。第1回同様、昨年の日本認知症学会学術集会での大阪大学の池田学教授、愛知県認知症疾患医療センター/八千代病院の川端信也教授の講演内容を取り入れながら、どのような変更・追加がなされたのか、現行法での課題を交えて解説していきます。

高齢者の運転と道路交通法の変化

道路交通法とは、道路交通の安全を保つ、かつ円滑な運行を守るためにある法律で、昭和35年に道路交通取締法の廃止にともない制定された。制定後、道路交通法は交通の情勢に併せて幾度も改正されている。

高齢者の運転に関わる改正でも特に大きいのが2009年から現在に至るまで施行されている「75歳以上の高齢運転者の対する免許更新時の講習予備検査(認知機能検査)の実施」だ。これは、3年に1度の免許更新時に75歳以上であれば認知機能を確認する検査を受けなければならないというもので、社会の高齢化にともない高齢者の運転事故が増えてきたことから追加された。そのほか、2013年には認知症を含む運転に支障をきたす可能性がある疾患の虚偽申告の罰則化、2014年には認知症などを診断した医師の任意通報を認める制度が追加されている。 このような改正があったにも関わらず、その後も高齢者の運転事故の割合は増加している。その理由として、認知症と診断されたら運転してはいけないことが周知されていない実情がある。

愛知県の認知症疾患医療センターでセンター長を務める川端先生の学会での報告によると、認知症疾患センターに通院している患者の家族に患者の自動車運転に関するアンケートを行ったところ、免許を持つ患者159名のうち、52名は認知症と診断されたあとも運転を続けていることがわかったという。さらに、その52名中16名は、なんらかの事故・違反を起こしているという事実もあった。


現行法の問題点

認知症患者の運転に対する意識の低さのほかに、現行法の落とし穴も問題だ。 現在、免許更新時に75歳以上の運転者に行われる認知機能検査では、結果により3つの分類に振り分けられる。

第1分類は「認知症のおそれがある」、第2分類は「認知機能低下のおそれ」、第3分類は「認知機能低下のおそれなし」。第1分類では認知症のおそれが認められているにも関わらず、現行法では、この3つのどれに分類されても免許の更新は可能で、運転免許も交付される。ただし、第1分類となり違反歴があった運転者は臨時の適性検査(医師の診断)を受ける必要があり、ここで認知症と診断されて初めて運転免許の取り消し・停止となる。

平成26年の認知機能検査で第1分類となった運転者はおよそ5万3000人。そのうち、臨時適性検査を受けたのが1236人で免許取り消しに至ったのは356人となっている。つまり、認知症のおそれがある第1分類の運転者でも、その多くが医師の診断を経ることなく運転を継続していると考えられるのだ。 また、第2分類、第3分類に分類された運転者が3年後の免許更新時に再度認知機能検査を受けた結果、13.8%が3年前よりも悪化していたという。この結果により、認知機能は次回の免許更新時を待たずに低下する可能性があると言える。

現行法とどう変わる?改正道路交通法のポイントとは

今回の道路交通法の改正では、現行法での問題点を改めるべく対策が織り込まれる。 厳密に言うと、今回施行される改正道路交通法は準中型免許の新設と高齢運転者の対策が2大改正内容となるが、ここでは高齢者に直接関わる、高齢運転者対策について詳しく解説する。

まずひとつめのポイントとなるのが前述した認知機能検査の実施についての改正だ。現行法では、3年に1度の免許更新時に行われていた認知機能検査だが、今回の改正では、75歳以上の高齢運転者が認知機能低下により起こしやすい一定の違反行為をした際には臨時の認知機能検査を受けることが義務化される。この検査により、認知機能低下のおそれがあると判断された場合は、臨時高齢者講習を受けることとなる。

そしてふたつめのポイントとなるのが、臨時適性検査制度の見直しである。現行法では、認知機能検査の結果第1分類となり、かつ違反歴があった運転者に臨時適性検査が義務化されていたが、改正後は第1分類となった運転者は、違反の有無に関係なく臨時適性検査(医師の診断)を受けるかもしくは主治医の診断書を提出しなければならない。これは、ひとつめのポイントで紹介した、一定の違反行為により臨時認知機能検査を受け第1分類とされた運転者も同様となる。医師の診断により認知症と診断された場合、免許取り消しの対象となる。

3つめが、75歳以上の運転者が運転免許更新時に受ける高齢者講習の内容の変更だ。認知機能検査の結果、認知機能低下のおそれがない第3分類とされた運転者に対する講習は改正前よりも短縮された2時間の講習となり、認知症のおそれ・認知機能低下のおそれがある第1分類、第2分類となった運転者に対する講習は個別指導なども行われ3時間の講習となる。

道交法による認知症対策強化(医師の診断・免許停止について)

警察庁の資料等をもとに認知症ねっと編集部作成

改正道路交通法での利点と懸念点

今回の改正により、認知症の疑いがある運転者やリスクの高い運転者に対し、免許更新時を待たずに運転免許の停止・取り消しの判断ができることとなった。免許更新時の認知機検査後3年以内に認知機能が低下した場合も早期に対策しやすい。さらに、認知機能の程度によって高齢者講習の内容を変えることで、より効率的かつ適切に指導を行うことが可能となる。

上記のように、改正によって高齢運転者対策が強化されることとなるが、実は今回の改正では別の部分での懸念点をあげる専門家も多い。 日本認知症学会の理事を務める池田教授が指摘するのは、医師の診断を求める人数の増加だ。

現行法では、第1分類とされた運転者でも一定の違反をした人で、かつ運転を続行したい人だけが医師の診断を受けるもしくは主治医に診断書をもらう必要があった。しかし、今回の改正では、違反の有無がなくても第1分類とされた運転者で運転を続けたい人は全員が、認知症かどうかの医師の診断を求めなければならない。

池田教授によると、現行法でのプロセスで医師の診断を求める運転者は年間数100名ほど。ところが、改正後では、第1分類と診断された運転者の多くがその時点で自主返納をしない限り、医師に診断を求めるであろう運転者は4~5万人に昇る可能性があるという。

また、川端教授は即時の診断が難しいケースでも経過を診ながらというわけにもいかず、診断書が必要となること、また、そもそも認知症と診断されされなければ運転してもよいのか、といった点も指摘している。

運転者の高齢化にともない改正が続けられる道路交通法だが、今後もさらに見直されていく可能性があると言える。

>>次回は運転免許の自主返納について考察していきます。

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