【樋口直美さんインタビュー】 出版から1年経った現在の心境の変化とメディアを通じて伝えたい思いとは

2016年7月15日

レビー小体病を患い、長い間誤診にも苦しめられてきた樋口直美さん。「苦しかった経験をもう誰にもしてほしくない。認知症を巡る問題の多くは人災という現実を知ってほしい」という思いから執筆した本「私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活」(ブックマン社。日本医学ジャーナリスト協会賞書籍部門優秀賞受賞)は、これまでの常識を覆す本として大変話題を呼びました。

41歳でうつ病と誤診、50歳でレビー小体型認知症と診断され、様々な障害や症状があるという現在も講演やテレビを含む取材などを通じて、本人の直面する困難、医療の問題点などを訴え続けています。そんな樋口さんに、メディアに登場することによる周囲との関係性の変化や、今の思いを伺いました。

認知症の捉え方をゼロから見直して欲しい

―― レビー小体型認知症はやはり理解されにくい病気なのでしょうか。

そうですね。アルツハイマー病とは全く違う多様な症状がありますが、知られていませんし、誤解も誤診も多い病気です。

私は抗認知症薬治療を今も続け、効果を上げています。医師から現在の病名はレビー小体病が適切と言われています。自律神経障害以外にも様々な脳機能障害や幻視などもあり、生活上の不便もありますが、見えない障害なので、説明しない限り理解はされません。

若年発症に多いレビー小体型認知症の純粋型では記憶障害がなかったり、進行が止まっている症例も報告されていますが、医療者にもあまり知られていません。若年性アルツハイマー病の友人たちや前頭側頭葉変性症の友人も思考力は、まったく落ちていません。

これまで、専門家たちが、「認知症は脳が破壊される病気。思考力も判断力も落ちていろいろなことができなくなる」という説明をしてきました。私は、全く違うと思っています。特に初期の内は、低下する機能はごく限られています。アルツハイマー病と診断されてから新しい才能を開花される方もいます。人間の脳には、底力があります。壊れる一方ではありません。認知症の人に思考力はないという見方は、診断を受けた私たちをとても不幸にしていると思っています。

―― メディアに出ることによって、嫌な思いをすることもありましたか?

私は、最初の講演からずっと「認知症は、病名ではなく状態を表す言葉。私は、今は、”認知症の状態”ではない」とお話ししていますが、「認知症じゃないくせに」「誤診だ」という批判を受けることがあります。体調が不安定なこともあり、講演もあまりしていませんが、「元気に講演して飛び回っている」という誤解を受けることも多いです。

メディア出演を通じての広がり

―― メディアに出続けることによって、変わってきたことはありますか。

レビー小体型認知症という言葉を見る機会が増えてきたように感じています。以前は、レビー小体型認知症に対する誤解がひどくて、BPSD(認知症の行動・心理症状)が激しいとか、ありもしないものをあると言って暴れるとか、否定的なことがどこにも書かれていたのですが、そういう誤った情報が減って、すごくよかったと思っています。

批判を受けることもありますが、それよりも賛同して応援してくださる方々との出会い、つながりがどんどん広がっていきました。今の認知症医療や介護や社会を変えていこうという情熱を持った方たちです。医師、看護師、大学教員、ジャーナリスト、介護施設を運営する方など、病気になる前には出会えなかった方たちと病気のお陰でつながることができたのは、本当に幸せだと思っています。

―― つながりがどんどん広がったわけですね。

同じ境遇の方とのつながりが広がったのもすごく大きいです。若年性アルツハイマー病の方や高次脳機能障害の方や、統合失調症の方などです。一度絶望を経験してから活動を始めた方は、すごくしなやかな強さをもっています。

つながりが横にも広がったことで、病気や障害は違っても共通する部分が多いことを知り、興味関心の幅が大きく広がりました。

同じ境遇の人とのつながりが大きな希望となる

―― 同じ境遇の方たちと出会って感じたこととは。

人間はみな人に何かしたい、喜ばれたいという思いがありますが、毎日の仕事や家事に追われて見えなくなってしまいがちです。でも、私たちのように、それを一回剥ぎ取られてしまい、絶望のどん底に落ちると、人間が元々持っている本質的なものが出てくるように思いました。だからそういう方たちとお話しすると、本当に感動しますし、勇気をもらうことができます。仲間たちから得たものはすごく大きいです。

脳の病気や障害を持つと、他者との関係が、いったんは失われてしまうことが多いと思います。そんな中で、同じ境遇の人同士がつながり、こんな活動をしている、こんなこともできる、ということを知るのは、お互いにとって大きな希望になると感じています。

―― 樋口さんが、メディアを通じて知ってもらいたいこととは。

認知症は、環境や周囲の接し方によって、状態が大きく変わります。ストレスで一時的に症状が一気に悪くなってしまうことが、多々あります。不安を取り除き、安心して良い人間関係の中で、笑って、役割を持って生活できれば、良い状態を保てますし、それまでできなかったことも、できるようになると思います。決して悪くなる一方ではないです。

何か問題が起きたときに「認知症だから」とすべてを認知症のせいにするのは、絶対に避けるべきだと思っています。その問題が起きた原因はなにか、薬や体調や接し方や環境が原因かもしれないということを常に疑い、考えて頂きたいです。

使命とは思っていない、でも希望は伝えたい

―― ご自身の社会的役割については、どのように感じていますか?

実は、私、講演を使命とは、あまり思っていません。使命と思ってしまうと、なんだか命を削って頑張って、倒れてしまいそうで…。「感動を伝えてください」と言われても、私は人を感動させようと思って話したことはないですし。なので、使命とはちょっと違うように思います。ただ、同じ境遇の人たちに、希望を伝えたいとは強く思います。その手段を考え中です。

私自身は、なるべく楽しいことをするようにしています。自分が、面白そう、ワクワクすると思えることをして、自分が知りたいことを知って…。1つのことが終わるたびに、何か新しいことを探しています。そうすることで、脳も活性化されて、進行も抑えられるんじゃないかと思っています。

▼公式サイトリンク
https://peraichi.com/landing_pages/view/naomi

樋口直美さんプロフィール

1962年生まれ。
30代後半から幻視を見た。
41歳でうつ病と誤診される。
薬物治療で重い副作用が生じたが、約6年間誤治療を続けた。

2012年、幻視を自覚し検査を受けたが、診断されなかった。
2013年、症状から若年性レビー小体型認知症と診断され、治療を始めた。
2015年1月、東京での「レビーフォーラム2015」に初登壇した。
2015年7月『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活』(ブックマン社)を出版。
2016年夏現在、空間認知機能障害、注意障害など様々な脳機能障害、幻視、自律神経障害、意識障害などがあるが、思考力は(意識障害を起こしていない時は)保たれている。

本書は、日本医学ジャーナリスト協会賞の書籍部門で優秀賞(2015)受賞。NPOオレンジアクト2015年認知症フレンドリーアワード入賞(執筆を含めた活動に対して)。

▼「ことしもまた、新たなえにしを結ぶ会’16」
第2部「私が認知症になっても精神病院に入れないで」(樋口直美さんのプレゼンは30:28~)

樋口直美さんのプレゼン全文はこちら


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